第421話 美味しい料理

 ナポリタンが完成した。これは日本でよく知られているパスタ料理。その発祥はイタリアではなく日本。ミナトが転生したこの世界にもナポリタンがありグランヴェスタ共和国で食べることができる。三百年前にいた実在の人物、グランヴェスタ共和国で建国の偉人の一人とされているヒロシという人物が広めたとされていた。おそらくそのヒロシという人物はミナトと同じ日本からの転生者なのだろう。


「流石はマスターだ。この料理も本当に美味いのだ!」


 口元をケチャップによく似たトマトソースによってとてもとても残念な状態にしてナポリタンを楽しんでいるのは黒髪の美女……、ロビンである。とても美味しそうに食べてくれるのは嬉しいのだが、せっかくの美貌がとても勿体ないことになってしまっているのが残念である。


「お、おいひいれふ……」


 これがルガリア王国を代表するA級冒険者であるティーニュによるナポリタンの感想である。こちらも口元が大変に残念なことになっているが、ティーニュはそれを気にすることもなくフォークに絡ませたナポリタンを豪快に口へと放り込む。その豪快な様子は見なかったことにしようと決めるミナト。


「本当に美味しいです……。赤ワインとの相性もいいですね!」


 笑顔でそう感想を述べてくれるのは、グランヴェスタ共和国でナポリタンを食べたことがあるのか、ティーニュとは対照的にとてもスマートにナポリタンを楽しんでいるのは冒険者ギルドで受付嬢をしているカレンさんである。


「うめー!これはうめー!ホントにうめーぞ!」

「これはたまらん!ワインもチーズも美味くてこれも美味い……。この店は最高だ!」

「トマトソースとパスタか……、ありそうでなかった組み合わせだ!」

「うまいっす!パスタって王都ではあまり食べられていないっすよね?もっと広まってほしいっす!」


 絶賛しながらナポリタンを食べているのはB級冒険者パーティである鉄の意志アイアン・ウィルの四人。この四人は思いのほかテーブルマナーを弁えた作法で食事を楽しんでいる。A級冒険者のティーニュよりもかなりスマートな食事風景と言えた。


 どうやらナポリタンは皆から好評であるようで嬉しいミナト。現在のBarは簡単なつまみやチーズを提供しているが、誰かが調理担当になってくれるのであればこういった料理もBarで出してもいいかと考える。日本で働いていたBarでもカレー、パスタ、サンドイッチなどの食事を出していたのだ。


 そんな店の未来を考えつつ、ミナトは二つのアイテムを提示する。ナポリタンにはこれが無いと多分ダメなのだ……。


「こちらはタバスコ。ちょっと振りかけると辛みと酸味が美味しいですよ?そしてこっちは細かくしたチーズ。これもかけると美味しくなります」


 タバスコに粉チーズ……、これでナポリタンはさらに至高の高みへと駆け上がる。


 ここはロビンが代表してタバスコをたらし、チーズを振りかけ……、そして一口……。


「ん~~~~!」


 そのとびっきりの表情を見ることができたのが嬉しいミナト。そんなロビンの様子にティーニュも鉄の意志アイアン・ウィルの四人も先を争ってタバスコとチーズをナポリタンへと振りかけるのであった。


 カウンターのお客がナポリタンを楽しむ中、手早くナポリタンを食べ終えたミナトは食後酒の準備に取り掛かる。


『バターを使ったナポリタン……、やっぱり食後酒の一杯目はカンパリかウンダーベルグを使ってホロ苦い系のカクテルがおススメだけど……、女性にはフルーツカクテルだよね……。さっぱり頂くならこのまえアースドラゴンさんに造ったアルゴンクィン……、あ、さっぱりならスーズのソーダ割りも……』


 美味しい料理とお酒による戦闘訓練の打ち上げはもう少し続くのであった。

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