第459話 扉の先の空間は……
「これって……?それに青空がある?」
眼前に広がる光景にミナトが呆然とそう呟く。
ここはルガリア王国の王家と冒険者ギルドが禁忌と定めたダンジョン『
この世界に存在するダンジョンには主と呼ばれる存在があり、それを斃すと一定期間そのダンジョンから魔物が姿を消すことふぁ知られている。人々はその現象を踏破と呼んでいた。
ミナトたちは冒険者ギルドから『
「どう見てもお野菜の畑……、よね?」
シャーロットが端的にその光景を表現したが語尾の疑問になっているのはこの美人エルフも視線の先にあるものを信じ切れていないのかもしれない。
扉の先に広がっていたのは広大な野菜畑であった。そしてこれまで岩肌だけの空間だったのが何故かここはとても明るく青空のような天井が広がり、なんならちょっと気持ちのいい風が吹いている。中央に道があるのでとりあえずミナトたちは両サイドで育てられている野菜を眺めながら歩みを進める。
「キャベツ、レタス、あれって白菜?あっちはジャガイモ……、こっちは……、カボチャのような気がする。そういえばザイオンって『
「普通の冒険者がここまで来ることは難しいと思うわよ?」
「ここまでくる間に野菜ってあったっけ?」
首を傾げるミナト。
「第一階層じゃない?あの魔物の大群が気になっていたのよね。第一階層で野菜を採ったら大量の魔物が発生する仕掛けがあったんじゃないかしら……」
シャーロットの見解にそういうこともあるかもと思うミナト。
「踏破の期間が終了したら検証したい気持ちもあるけど、王家や冒険者ギルドが許してはくれないかな……」
そう呟きつつ歩みを進めると小高い丘に差し掛かった。
「おお!この辺りはトマト、ナス、ほうれん草、そしてズッキーニ?」
緩やかな坂を上りつつミナトが感嘆の声を上げる。
「ちょっと味見したいけど……」
「オイシソウですネ~」
ミナトと肩に乗っているピエールがそんな感想を漏らすが、
「ミナト!ピエールちゃん!ここはダンジョンよ?何が起こるか分からないからこの空間の詳細が分かるまでは食べちゃダメよ?」
そうシャーロットが釘を刺す。そんな話をしながら丘の頂上まで上ると、
「あそこに何かがあるってことかな?」
「間違いないでしょうね……」
「ナニがあるんでしょウ~?」
三人の視線の先には大きな建物があった。その姿は……、
「教会?それとも修道院?」
ミナトの呟きにシャーロットもピエールも同意を示す。そうして教会もしくは修道院を思わせる建造物の前に到着した一行。
「ミナト!泉のようなものが二つあるわ。『地のダンジョン』の聖水が湧いている泉に似ているけど……、色がちょっと違うわね……」
シャーロットが指し示す方へと視線を移すと、水汲み場といえるような石造りの一辺一.五メートルほどの正方形な枠の中に黄色の液体と緑色の液体が
『まさか……、修道院で黄色と緑色っていえば……』
そんなことを胸中で思いつつ、ミナトはその泉へと近づく。ミナトは状態異常を無効化する魔道具を装備している。小さな石をあしらったネックレス型のそれはアースドラゴンに造ってもらった精神耐性と状態異常無効が付与された防御用の魔道具だ。
「これがあればきっと大丈夫だと思うから……」
ネックレスをシャーロットに示しつつミナトは黄色の液体を救うと香りを確認して口へと運ぶ。次に緑色の液体が満たされた泉でも同じことを繰り返しミナトは確信し最高の笑顔を浮かべる。
「シャルトリューズの
歓喜に喜ぶミナトの声が『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます