第457話 全てを終わらせる魔法
シャーロットが臨戦態勢に入ったのと同時にその気配を感じ取ったのか、さらなる異形の姿になったザイオン=オーバスだった者の周囲に多数の魔法陣が現れる。それが輝くと共に大量の木彫りのクマと狼が出現した。
「コアを取り込んだことで
ミナトがグランヴェスタ共和国の若手職人であるドワーフのアイリスに造ってもらった愛用の短剣を構え直す。今回の冒険でこの短剣には既に相棒と呼べるくらいの親近感を覚えているミナト。
「マスターにも必要でス~!」
シャーロットが纏っている漆黒の
「ミナト!気付いている?魔法が使えるようになっているわ!ピエールちゃん!分裂体を!」
「ワカリマシタ~!」
シャーロットにそう言われてミナトとシャーロットの
「ミナト!この子たちを地上へ!」
シャーロットの意図を瞬時に理解し頷くミナト。デボラたちを喚んで事情を説明するよりもここはピエールの分裂体にお願いする方が早い。ピエールの分裂体もピエール本体とそう変わらない強さを持ったいるのだ。そうして素早く魔法を唱える。
「
魔法陣が浮かび上がりその上にいた数十体はいるピエールの分裂体が光に包まれて消えてゆく。ミナトが使う【転移魔法】の
【転移魔法】
眷属の獲得という通常とは異なる特異な経緯から獲得された転移魔法。性能は通常の転移と同じ。転移元と転移先の双方に魔法陣を設置することで転移を可能にする。転移の物量および対象に関して様々な条件化が全て術者任意で設定可能。設定した条件を追加・変更することも可。魔法陣は隠蔽することも可。
分裂体たちの行先はこのダンジョン『
「ピエール!分裂体で地上に転移した魔物を追わせてくれ!ギルドから渡された地図で防衛線を築く予定の場所は分かっている。既に戦闘が始まっているだろうから魔物の背後を分裂体に攻撃してもらいたい!」
「了解でス~!問題ありませン!……分裂体がダンジョンの外に現れたことを確認しましタ。魔物の進行方向を確認。全速での追跡を開始シマス。接触と同時に攻撃を開始しまス!」
「これで地上は問題ないわ!私はあのゴーレムを斃す!周囲の魔物をお願いしてもいいかしら?」
「ああ。任せてくれ……」
「ワタシも頑張りまス~」
シャーロットが異形のゴーレムとの距離を詰めようとその一歩を踏み出すと、木彫りの魔物達が一斉にシャーロット目掛けて突進してくるのだが……、
「そうはさせない……」
無数に生み出された漆黒の鎖がうにょうにょとした有機的な動きで木彫りの魔物を弾き飛ばし、締め上げ、その頭部を粉砕する。ミナトが得意とする【闇魔法】
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
『締め上げると普通の木材みたいな性質に変化する……?木彫りの魔物は魔法と判定されたってことかな?これなら何の問題もない……』
さらに生み出された漆黒の鎖が木彫りの魔物を次々と殲滅する。次から次に木彫りの魔物は生み出されるがミナトが生み出す漆黒の鎖の方が数も多く動きも素早い。出現した瞬間に絡みつかれあっという間に粉砕される木製の魔物。
そしてミナトとシャーロット、そして異形のゴーレムを含みその周囲を無数のピエールの分裂体がひしめき合うように取り囲む。これでは例え空を飛べても上昇中に酸弾で確実に撃ち落される。この包囲網を突破することは絶対にできないいと言ってよいだろう。
そしてシャーロットが異形のゴーレムと対峙する。シャーロットが異形のゴーレムとの距離を詰め始める。その様子はよく晴れた日に散歩にでも行くかのような気楽さを感じるミナト。
「ウガァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
この時点で人族だった時の意識がどこまで残っているのかは不明だが、断末魔のような絶叫と共に十発以上の
「この私を魔法でどうにかしようなんて笑わせるわ。ミナトの魔法は例外だけど……」
そんな呟きと共に
「ガガ……、ガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
さらなる絶叫と共に今度は無数の稲妻が顕現する。
「雷魔法は風魔法の応用……、器用なことができるのね……。でもやっぱり私には大して意味がない……」
稲妻もシャーロットに届くかなり手前で虚空へと消えて行った。異形のゴーレムは納得がいかないのか拳を握り締めつつ天を仰いで絶叫する。
「魔法が消えるのが不思議かしら?これはね、存在そのものを消しているの……。これはそういう魔法だから……。…………魂を滅茶苦茶にされているしその魂に何らかの枷も感じる。あいつらの考えそうなことだわ……。きっと斃された後も魂を回収して実験道具として利用する気なんでしょうね。でも安心なさい。そんなことはさせない。貴方の悪夢はここで終わる……、いや私が終わらせてあげるから……」
そう言い終わるのと同時にシャーロットが異形のゴーレムの眼前に移動した。瞬間移動をしたかのようなその動きに驚くミナト。そして美人のエルフがその右手を異形のゴーレムへと
「あ……、これって……」
シャーロットが使おうとしている魔法に思い当たったミナトが愕然とした表情となる。シャーロットを拘束するため慌てて
シャーロットが唱える。
「
異形のゴーレムが音もなく赤く輝く……。そして赤い閃光が収まると……、そこにいた異形のゴーレムはもはやどこにも存在してはいなかった。
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