第232話 重水の部屋へ
踏破されたことで魔物が出現しないダンジョン『カエルの大穴』をマップ片手にスイスイと進んだミナトたち一行は最下層へと到達する。最下層は薄暗い洞窟型の構造で細い通路が迷路のように入り組んだ造りになっていた。ここは全ての通路がマッピングされており、そのマップによると最下層の南端に目指すべき重水の部屋があるらしい。
そうして入り組んだ細い通路をマップどおりに歩みを進めると開けた空間に出た。薄暗いが草原があり草木も生えている不思議と大きい空間である。そこをさらに進んでゆくと……、
「これが入り口?」
ミナトたちの前に金属製と思われる大きな両開きの扉が現れた。
「……みたいね。さ、頑張りましょう!」
「うむ。腕が鳴るな!」
「ん。ふぁいと!」
シャーロット、デボラ、ミオという絶世の美女たちがやる気を見せる。
「ほ、ほんとうに大丈夫なのでしょうか?わ、わたしが聞いた話では入った瞬間に無数のブルー・フロッグが襲い掛かってくるとか……」
ぷるぷると震えながらそう言ってくるのは依頼主のアイリスだ。
「大丈夫!ケイヴォン君はおれ達が強いって言っていたけどそれは間違いじゃないからね」
そう言ってミナトはシャーロットたちに向き直る。
「さてと……、おれが入って最初に飛び掛かってくるっていうカエルを一通り斃そうかと思うんだけどいいかな?」
「それで問題ないわ!」
シャーロットが答え、デボラとミオも頷いてくる。するとミオが手を上げた。
「ミオ?」
「ん。マスターの次にボクが入って結界を展開、維持する。今回はシャーロット様のあの魔法がきっと役に立つはず。結界はボクの役目!」
そう言ってシャーロットを見上げるミオ。ミナトとデボラは首を傾げている。そうしてあの魔法と言われたシャーロットは少し考える仕草をした後……、思い出したとばかりにポンっと手を合わせた。
「ミオ、あなたよく覚えていたわね。確かに……、あの魔法は使えるわ!なんで火のダンジョンとか水のダンジョンで使わなかったのかしら……」
「ん。ものわす……」
「消滅を望んでいるのかしら?」
ミオの言葉を遮ったシャーロットの全身から信じられないくらいの魔力が溢れ出した。大慌てでデボラがアイリスを守るための結界を展開する。ミナトはシャーロットの背後に巨大な見てはいけない何かを見た気がした。
「ん。ボクはまだ死にたくない……」
ふるふると首を振るミオからも莫大な魔力が溢れ出す。睨み合う絶世の美女二人。状況は二大怪獣大決戦の様相を呈し始めた。どうしたものかとオロオロするミナト。
「……フフ。ミオ。思い出させてくれてありがとう。これからも宜しくお願いするわ」
そう言ってニッコリと笑うシャーロット。
「ん。シャーロット様。これからもよろしく」
ミオも笑顔でそう返す。握手を交わす二人。どうやら冗談の類だったようだ。以前、シャーロットとデボラも似たようなことをしていたが心臓に悪いから止めてほしいと思うミナトである。
「ミナト!魔石と小瓶の回収は任せなさい!私が全て回収する。あなたは心置きなく殲滅しなさい!」
「りょ、りょうかいです……」
そのままくりんとこちらを振り向きそう言ってきたシャーロットに戸惑いながらも答えるミナト。
「そうなるとミオの次に私がアイリスちゃんを伴って入るわね」
何事もなかったのでほっとしつつ、シャーロットの話を聞きながらあの魔法って……、などとミナトが考えていると、
「では我が皆の背後を守りつつ最後に入るということで問題ないな?」
アイリスに展開した結界を解きつつデボラがそう言ってきた。アイリスは何が起こったのか分からず顔には大きな疑問符が浮かんでいる。
「デボラ。お願いするよ。もしさっきの連中が何か仕掛けてくるようだったら君に任せるね」
「うむ。任された!」
ミナトの言葉に力強く頷いてみせるデボラ。アイリスは未だにふるふると震えているがこうしてミナトたちのプランが決定する。
「よし、行くとしますか……」
そう呟きながらミナトが両開きの扉を開くと、そこは真っ暗でなにも見えない空間が広がっていた。
「転移に近い入り口ってやつね。この魔力だと一定の場所に転移する仕掛けのようね……。入った瞬間に景色が変わると思うわ。ミナト!一応は気を付けてね!」
「ああ、じゃ、行ってくる!」
シャーロットに笑顔でそう返したミナトの姿が扉の奥へと消える。
「明るい……、おっと!」
ミナトが呑気な呟きを漏らそうとした瞬間、何本もの漆黒の鎖がミナトの周囲へと展開され襲い掛かってきた複数の魔物を瞬く間に打ち据えた。魔物達はあっという間にその姿を魔石へと変える。扉に入る前から展開していた【闇魔法】
【闇魔法】
ありとあらゆるものが拘束可能である漆黒の鎖を呼び出します。拘束時の追加効果として【スキル無効】【魔法行使不可】付き。飲んで暴れる高位冒険者もこれがあれば一発確保!
ミナトが立っているのは明るい空間。第一階層によく似ており水場と草地が混在する湿地帯が広がっている。周囲を確認すると、
「なるほど……、これは確かに夥しい数だね……」
最初の一撃で五匹以上のブルー・フロッグを斃したはずなのだが、みっちりと集まった数えきれないほどのカエルがミナトを取り囲んでいる。体長はおよそ一メートル。水のダンジョンにいるスモール・フロッグよりは大きいが斃しまくったジャイアント・フロッグよりは小さいサイズだ。そんなカエル達が今にも飛び掛かってきそうな動きを見せるが、
「行くぞ!
かなりの魔力を込めたミナトの【闇魔法】により周囲一帯を漆黒の炎が埋め尽くし、あっという間にカエル達が消滅する。
「ん!結界を展開!」
ミナトの背後からミオの声が響くと同時に彼女を中心に半径二十メートルほどが結界に覆われた。
「ミナト!これが特殊魔法よ!
さらにシャーロットがミナトの背後から魔法を唱える。すると結界内に散らばっていた大量の魔石と一つの小瓶が空中へと浮き上がり、瞬く間にシャーロットの足元へと集められるのであった。
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