第236話 そして狩りまくる

「ん!この結界を張ったのはボクだからというのは理解しているけど……、ぷぅ!」


 そうして頬を膨らませるのはミオ。ブルー・フロッグを狩りまくることを宣言したミオであったのだが現在も懸命に魔石を鑑定しているアイリスを護るために張ってある結界はミオのものである。張り直すのも面倒とのことなのでミナトはミオにこのまま結界の維持とアイリスの護衛をしてほしいと頼んだところこのように頬をパンパンに膨らませるミオが出来上がった。


 不服そうな表情のはずなのだが可愛いという単語の方が先に出てきそうなその姿にほっこりしてしまうミナト。


「ん!シャーロット様とデボラばっかり戦闘してる!次は必ずボクがでる!」


 結局、可愛く両手を振り上げながら物騒なことを言うミオに『次は君にお願いするね』と約束させられたミナト。


「ん。わかった!頑張って!ボクの結界なら三人と所持品は出入り自由!」


 ミオのその言葉を受けて、


「行きますか?」


 シャーロットとデボラを伴いミナトはブルー・フロッグを狩りへと出撃する。結界の外には未だに結界へとアタックをかけている多数のブルー・フロッグ。そして少し先の湿地帯にも夥しいという言葉がぴったりな程のカエルがいた。


 身体強化の魔法を自身へと施したミナトは結界にへばり付く一匹のブルー・フロッグを蹴り飛ばしながら結界の外へと出た。丸々と太った体長一メートルのカエルが奇麗に宙を舞う。【保有スキル】白狼王の飼い主があることでミナトの身体強化魔法はその性能が跳ね上がっているためこのようなことは容易い。


【保有スキル】白狼王の飼い主:

 白狼を自身の眷属として相応しい形で強化し従わせる。

 身体強化魔法の性能を圧倒的に向上させる。上限はなし。強化の度合いは任意。

 強化しすぎると人族では肉体が瓦解する危険があるので注意。

 種族が人族であるときは気を付けましょう。


 結界を出たこちら側はアイリスから見た背後。ミナトは【闇魔法】ではない魔法を使ってみることにした。


火竜の息吹ファイアブレス!」


 その言葉と同時にミナトの両手から青白い炎が火炎放射器のように放たれ、触れたカエルを一瞬にして次々とドロップ品へと変えてゆく。


【眷属魔法】火竜の息吹ファイアブレス

 極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。レッドドラゴンを眷属化したため取得。火竜の息吹ファイアブレスが放てます。口だけではなく任意の場所から発動可。普通の炎も出せると便利でしょ?


 とりあえずこれくらい……、などと考え込めた魔力による射程は五十メートル程。ミナトは込める魔力を増大させ射程を遥か彼方まで延ばすとその圧倒的な炎で湿地帯のカエルを薙ぎ払う。


 風の魔法で宙を舞いシャーロットはミナトとは距離を取って大量のブルー・フロッグからなる群れの中心へと降り立った。突然に姿を現したシャーロットを瞬時に獲物と見なし、夥しい数のカエルの魔物がシャーロットへと飛び掛かる。しかしそれに怯むようなシャーロットではない。


「いくわよ!風刃斬ウインドカッター!」


 気迫が込められつつも鈴を鳴らしたような美しい声が湿地帯に響き渡る。魔法を唱えた美人のエルフ……、シャーロットを中心に飛び掛かっていったカエルが一匹残らず細切れになりドロップ品へと変化する。シャーロットを中心にして同心円状に広がるその光景は圧巻の一言であった。


 自身の身体能力を生かしてデボラもまた別方向へと跳躍する。向かった先には平野が広がり大量のブルー・フロッグが飛び跳ねていた。


炎槍フレイムスピア!」


 その言葉と共にデボラの右手の人差し指から一条の赤い閃光が放たれる。その閃光は触れたカエルを全てドロップ品に変えながら視界の限界まで届く。


「ふん!」


 デボラが右腕を振り回し、それに連動する形で振り回された閃光が次々とカエルを蹂躙する。


『シャーロットもデボラもすごいよね……、あれ……?えっと……、デボラのあの攻撃ってどこかで……?』


 嬉々としてカエルを狩りまくる二人の圧倒的な様子に少し圧倒されてしまうミナト。


『あ!シューティングゲームでレーザー振り回して点ではなく面の攻撃にするってのがあった気がする……』


 かつての世界でパワーアップカプセルを取って強化を重ねる王道のシューティングゲームを思い出す。


『おれはスリーが好きだった……』


 なんて心で呟いたりしてみるミナト。


 そうして三十分ほど蹂躙を続けていると……、


「やばい……、狩り過ぎたかな?」


 ミナトが思わず声を上げる。


 ミオが張った結界、そこから見渡せる範囲にいた全てのブルー・フロッグが狩りつくされていた。先ほどまで夥しい魔物がいたその光景が、夥しい魔石と小瓶がある光景に置き換えられていたのである。

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