第72話 受かると思う?

 もうひとつ、前日譚。ちょっとだけ、真面目なお話ver.


 渡瀬わたらせくん(仮名)のご両親にお呼ばれしたわたし。お母さま運転の後部座席に、ふたりで座らされる。助手席には、渡瀬くんのお父さまもいる。

 わたしの心配第71話他所よそに、和やかな車内の雰囲気のまま、舞台は渡瀬家に移る。



 場所は、いつものリビング。

 でも、いつもと違うのは、いつも渡瀬くんが無理やり座らされているところに、彼のお父さまが。そのため、わたしと渡瀬くんはその対面に、ふたりで並んで。そんなわけで、その場は緊張感に包まれている。

 全員の前にお茶を置いた後で、お母さまもお父さまの隣に座った。


つかさ(渡瀬くんの下の名前ね)がね、今更、もっと上の大学を目指したいって言いだしたのよ。たぶん、ひなちゃん(仮名)が絡んでるんだと思うんだけど……?」


 意味がわからず、首を傾げるわたし。


「ひなちゃんと同じ大学トコ、行きたいらしいんだよね。どう思う?」


 イヤイヤ、どう思うって言われても……。正直言って嬉しい。渡瀬くんは、わたしと一緒にいてくれるって考えてくれたんだろう。

 でも、自分の将来をそんなことで選んでほしくはないんだよなぁ。

 そんな、わたしの考えを、彼のご両親に伝える。ふたり共に頷いてくれた。


「じゃあ、ちょっと現実的な話をしようか?」


 彼のお母さまが、そう言って、わたしに一通の書類を見せてくれた。渡瀬くんの模試の結果だった。う〜ん、悪くはないけど、ずば抜けていいわけでもない。でも、ここに記入されてた大学は、かろうじて安全圏には到達している。もっと確実性がほしいところだけど……。


「今のこの子の成績で、ひなちゃんと同じ大学トコ、受かると思う?」


 返事を渋るわたしを見て、ご両親共に理解してくれたみたいだ。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 わたしが、模試のために記入した大学名を聞いて、お母さまは驚いていた。お父さまは天を仰ぎ、当の本人、渡瀬くん、表情が抜け落ちてた。

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