第320話 ステータスの再々確認を1
「シャーロット……」
淡い光に包まれるアースドラゴンとエンシェントスライムを前にしてミナトは遠い目をしながらそう呟くのが精一杯だ。
「アースドラゴンをテイムすることはいいとして、エンシェントスライムって……。オリヴィアの時も驚いたけど……、これはもう驚きを表現する言葉が見つからないわ」
「うむ。マスターのことだから驚かぬ……、と言いたいところではあるが、やはりこれは驚愕すべき事態であろう。レッドドラゴン、ブルードラゴン、フェンリルに加えてアースドラゴン……、ここまではまあよい。だがエンシェントスライムまでテイムするとは……」
「ん!さすがマスター!真なる魔王様だけのことはある!」
「エンシェントスライムってテイムできるんですね……。改めて魔王様の凄さに感服いたします……」
シャーロット、デボラ、ミオ、オリヴィアの美女四人がそんなことを言ってくる。
「ミオさんとオリヴィアさん……、ワタシは魔王ではアリマセン……」
放心状態のままミオとオリヴィアに辛うじてそう反論するミナト。心ではしくしくと涙が流れている。
「あらあら~?この光は何でしょう~?そしてこれは~?この湧き上がる……、これは力の奔流でしょうか~?」
アースドラゴンはというと光に包まれながら右手をその頬に当て首を傾げつつにこやかにそう言っている。
ふよんふよんふよん。
エンシェントスライムも力が漲っているのか元気そうにその虹色に輝く身体を飛び跳ねさせながら発光している。
「やっぱりそうなるよね……」
ミナトはそう呟く。アースドラゴンが言っている湧き上がる力……、この現象はミナトがレッドドラゴンをテイムした際に得た【眷属魔法】
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。眷属化した存在を強化する。眷属を確認して自動発動。強化は一度のみ。実は強化の度合いが圧倒的なので種を超越した存在になる可能性が…。
ミナトは気力を振り絞ってシャーロットへと顔を向ける。恒例行事となった感があるステータスを確認しなくてはいけないのだ。
「シャーロット……、お、おれのステータスは……?」
「ふふふ……、やっぱり楽しみよね?ステータス!オープン!!」
美しい声が響き、それと同時にミナトの前に透明なプレートが出現した。そこには次のような表示があった。
【名 前】 ミナト・ホシノ
【年 齢】 二十一
【種 族】 まだギリ人族
【攻撃力】 一〇〇
【防御力】 一〇〇
【俊敏性】 一二〇
【保有スキル】 泰然自若 火竜を
白狼王の飼い主 暴食王の飼い主
【保有魔法】 闇魔法 Lv.MAX
転移魔法 Lv.SP
眷属魔法 Lv.SP
収納魔法 Lv.SP
重力魔法 Lv.SP
「これはアカン!」
ミナトはその表示を見て驚愕の声を上げる。
「ミナト?ふふ…、どうだった?」
レッドドラゴンをテイムした時は心配そうなシャーロットだが、ブルードラゴン、フェンリルをテイムしてしまった現在では普通に笑顔だ。
「シャーロット……。見ていいよ……、みんなも……、どうぞ……」
そう言われてシャーロット、デボラ、ミオ、オリヴィアはミナトのステータスを覗き込む。
「また保有スキルが増えているわね。……『暴食王の飼い主』ってスキルがすごく……、すっごーーーく気になるけど、まずは『地竜を
「うむ。『地竜を
「ん。真なる魔王の降臨は近い!というかもう降臨している?」
「偉大なる魔王様に改めて我が生涯の忠誠をここに誓わせて頂きたく……」
無邪気にかつ嬉しそうに感想を述べてくる四人の美女たち。
「それでね……、またおれの種族が……」
ミナトが種族の欄を指し示す。これまでは『人族かな?』と表示されていた箇所だ。そろそろ人族じゃなくなってきているらしい。
「えっ?あ、ホントね!やっぱりこれも初めて見る表示だわ!これだとあと少しで私たちと同じくらいの存在になるかもしれないわね!」
「ほう!人族を超えるまでもう一息といったところだな」
「ん!あとちょっと!」
「待ち遠しいです!」
そんな美女たちの反応に、
「え?みんなどうしたの?」
そう返すミナト。これまでの種族名をからかうパターンではない反応だ。
「うふふ……、まだ秘密よ」
「うむ。楽しみにしているとよい!」
「ん。ボクたちも楽しみにしている!」
「その日が待ち遠しいです」
はぐらかされてしまうミナト。これ以上、種族が変わると何が起こるのか……、少し不安なミナトであるがパートナーである彼女たちはそれを待ち望んでいるらしいことは理解する。これまで一緒に行動してきて彼女たちがミナトを害することなど恐らくあり得ない。あったとしても彼女たちを信じているミナトはそれをそのまま受け入れる覚悟が既にある。だからこそ、
『それならいいのかな……』
心の中でそう呟き納得の表情になるミナトであった。
「ミナト!前と同じようにスキルの詳細も見てみましょう!」
そう促されてミナトはステータスが表示されているプレートの【保有スキル】に触れた。途端に画面が展開される。
【保有スキル】泰然自若:
落ち着いて、どの様な事にも動じないさまを体現できるスキル。どのようなお客様が来店してもいつも通りの接客態度でおもてなしすることを可能にする。
【保有スキル】火竜を饗する者:
火竜を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
眷属化した火竜の能力も限定的に使用可能。
火竜を
テイムスキル【火竜を統べる者】の上位互換。
【保有スキル】水竜を饗する者:
水竜を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
眷属化した水竜の能力も限定的に使用可能。
水竜を
テイムスキル【水竜を統べる者】の上位互換。
【保有スキル】地竜を饗する者:
地竜を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
眷属化した地竜の能力も限定的に使用可能。
地竜を
テイムスキル【地竜を統べる者】の上位互換。
【保有スキル】白狼王の飼い主:
白狼を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
身体強化魔法の性能を圧倒的に向上させる。上限はなし。強化の度合いは任意。
強化しすぎると人族では肉体が瓦解する危険があるので注意。
種族が人族であるときは気を付けましょう。
【保有スキル】暴食王の飼い主:
エンシェントスライムを自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
肉体的な変化はありませんが、進化したエンシェントスライムがあなたの相棒として意のままに行動します。
ドラゴンでも始末に負えないとされる最強のスライム、さらにその進化版を自在に操るという凄まじさと楽しさをその身で体感してください。
ミナトは思わず天を仰ぐ。【保有スキル】地竜を饗する者は間違いなく火竜を饗する者や水竜を饗する者と同様のスキルだ。この世界の属性を司る伝説的存在であるレッドドラゴンとブルードラゴンに加えてアースドラゴンを従える……、それは『世界の半分をくれてやろう』というどこかの王の台詞をマネしてもそれがあながち嘘じゃないことになってしまうくらいトンデモナイ力を手に入れたということだ。
そしてエンシェントスライムをテイムしたことで得た【保有スキル】暴食王の飼い主もかなり問題だ。エンシェントスライムに対してアースドラゴンは無力、レッドドラゴンやブルードラゴンにとっては斃しきることができない相手、シャーロットにとっては最強クラスの魔法を行使すれば斃すことは可能な相手だ。そんな魔物がミナトの【眷属魔法】
「文字で見ると壮観ね……。世界の属性を司るドラゴンの半分をテイムしているって……。それにエンシェントスライムのスキルも凄いと思うわ!」
「うむ。誰に話しても信じて貰えない程の狂気の沙汰だな……」
「ん!エンシェントスライムを従える存在などこれまで聞いたことがない!マスターの凄さがまた一段とアップ!」
「最強の軍勢を従えていることは間違いないでしょうね」
もうこのスキルボードを他人に見せることは決してないだろう。心の中の涙が止まらないミナトである。
「ミナト!まだあるわよ!【保有魔法】も楽しみね!」
そう言われてこれまでと同じように頭痛を感じてしまうミナトであった。
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