第463話 その名はアラスカ

 シャーロットたちがロックグラスに造ったグリーン・アラスカをその手に取る。


「これがグリーン・アラスカ……、緑色が綺麗ね」


「うむ。甘い香りと……、これは薬草の香りか?なかなかに独特の香がするのだな」


「ん。とても興味深いカクテル!」


「ベースはジンを使っているのですね〜」


 シャーロット、デボラ、ミオ、ナタリアの四人がそんな見た目の感想を言ってくる。


「素晴らしい香りです。そしてマスターの所作はいつもながら見事です」


「美味しそうデス〜」


「ジンは好きですが、このような香りの飲み物にんるとは……。カクテルというものは奥が深いですな」


 オリヴィア、ピエール、ロビンの三人も興味深そうにグラスを見つめている。ちなみにピエールは幼女の姿でイスに座っており、ロビンも黒髪の女性の姿で座っている。


 そしてここにもう一人……。グリーン・アラスカの入ったグラスを繁々と眺める農作業姿のスケルトン……、ではなくエルダーリッチのファーマーである。


「これがカクテルだが?先ほどシャーロット様がら伺った。なんでも複数のお酒や果汁など混ぜで新しい飲み方にしてまるのだど。簡易版ど仰っていましたが見事なものだね」


 そんなことを言っている。


「ミナト!頂くわね!」


 シャーロットのその言葉に、


「「「「「「「頂きます!」」」」」」」


 全員そう呼応して皆がグラスを口へと運ぶ。ファーマーはスケルトン状態だがどうやらそのままでも飲食ができるらしい。


「とても美味しいカクテルね!ジンの切れ味鋭い味に薬草系の甘さがとてもよく調和しているわ。そしてとても飲みやすい」


「うむ。この甘味は我の好むところだ。シャルトリューズの緑色ヴェールといったか……。ジンに少量加えるだけでこれほどまで印象に変化を与えるとは……」


「ん。ジンのストレートもマティーニも美味しかったけどまた異なるジンの世界!とても飲みやすくて美味しい仕上がり!」


「ジンの味わいとこのリキュールの相性が素晴らしいです〜。酒精はかなり強いと思われますが〜、とても飲みやすいのが不思議で興味深いですね〜」


 シャーロット、デボラ、ミオ、ナタリアはこの味を気に入ってくれたらしい。


「美味しいです。私は甘い味わいが好きですが、これは……、このシャルトリューズから感じるの薬草の風味といいますか存在感はサンクタス・アピス聖なるミツバチの雫(=ドランブイ)などともまた異なる味わいなのですね」


「甘くて美味しいデス〜」


「ふむ。ジンをベースにしたどっしりとした味わいに薬草を思わせる香りと甘さが素晴らしいハーモニーを奏でている。マスターは簡易版と仰ったが見事な完成度と言えるのではないか?」


 オリヴィア、ピエール、ロビンからも好評が得られて嬉しいミナト。


 そして、


「うめぇ……。これがカクテルだが……。ジンはかづで嗜んだごどがありあんすが、お酒このように味わったのぁ初めでだ」


 ファーマーさんも気に入ってくれたようである。


「もともとアラスカっていうカクテルがあるんだ。これはジンとシャルトリューズの黄色ジョーヌ使いシェイクをしてショートグラスで出すカクテルなんだよ」


 そんなミナトの説明に、


「じゃあ、そのシャルトリューズの黄色ジョーヌ緑色ヴェールに変えたカクテルがグリーン・アラスカってことなの?」


 シャーロットが問いかける。


「そう!本来のグリーン・アラスカはシェイクのカクテルなんだけど日本にいた有名なバーテンダーが著書でロックグラスにビルドするこの簡易版のレシピを紹介していたんだ。造ってみてとてもよく考えられたレシピだと思ったんだよね。だからこれはおれのお気に入りって感じかな?」


 ミナトの回答に頷く一同。


「うむ。そう言われると本来のアラスカも気になるところだ。二杯目はそれをオーダーしてもよいだろうか?」


 デボラが言ってくる。


「もちろん!あ、それとこの前に造ったオールド・パルってカクテルがあったと思うけどあれって「古くからの仲間」とか「懐かしい友人」って意味を持っているからこの場ではオススメかな?」


 ミナトの言葉にデボラの瞳がキラリと光る。


「うむ。そのような意味があったな。今日はファーマー殿と再会できた記念すべき日だ!マスター!我にオールド・パルを!」


「私も頂きたいわ!」

「ん。ボクも!」

わたくしも頂きたいです〜」

「私も頂きます」

「ワタシも〜」

「吾輩も所望する!」

「あの……、もお願いしていいが?」


 ミナトは笑顔で、


「承りました」


 そう答えると人数分のショートグラスをシャーロットに頼んで冷やしてもらいつつ、ジガーとも呼ばれるメジャーカップとバースプーン、ミキシンググラスとストレーナーを用意する。お酒はアースドラゴンの里で造ってもらったライ・ウイスキーとブルードラゴンの里産のスイートベルモット。


 再会を喜ぶカクテルによる楽しい一席はもう少しだけ続くのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る