第52話 誕生日、もうすぐじゃない?

 昨日のお話は、あれでおしまい!

 手を出してきた彼は、自分でやったことに、自分で責任を取ればいい……だけのこと。



 さて、そんな騒動の終結した翌日の木曜日。

 わたしは、父(騒動のことは報告済みである)から、あるミッションを言い渡されていた。

 それは、さりげなく、誕生日のプレゼントを探ること……。そう、美亜みあちゃん(仮名)の誕生日がもうすぐなのです。

 あれ? お父さん、いつもはそんなこと聞かないよね?

 美亜ちゃんだって、もらうと、どんなモノでも嬉しそうにわたしに自慢してくる。


「だって、美亜ちゃん、18の誕生日だろう? おとなの女性として見てあげないといけないんだよ。贈り物ひとつとっても難しいんだよ」

「わたしだっておとなだけど?」

「だから、ひな(仮名)のだって考えたんだから」

「わたしのと同じのでいいんじゃないかなぁ? お父さんからのプレゼントだったら、なんでも喜ぶと思うけど?」


 わたしが、4月の誕生日に父からもらったのは、銀色のバングルだった。素材はステンレス。瑠璃色のラインが両サイドにデザインされてて、真ん中に小さな石(キュービックジルコニア)が嵌め込まれている。ちょっと、おとなっぽい。そして、お父さんとお揃い! ここが嬉しい。

 わたしの通う高校、このくらいのアクセサリーは禁止されてない。ピアスしてる子もけっこういるし……。だから、わたしも、学校にもして行ってる。



「美亜ちゃん、誕生日、もうすぐじゃない? なにがいい?」


 休み時間に聞いてみた。あくまで、わたしが贈るというていで。

 暫く考え込んだ美亜ちゃんが、遠慮がちに聞いてきた。


「ひなが最近してる、そのバングルって……」


 あれ? わたしの予感が当たってるっぽい?



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 美亜ちゃんは、そんなに高いモノをねだっちゃいけないとかなんとか、ひとりで呟いていた。

 値段のことなんて気にしなくていいよ……とは、この場では言えなかった。

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