第444話 ピエールの新たなスキル
「ピエール?」
「ピエールちゃん?」
突然、飛んできた嬉しそうなピエールの念話にミナトもシャーロットも驚いた様子で反応する。
『マスター!こういうことがデキるみたいでス!』
漆黒の
ポンッ!
本来の姿である虹色のスライム形態に変化したかと思うとピエールが二体のエンシェントスライムへと分裂した。
「はい?」
「え?」
ミナトとシャーロットからそんな声が漏れる。分裂体はこの第二階層では造ることができなかったはずなのだが……。
『『分裂できましタ~』』
ふよんふよんと揺れながら二人?同時にそんな念話を飛ばしてくる。
「分裂?」
『『ソウデス~。二つのスライムに分裂スルことがデキましタ。分裂できるスキルでス。ワタシたち魔物は魔石を持っていますガ、ソノ魔石まで二つに分裂していまス~。二人いますガどちらもピエールでスヨ~♪』』
ミナトの言葉に嬉しようにふよふよと揺れつつそう返してくるピエールたち。どうやらピエールは分裂というスキルを手に入れたらしい。
『『モット分裂することモ可能でス~』』
そんな念話が届いた瞬間、次々と分裂するピエールたち。二体が四体、四体が八体、八体が十六体、十六体が三十二体……、そんな様子を呆然と見ているミナトとシャーロット。さすがのシャーロットも固まってしまっている。
『あの名作に栗饅頭が秘密道具で大変なことになってしまうエピソードがあったよね……』
固まってしまっているシャーロットの傍らでふとそんなことを思い出すミナトだが、
「タイム!ピエール!ちょっと待った!どこまで分裂できるの?」
慌ててピエールの分裂を止めようとするミナト。
『『『ウーン……、今のワタシだと二百五十六体くらいデス~』』』
二百体以上の念話が同時に届いてきた。そんなピエールを前にして、
「ピエール!分裂体は魂の入っていない
そう聞いてみるミナト。
『『『これは分裂でス!全員が
サラウンド効果のような感じで元気な念話が返ってくる。
「おれの知っている分裂だと分裂した分だけ力が弱まるとかって弱点を聞いたことがあるんだけど……?そんな感じはあるのかな?」
かつて読んだことのある世界に七個ある球を探す作品を参考にそう問いかけるとピエール全員がふよんと同じ動きをして、
『『『そんな感じはしないでス~。身体を大きくすることができなくなった気がしまスガ、酸の効果や防御力は変わっていませン~』』』
という回答が返ってきた。
『ということは……、おれの目の前には絶対に斃すことができないと伝わっている伝説のエンシェントスライムが純粋に二百五十六体いるってことか……。ピエールだからおれは何ともないけど普通の冒険者とかにとっては悪夢以外のナニモノでもないよね……』
そんなことを考えつつミナトは隣にいるシャーロットへと視線を移す。そこには呆然と固まったままの美人のエルフがいた。
「シャーロット!戻ってきて!シャーロット!」
そう言いつつシャーロットの肩を揺すってみると、
「はっ!ここは誰!?ワタシはどこ!?」
「戻ってきてくれてよかった……、まだ混乱しているみたいだけど……」
「いや……、さすがに驚いたわよ。スライムにはいろいろな種類があって様々な特徴を持っていることは知っていたけど、エンシェントスライムが魔石を含めて分裂できるなんて聞いたことがないわ!」
「シャーロットも知らなかったんだ……」
「そもそもミナトがエンシェントスライムをテイムしてコミュニケーションを取っているってことだってこの世界の歴史においてきっと初めてのことよ?ピエールちゃん?ピエールちゃんは最初から分裂はできなかったの?」
『『『ハイ。きっとマスターにテイムされたことデ使えるようになったスキルでス!』』』
元気いっぱいの念話が返ってくる。
「結局はミナトがやらかしたってことね?」
そう言ってミナトをジト目で見てくる美人のエルフ。そんな視線もやっぱり美しいと思ったりしているミナト。どうやらこの能力はミナトの【眷属魔法】である
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。眷属化した存在を強化する。眷属を確認して自動発動。強化は一度のみ。実は強化の度合いが圧倒的なので種を超越した存在になる可能性が…。
「ピエールちゃんたちはもとの一体に戻れるのかしら?」
『『『簡単でス~』』』
そう念話で返してきたピエールたちはあっという間に一体のエンシェントスライムへと合体した。
「これで魔力が使えないところでも分裂して行動をとることができるようになったのね?」
シャーロットの言葉に、
『分裂体ヲ使うのとはチョット違いまス~。分裂体が得た情報はワタシがスグに入手でき、分裂体への指示もだせマス。しかしこの分裂による実体デスとそれぞれがピエールとして独自ニ行動しまス。そのため合体しない限り情報を得ることはできませン』
「なるほど……、遠隔で操作してダンジョンの階段を見つけて貰うってこれまでの方法はちょっと難しいって感じかしら?」
『ソウナリマス~。デモ魔物を斃したり罠を解除したりは出来ますカラさっそく使って第三階層を目指しましょ~。それに
ピエールがそう言って再び分裂を始めるそうしてその中の二体がミナトとシャーロットに纏わりつくと……、あっという間に漆黒の
「鉄壁ってきっとこういうときのために使う言葉なんだろうな……」
思わずそう呟いてしまうミナトであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます