主人公が千年分の史実の書で得たもの。

しっとり雰囲気のある語り口が魅力的な短編です。
千年分の史実の書の写本を書くことになった主人公。
しかも雨の日には、その書に登場する人物がやってきます。
最初にやってきたのは兄を殺して王となった王様。その王は意外なことを口にします。
写本が増えていくくだりや、支払いの品が墨で濡れることに人間の業を感じました。
墨で濡れた品とそうでない品、どっちの方が多かったのかなぁ。
生涯をかけて写し終えた後の彼が、最期に三種の書の内一つに筆を滑らせるのですが、その一文が含みがあってよかった。
その後の〆方も余韻の残る素敵なラストで面白かったです。

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