第64話 別れさせっからなっ

 先週は、お騒がせいたしました。

 中学来の友人である、大槻おおつき美亜みあちゃん(仮名)が、仲裁に入ってくれました。

 彼女の思惑がどうであれ、助かったことには変わりないので、素直に感謝しておきたい……と、土曜日は思ってた……のよ?

 本来は、人の手を借りずになんとかするのが、おとなの恋愛なのでしょうが。なにぶん、経験すらない(友だちが少なかったので発展すらしない)ものでして。恥ずかしいことですが、わたしだけでは解決の糸口すら見えなかったかと思ってます……よ?



 さぁ、なぜに、尽く疑問系なのかは、期末テスト初日の今朝のできごとに尽きるかもしれない。

 わたしと喧嘩をしていた所為せいで、渡瀬わたらせくん(仮名)が、テストに対しての不安を口にした。「今回は自信がない」と。「まったくテスト勉強できてない」と。教室で頭を抱えながらも、わたしのほうをチラチラと見ている。


 わたしは、言葉には出さなかったけど、「わたしの所為せいだって言うの?」と睨んでおいた。

 そのやりとりに、美亜ちゃんが気づいた。ニヤリと笑って(怖い!)、渡瀬くんに話しかけた。


「渡瀬、中間より成績落としたら、ひな(仮名)と別れさせっからなっ。わたしたちの中にバカはいらねえんだよ」


 渡瀬くんの表情が一瞬にして抜け落ちた。

 美亜ちゃんは、ドヤ顔でわたしにも話を振ってきた。


「ひなも、バカはいらねえって言ってやれよ」


 爆笑するクラスメイト、茫然とする渡瀬くん。期待に満ち満ちた目をしている、真琴まことちゃん(仮名)と莉緒りおちゃん(仮名)。わたし、どう、返事をすればいいんだ?



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 暫く、放置されてた渡瀬くんの耳に、美亜ちゃんが折衷案を囁いている。その案に、大きく頷いた後、お祈りするみたいに指を組んで、美亜ちゃんを見つめて……。


「ありがとう、大槻さま」


 美亜ちゃんの提案は、わたしに勉強を見てもらえ……だった。

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