第15話 お久しぶりのアムテル様。




あれは1ヶ月前、まだ父さんや上の兄さん2人が帰ってくる前のある日、自分が5歳になる前の日の夜。

何時も通りに母さんに挨拶をして、アイリスとベルタにベッドに入るのを見届けられて眠りにつくと、何処とも知れない草原に居て目の前に女神アムテル様が立っていた。


「お久しぶりですね慎一さん、いえ、アレクシス君。」


「アムテル様!」


自分は驚き慌ててひざまずこうとしたが、それをアムテル様は手で制して優しく微笑みながら言う。


「アレクシス君、5歳になりましたね、おめでとうございます。

それで突然なのですが、この世界で5歳になれた時には病気等で死ななかったので一安心ということで、教会に行くことになると思います。」


「教会ですか?」


「はい、そこで神々に加護をもらうことになるのだけど、もらえないことはほぼないので安心してね。」


「そうなんですか! なら自分ももらえるんですね!」


「ちょっと違いますね、アレクシス君にはすでに私の加護を与えてあります、他の神々が与えられないように強力なのを。」


「すでにもらえてたんで……強力なの?」


「はい、私のアレクシス君に変な加護が付かないように、強力なのをです。」


なんか変なことを言い出したよ、でもすごく嬉しそうだしあんまり突っ込まない方がいいかな?


そう考えて自分は他の話をすることにした。


「ところで今日は他の神様達は居ないのですか?」


「……わ、私だけじゃダメでしたか?」


うお! とたんに涙目で真っ青になったぞ!


「い、いえ、前の時は他の皆さんも来てたので! もちろんアムテル様が来てくれてもの凄く嬉しいですよ!」


「そうでしたか、実は他にも来ようとした者はいたんですが、少し用事が出来てしまい来れなくなったのです。」


自分の言葉に納得してくれて、機嫌をなおしてくれたアムテル様は他の神々は用が有るから来ないと言う。


「用事ですか、神様達の用事ってどんなことなんですか?

あ、もちろん話せないことなら大丈夫ですので!」


興味を持った自分がそう聞くと、アムテル様は少し困ったような顔をした。

なので無理に話さなくても気にしません! っと言葉と行動でアピールすると、アムテル様は話せないことではないから大丈夫だと話し始めた。




「用事と言うのがドライト様の事なんですよ、ドライト様がブル○ンとか言う商会、会社って言うんでしたか? そこの株というものを買い集めていたのはご存じでしょうが、思ったよりも買い集められなくてブチ切れてエシャスに分身体の大軍を連れて乗り込んできたんですよ。」


ええ! ドライト様と争いになったの!?


「それでみんなで逃げ出そうとしたら、ドライト様が何時のまにやら入り込んでいた邪神を捕まえて拷問を……すいません、ちょっと離席します。」


よかった、争いになってなかったのか……それよりもアムテル様はさっきまで無かった扉の向こうに行っちゃったけど、あ、なんか水の音がする、トイレだったのかな?


「し、失礼しました。」


少し待つと出てきたアムテル様だが顔色が凄く悪い、というか吐いてたみたいだ。


「だ、大丈夫ですか?」


「大丈夫です、ちょっとドライト様が邪神に加えた拷問、罰を思い出したら気持ちが悪くなってしまって……」


神様が吐いちゃう拷問って一体どんなことを……他の話を聞こう、そうだ他の神様達のことを聞こう!


「そ、それで他の神様達は……」


「それが何ですが、ドライト様が邪神を一体取り逃がしたそうなんです、ショボすぎて見逃したらしく、後は任せましたと言って帰って株の売買に戻ってしまったんですよ。」


ショボすぎて見逃したって……


「それで他の者達はその捜索をしていまして、どうやら本当に物凄く弱いらしくて私達だと感知するのも難しいのですよ。

それでも見逃すわけにはいかないので総出で探してるんです。」


そんなに弱いのか……あ、そうだ、神様と言えばあの国の神様の事を聞いておこう。


「アムテル様、神様の事で聞きたいのですが、メンヒス公国の神様ってどんな神様なんですか?

たしか……ヘズオン様、だったかな?」


「ヘズオン? 聞いたことが無いですし、メンヒス公国はチエルルナ様を主神として祭って……み、見つけた!」


アムテル様は見たことがないと言いながら目をつぶり少しすると、驚きながら見つけたと叫ぶ。


「え、見つけたってもしかして。」


「邪神よ邪神、みんなで行って直ぐにぶっ殺してやるわ!」


ぶっ殺してやるって……


自分が少し引いていると、アムテル様は少し顔を赤らめてこちらに向き直り話しかけてくる。




「そういう訳で他のみんなは来れなかったけど、ちゃんと見守っているから安心してね?

あと、教会に行ったときにもしかして加護が授けられそうになるかもしれないけど、絶対に受け入れないようにしてね?」


「え? 受け入れると不味いのですか?」


「ええ、邪神のものだと考えてもらって間違いないかと。」


「わ、分かりました、絶対に受け入れません!」


邪神の加護なんて欲しくないのでそう言うと、アムテル様は嬉しそうに自分の頭を撫でてくれる。


「それでは私は戻ります。

アレクシス君、これからも武術の訓練や勉強を頑張って、この世界を少しでもいい方向に導いてくださいね? それではまた会いましょうね。」


そう言うとアムテル様は透けて消えてしまう、それと同時に周りの景色もボヤけていき、自分はベッドの上に戻っていた。


「……アレクシス様、どうかなされましたか?」


自分が起きたことに気がついたのかアイリスが声をかけてくる、ベルタも起きているようで気配が伝わってくる。

本当に優秀な2人で助かっているけど、夜に抜け出したり全然できないんだよな。


「……凄くいい夢を見て起きちゃった。」


「そうですか、アレクシス様ももうすぐ5歳ですから、素晴らしい加護を受ける前兆かも知れませんね。」


「そうですね、アレクシス様なら素晴らしい加護をお受けになられますよ!」


アイリスとベルタの言葉に心の中でアムテル様に決まってるんだけどね、と思いながらが答える。


「そうだね、そうだったら嬉しいよ。

それじゃあ寝るね、おやすみ。」


「「お休みなさいませ。」」


そして、教会に行く日を楽しみにしながら自分は眠りにつくのだった。




それが1ヶ月前のことで、そして父さんや兄さん達が帰ってきた次の日に父さんが朝食の前にみんなに言うのだった。


「今日はアレクシスを教会に連れていき、加護を授けてもらえるように神々にお頼みする。

皆も連れていくので、朝食が終わったら準備をするように。」


こうして俺の加護をもらうために、教会に向かうことになったのだった。



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