第464話 改めて紹介を

 そして再会とカクテルを楽しむひと時が一段落したところで、


「ミナト、ピエールちゃん。改めて二人には紹介するわ。彼の名前はファーマー。二千年前にあった大戦の時、魔王がその魔力から直接生み出した存在で魔王軍の実質的なトップをやっていたの。種族はエルダーリッチよ。さっきも言ったけど、彼は魔王の魔力から直接生み出された存在で、言ってみれば魔王に最も近い存在だったの。だから想起される永遠不滅の契約エターナル・コンタクトだけでは足りなくてファーマーという名前を与えて魔王の支配から切り離して心強い味方になってくれた魔物なの」


 シャーロットが改めて農夫の装いをしているスケルトン……、ではないエルダーリッチであるファーマーをミナトとピエールに紹介した。


「ファーマーにもきちんと伝えないとね。彼はミナト。私が所属する冒険者パーティのリーダーで、私のパートナーよ」


 ミナトも改めてシャーロットから紹介される。という台詞のところでファーマーがビクリっとその全身を震わせたかのように感じ首を傾げるミナトだが、


「パ、パートナーだが?えっと……、それはシャーロット様の隷属どが下僕の類だべが?」


 もの凄いことを言ってくるエルダーリッチ。


想起される永遠不滅の契約エターナル・コンタクトを行使するだけでもかなり力に物を言わせないといけないって言ってた気がするから、その後に名前を付けるのも大変な目にあったとか?』


 ボロボロにされて魔王からの支配を断ち切られるエルダーリッチを想像してしまうミナト。


「違うわよ!!滅びを味わいたいのかしら!?公私における対等なパートナーってこと!言い換えるなら私がミナトの第一夫人ということになるわ?」


 シャーロットのそんな言葉を聞いてさらに驚愕するファーマー。


「第一夫人!?シャーロット様が第一夫人だが!?」


『骨だけなのに愕然となっていることがなぜだかよく分かる……』


 そんなミナトによる心の呟きを無視するかのように畳みかける者達が現れる。


「うむ。そして私の現在の名はデボラ。種族は火皇竜カイザーレッドドラゴンとなりマスターの第二夫人となっている」


「ん。ボクの名はミオ。ボクの種族は水皇竜カイザーブルードラゴンでマスターの第三夫人!」


わたくしはナタリアという名前を頂きました~。種族は地皇竜カイザーアースドラゴンでしてマスターの第四夫人ですね~」


 世界の属性の内、火、水、地を司るドラゴンたちの長である三人がそう自己紹介をする。ファーマーは完全に固まっているが、当然のごとく話はまだ終わらない。


「私はフェンリルとしてマスターからオリヴィアの名前を頂きました。私はマスターの忠実な僕にして一人目の愛人ということになります」


「ワタシはエンシェントスライムのピエールでス~。二人目の愛人ですネ~」


「吾輩もロビンという名を頂戴した。現在の種族は煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンではなく首を失った闘神ヘル・オーディンとなっています。そして吾輩はマスターの三人目の愛人ということになりますかな!」


 オリヴィアたちの改めての自己紹介も済んだのだが、ファーマーからのリアクションがない。


「ファーマー殿?」


 恐らく一番関係が深かったと思われるロビンがそう言いながら近寄るが、


「気を失っておられる……、ファーマー殿!ファーマーどの!ミオ様……、申し訳ないのですがファーマー殿に回復魔法をお願いできないだろうか?」


「さっすがミナト!夫人と愛人を紹介するだけでエルダーリッチの意識を失わせるなんて!」


『そこにはシビレないし、憧れないからね!』


 シャーロットからの言葉とうんうんと頷いている夫人と愛人へのお約束的な返しを心の中にグッと留める。ここに他の転生者がいないことの幸運を噛み締めるミナトであった。

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