第456話 美人のエルフはその悪夢を終わらせる
「とりあえずの問題はどうして異形になったザイオン=オーバスがここにいるのか?なのだけど……」
そう呟くミナトの視線の先にはこのダンジョン『
「『
ミナトにシャーロットがそう応える。
ザイオン=オーバスが意図せずに装着していた魔道具である『
『ザイオンが心に抱えていた負の感情とか野望って何だろう?』
ミナトがそんなことを考えたとき、
「ワタシハ……、アニウエヲコエルエイユウニナルノダ……」
そんな台詞がミナトたちの耳へと確かに届いた。
「家督を継ぐ兄への劣等感ってことかな?このダンジョンに侵入して冬季に入手しづらい野菜類を手に入れたことも王都のためになるとかって言っていたし……。誰かに認められるような功績みたいなものを残したいって感情に支配されていたってこと?」
「……だとしたらこのダンジョンで魔物が氾濫することを理解して踏破を目的にここまでやって来たのかもしれないわね」
「あのコアを破壊してくれるのなら、それはそれでいいのかな?」
そんなことを呟いてしまうミナトだったが……、
「ワタシニチカラヲ……」
その言葉と共にかつてザイオン=オーバスであったゴーレムの頭部がそこにへばり付いた表情ごと縦に割れた。そこにゴーレムとは思えない夥しい数の歯がならんだ真っ赤な口が現れる。そして頭部と顔面を縦に裂く形で出現した口を持ったゴーレムは四足歩行となり獣のような動きで虹色に輝くコアへと喰らいついた。コアから絶叫にも似た凄まじい振動音が発せられるがゴーレムはそんなことはお構いなしにコアを食いちぎりその大半を飲み込んだ。そして喰いちぎられた残りのコアが消滅する。それと同時に翼の生えたゴーレムの全身から凄まじい量の魔力が噴き上がりその身体が変化を始める。全身が大きくなり、腕が増え、翼は禍々しい形状へと変化し、コアを屠った口の中から新たな頭部が出現する。耳も鼻もその頭部にあるのは三つの目と口が一つ、そして閉じられていた三つの目が開きミナトとシャーロットと対峙する。
「マスター!ワタシたちの出番でス~」
ミナトの肩の上にいたピエールがシャーロットに纏わりついたかと思うと、漆黒の
「ミナト……、下がっていて。あれは私が相手をする。完全に異形の姿に変わっているけどあれにはほんの少しだけど人族の部分が残っている。今のミナトにあれを殺させるわけにはいかないの」
シャーロットたちはミナトに人族や亜人を殺させようとしない。シャーロットが言うには、人族、獣人、ドワーフ、エルフといった種族は自らと似た種族を殺し続ける行為を行うと魂が焼かれるらしい。そしてその焦げ付きが魔力に現れるという。シャーロットたちはその焦げ付いた魔力の感じがどうも嫌いなようだった。
「シャーロット。ザイオン=オーバスも人生を狂わされた側だけど……、助けるってことは……?」
「これは無理ね。アニムス=ギアガは複数の魂を歪な形で繋ぎ合わせたとても不安定な魔物よ。それに捕食されて異形に変異したってことは彼の魂はもう修復不可能なくらいに壊れている……。それに……」
シャーロットの言葉を遮るかのように、
「ツギハキサマラダ!!ワガミチヲハバムイマイマシイボウケンシャドモメ!!」
かつてザイオンだったゴーレムが激高したかのようにこちらに向かってそう絶叫した。
「これも『
「おれ達が変えた……?いや何もしていない気がする……、ザイオンが東方魔聖教会連合の思惑と異なる行動をとったってこと……?」
こんな状況下でも冷静に言葉を交わすミナトと美人のエルフ。相変わらずミナトの【保有スキル】である泰然自若はいい仕事をしているらしい。
【保有スキル】泰然自若:
落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。
「多分そんなところだと私も思うわ!ザイオン=オーバス!東方魔聖教会連合に利用されたあなたに恨みはない。私が貴方の悪夢を終わらせてあげる!」
シャーロットの身体からいつもの……、ミナトが身近に感じている彼女自身の魔力が溢れ出すのであった。
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