第475話 鳥のスパイス焼きに舌鼓
どうやらミナトたちの冬祭りは食べ歩きを楽しむものになるらしい。
シャーロットが興味を示したのはたくさんの屋台が立ち並ぶ通りにある一軒で、
「スパイス焼きって書いてあるから厳密にはおれのいた世界の焼き鳥とは違うけど、これは美味しそうだ」
切り分けられ串に刺された大ぶりの鶏肉が肉汁を滴らせながらジューシーに焼き上げられている。特筆すべきはその香りで秘密は振り掛けられたスパイスにあるらしい。
『この世界ってスパイスは豊富にあるみたい……、王都のマルシェでも色々と売っているし……』
心の中でそう呟くミナト。日本にいた頃に見たことのあるスパイスやよく分からない種類が山になって売られている光景を思い出す。なかなかチャンスがなかったがいずれは色々と購入して日本人にとって至高の存在であるカレーに挑戦したいと密かに考えていたのだ。
そんなことを思いつつみんなで串焼きに旺盛な関心を寄せていると、
「兄ちゃん!美人さんばかりを連れての冬祭り見物たー羨ましい限りだよ!秘伝のブレンドスパイスを使った俺っち自慢のスパイス焼きだ!今日のロックバードはダンジョンの深層で獲れたヤツだから味がノってるよ!一本どうだい?」
気っ風のよさげな屋台のお兄さんがそう勧めてくる。確かに美味しそうな串焼きである。
「八本ください!」
躊躇なく全員分の串をオーダーするミナトであった。
「これは美味い!振られた塩とスパイスが鳥肉にめちゃめちゃマッチしてる!」
「美味しいわね!鳥肉自体もかなり美味しいわ!」
「うむ!火入れもスパイスの加減も見事なものだ!」
「ん!美味!」
「美味しいです〜」
「やはりスパイスといった調味料の使用に関しては人族や亜人の技量は抜きん出て素晴らしいです!」
「オイシイでス〜!」
「このようなシンプルな料理は得てして奥が深いと聞くがなかなかどうして……、見事なものだ!」
噛み締めると溢れる肉汁、パサつきなど微塵も感じさせないジューシーさと鳥肉独特の味と香り、そこに塩による味付けとスパイスの香りによる効果が上乗せされ見事な逸品に仕上がっていた。
『そういえば指輪の素材の一つだった『銀の尾羽』を採るついでにダンジョンで斃した鳥肉がまだ
ふとそんなことを思い出すミナト。あの時にゲットしたキラーオストリッチの肉はグドーバルに渡してしまったがファイアドランカーの肉はまだたくさん亜空間に保存されている。
美味しそうに串焼きを頬張るミナトと美女一同の様子に満足げな表情をしているお兄さんにそのことを尋ねようとすると、
「お前さん方は味のわかる方々とお見受けした!今日はいい野菜も手に入ったんで師匠が得意にしていたこの串を久しぶりに焼こうと思っていたんだけど、試してみちゃあくれないかい?」
そう言ってお兄さんが見せてくれたこれから焼かれる串焼きとは、ミナトがとてもよく知っているフォルムをしていて……、
「おお!シャーロット!これは本当に焼き鳥だ!」
喜ぶミナトの視線の先には大ぶりの鳥肉と見事なサイズの長葱が交互に刺されている……、いわゆるそれはねぎまであった。
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