第497話 美味しい食事の旅路にしよう

 ミナトたち一行は春の陽光の下で昼食に用意してきた特製のクラブサンドイッチにかぶりつく。かなりの大きさだがハンバーガーと同様この手のサンドイッチは豪快に行くしかないのだ。


『じーーーーーーーーーーーーーー……』


 パンの食感と香り、アボカドを含めた野菜の旨み、ベーコンとハムによる油脂と肉の強い味わい、卵とチーズの濃厚な味わい、アクセントの塩と胡椒、そしてそれらを強烈にまとめ上げるマヨネーズの魔力。


「美味い!最高だ!まさに自画自賛の味!」

「本当に美味しいわ!さすがミナト!」

「うむ。このマヨネーズという調味料は本当に素晴らしい仕事をするな!」

「ん!ここまで美味しいサンドイッチはなかなか出会うことができない!」


 ミナトと同じくなんの躊躇もなく特大クラブサンドイッチへとかぶりついているシャーロット、デボラ、ミオの美女三人。口の周りとか手とかがはみ出したマヨなどで大変なことになっているがそんなことはお構いなしに賛辞の言葉を言ってくる。


『じーーーーーーーーーーーーーー……』


 何やら空中に書き文字が浮かんでいるような気もするが、構うことなくミナトは瓶入りコーラの蓋を開ける。日本にいた頃から思っていたがやはりコーラは瓶がいいと思うミナト。日本のBarで使用する時もコーラは瓶で用意していたことなどを思い出し懐かしいと思いつつ、ゴクゴクっと、こちらも躊躇なく飲み始める。


「うーん!コーラも最高!ワインもいいけどたまにはコーラもいい選択肢だ!」

「ぷは!独特の香りと甘味がクセになるのよね!」

「うむ。これを飲むためだけでもグランヴェスタ共和国まで行く価値があるというものだ」

「ん!うまうま!」


 コーラも美女たちに好評なようで……。


『じーーーーーーーーーーーーーー……』


『近い……』


 ミナトは心の中でそう呟く。吐息を感じることが出来そうな至近距離から飛んでくる背中へ感じる視線が痛い……、というか視線の持ち主が既にどうしようもないほどに接近しているのだ。この状況で無視をするというのも難しい。


「えっと……、ディルス銀貨五枚で……」

「購入させて下さい!」


 ミナトの言葉を遮って言い値での購入を即決する修道院風の装いでフードを目深に被った女性冒険者。もちろんA級冒険者のティーニュである。


 さっそくディルス銀貨五枚とクラブサンドイッチを交換するA級の冒険者。稼いでいるだけあり行動に躊躇がない。ディルス銀貨は一枚千円といったところなのでクラブサンドイッチ一個が五千円である。想定外に高額だったのか周囲にいて同じことをしようと目論んでいた者たちが一斉に動きを止めた。


 そんな周囲からの羨む視線などお構いなしに包装を一瞬の早技で解いたティーニュがクラブサンドイッチへとかぶりつく。


 彼女も整った顔立ちの美人なのだがこの世界の美女はハンバーガーやサンドイッチをお上品に食する文化は持ち合わせていないらしい。あっという間に口に周りはマヨネーズに襲われている。


 ハンバーガーやサンドイッチ……、果ては外側がパリパリのクロワッサンまで綺麗に食べることが難しい食べ物は豪快に行くしかないと改めて思うミナトであった。


おいひいれす美味しいです……。ふぉのひはいふぉふへへよかったれすこの依頼を受けてよかったです


 感極まったのかそんな音が聞こえてくる。


 ちょっと何を言っているのかは分からなかったが、クラブサンドイッチを美味しいと感動してくれているらしいことは理解したミナト。


『気に入ってくれたようでよかった。晩御飯はどうしよう?』


 そう思うミナト。【収納魔法】である収納レポノの亜空間には非常に大量の食材と調味料と各種のお酒がバーテンダーの道具と共に備蓄されている。


 せっかく収納レポノがある。さらに転移テレポを使えば買い出しも簡単だ。


 そんな状況なのだから、


『今回の旅路で食に妥協なんかするものか!素敵な食事を楽しむ旅にしよう!そうしよう!』


 そう心に誓うミナトであった。

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