第250話 火球と氷壁
ミナトは
「うわっと!」
「ん!移動!」
思わず裏手の倉庫の屋根へと飛び移るミナトとそれに続くミオ。次の瞬間、建物の全ての窓と出入り口を破りありとあらゆる隙間から大量の水が溢れ出す。その様子は地上にあるにもかかわらず、まさに水没という言葉が相応しかった。建物内に居た連中は全員が大量の水に飲まれているだろう。運がよければ窓か出入り口から流し出される筈だ。
「あと残っているのは……」
そう呟きつつミナトは足元と他にもいくつかある倉庫へと目を向ける。その索敵能力で気配を探るがどうも今日は従業員を一人も来させてはいないらしい。
「……であれば……」
そろそろ騒ぎになる早めに退散したいところだがどの倉庫にするべきか……。
「ん!マスター!あの倉庫から魔力を感じる。きっと魔道具の倉庫!」
「確かに……」
ミオの言葉で視線を向けた先にあったのは一際しっかりとした造りの倉庫。確かに魔力を感じる。基本的に魔道具は高価……、
「だからあそこに決めた!射出!」
「ん。ゴー!」
ミナトは
「……流石にここまでとは思わなかったよ。あんなのが大会の会場で爆発していたらと思うと……」
「ん。さすがマスター!
サムズアップでそう言ってくるミオ。
「さてと……、ミオ!戻ろうか?ここで誰かに見られるのはあまりよくないからね」
「ん!了解、……ふにゃ?」
再びのお姫様抱っこである。そうしてミナトの体内から魔力が立ち昇る。
「あとこれはおれからの贈り物ね!
ミナトの周囲に直径二メートル程の青白い火の球が残っている倉庫の数だけ出現する。その辺りの魔導士が使う
【眷属魔法】
極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。レッドドラゴンを眷属化したため取得。
そして打ち出された青白い火の玉は素晴らしい速度で残っている倉庫へと着弾。爆発と共に一部が半壊し炎上する倉庫。
「ん!ボクも!
ミナトの腕の中でミオがそう唱える。炎上している倉庫が次々と氷の高い壁に囲われた。
「ミオ?」
「ん。あの氷は明日まで融けない。倉庫の中から何かを持ち出すのは不可能。森での襲撃のお返し」
「あー、そうか……」
ミオにも思うところはあったらしい。
「よし!行くとしますか?
その言葉と同時にミオを抱き抱えたミナトの姿が消える。身体強化魔法を発動し屋根伝いに大会会場を目指す。
「ん。戦闘はなかったけど魔法が使えてよかった。だけどまだ足りない。次の戦闘もボクがやる!」
ミオがそんな好戦的ことを言ってくる。
『分かったよ。次もお願いね……』
そんなことを約束させられてしまうミナトであった。
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