第279話 レイド本隊は第五層へ
時は少し遡る……。
レイドの本隊に残ったミナト、シャーロット、オリヴィアは『地のダンジョン』の第五層を目指していた。
『随分と移動速度が速い。これだと下級の冒険者は大変じゃない?』
ミナトの独り言が念話となって飛んでくる。それほどまでに本隊の移動速度は上がっていた。ミナトは身体強化の魔法が使えるので本隊の移動スピードに合わせて楽々とついていくことができる。ミナトの身体強化魔法は並ではない。なんといっても【保有スキル】がとんでもないからだ。
【保有スキル】白狼王の飼い主:
白狼を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。
身体強化魔法の性能を圧倒的に向上させる。上限はなし。強化の度合いは任意。
強化しすぎると人族では肉体が瓦解する危険があるので注意。
種族が人族であるときは気を付けましょう。
【保有スキル】白狼王の飼い主の恩恵を十分に享受するミナトである。
『そうね、回復魔法を使っていなかったら途中で半分以上が脱落してしまいそうよ?』
そんなミナトにシャーロットが念話を返す。彼女は身体強化の魔法を行使していないようだが現在の移動速度は問題ないらしい。
『途中までのミオ様とここまでのシャーロット様の回復魔法がなければ下級冒険者の大半はこの第四層で置き去りにされていた可能性があります。このレイドは本当に下級冒険者のためを思って開催されているのでしょうか?』
オリヴィアからも疑問の感情が乗った念話が飛んできた。こちらも楽々と並走している。流石は
『リーダーやってるレバンドンは最初の休息ポイントで脱落しない冒険者を見て大げさに感激していたからな……。下級冒険者がどんなものか……、っていうか周囲の状況を全く分かっていないんじゃないか?』
『自分にとっての環境が整っていることで周囲の冒険者達も同じような状況にあると思い込んでいるのかしら?』
『好ましい人族とは言えませんね……』
そんなことを話しながら運搬役の下級冒険者達が脱落しないようにシャーロットにお願いしつつ移動を続けていると第五層へ降りる階段へと到着した。
レイドを取り仕切っている『大穴の
『大穴の
ミナトの視線の先にはジングと呼ばれた赤毛の剣士とカトリナと呼ばれた
『シャーロット……、あの連中の魔力って……?』
思わずシャーロットに問いかけるミナト。
『あれは酷いわね。同族を殺すことに快楽を感じるとあんな魔力になることがあるのよ』
『それにしてもこの平和な時代に人族であれはちょっと異常じゃないですか?』
シャーロットとオリヴィアから不快感を満載したような念話が返ってくる。そしてウッドヴィル公爵家の執事から感じた魔力との違いについては、『使命として同族の命を奪ったものと快楽殺人者の違いよ』と教えてくれた。
あの三人に関しては何かがあった時に下級の冒険者を護ってくれるとはとても思えないミナトであった。
そうして第五層へ降りる準備が整ったようだ。ジング、カトリナ、そして黒髪の魔槍使いを先頭にして戦闘役を担う『大穴の
「ミナト。第五層からはゴーレムが出るわ。第五層はほぼ全てが最弱のストーン・ゴーレムだけどそこそこ硬いから一応気を付けてね。たぶんストーン・ゴーレムを簡単に斃せないことが第五層の探索を困難にさせているんだと思うわ」
シャーロットの言葉に目をパチパチさせるミナト。まだこの世界に来てゴーレムは見たことがない。
「おお!ゴーレム!それはとってもファンタジー!」
歓喜するミナト。
「またあなたの世界にあった創作物の知識?本当に発想が豊かなのね……」
呆れたように呟くシャーロット。
「ストーン・ゴーレムが最弱ってことは他のゴーレムも?」
「はい。下層に行くといろいろなゴーレムが出てきます。アイアン・ゴーレム、ミスリル・ゴーレム、オリハルコン・ゴーレム……、斃せば鉱石の採り放題というところでしょうか?」
オリヴィアがそう説明してくれた。
「それは楽しみだ……」
そう呟きつつミナトはシャーロットとオリヴィアを伴いつつ第五層の階段を下りる。どんな冒険が待ち受けているのか……、レイドに関連するあれこれは気になるが新たな冒険に心躍らせるミナトであった。
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