第二話:結局はそうなる
それは、
互いに束ねた金髪をなびかせながら、華やかに進んだラリーは、一ゲーム毎にどんどんと長引いていき、それは完全な長期戦となったのだが……。
「う、
「い、妹ちゃんこそ。正直、もう無理」
「わ、私も。もうダメです」
結果、そこに勝者はいなかった。
五ゲーム先取とした勝負は、互いに二ゲームを取り合ったものの。
二人が経験しない程の長丁場から、お互いあっさりと体力の限界を迎え、四ゲームを終えた時点で二人共へなへなとコートに座り込んでしまっていた。
「二人共よく頑張ったけど、無理して倒れてもいけないし。ここまでにしようか」
好ゲームを見ることができた
「
「本当にね。さて、僕等も労いに行こうか」
* * * * *
「ぷっは~っ! 生き返る~!」
本当に向日葵のような快活な笑顔に、褐色の肌に浮かぶ汗。
白いテニスウェアも相成って、本当に爽やかさを感じる。
──
諒はそんな彼女を見ながらそんな感想を持つと、ふっと笑顔を見せた。
「本当に二人共、いい勝負だったね」
唯一立ったまま三人を見下ろす
「
やや前のめりになり息を整えていた
「妹ちゃんだって制球力ヤバすぎ。あれでもっと速い球打たれてたらお手上げだったよ~」
釣られて前のめりになった
「二人共一緒に練習したら、良いライバルになりそうだよね」
諒もまた二人の実力を感じてそんな感想を述べた。
と。それに反応して、
「あ。諒君もしかして、褒めてくれてる?」
「え? あ、うん。勿論」
「じゃあさ~。折角だし~、二人の頭を撫でながら褒めてくれたら嬉しいな~」
突然甘ったるい口調と、潤んだ瞳でおねだりをする彼女に、諒は一瞬きょとんとした後、あからさまに戸惑いを見せた。
「い、いやさ。だって二人の勝負は決着つかなかった訳だし」
「でも私も妹ちゃんも、超がんばったよ? ね?」
「あ、はい。すっごく真剣に頑張りましたよ!」
「だよね~。だからさ。折角だし。ね? ね? ほら。妹ちゃんも」
「……ねえお
最初は
──これ絶対、あの時のだろ……。
察しの悪い諒も、流石にこの息のあった反応に何が起きたのかに気づくと、思わず大きなため息を漏らす。
そして。
「まったく……。二人共よく頑張ったよ。お疲れ様」
すっと二人の肩に手を回すように、多少窮屈ながら二人の金髪に手を乗せると、優しくその髪を撫でた。
普段あまり感じない、
「えへへ。これ、すっごく気持ちいいな~」
横に回された腕に、頭に感じる手の感触。
満足そうに、とろけた顔で幸せそうな表情の
「ですよね。お
同じ表情でそんな褒め言葉を掛ける
二人は暫くの間、
* * * * *
「でも、
やっと二人が満足し解放された諒がほっとする中。
確かに、幾らなんでも普通、同級生の異性にこんな馴れ馴れしいお願いなどするはずがない。
だからこそ、それが凄く気になったのだが。
その言葉に、
「いやね。小さい頃はお母さんにこういう事してもらったけど、最近そういうの全然なくてさ。で、うちって小さい妹がいるじゃん。あの子達もよく頭なでて~ってねだってくるんだけどさ。いい子いい子~って撫でてやると幸せそうな顔するから、今されたらどんな感じかな~って思って」
「でも、それって諒じゃなくても良かったんじゃないかな?」
だが、そんな問い掛けにも
「本当はね。でも諒君って優しいし、妹ちゃんにしなれてそうだからきっとしてくれるんじゃないかな~って思って」
「別に優しくはないよ。まあ、慣れてるかと言われたら、多少は──」
「そそそ、そんな事ないです! お
未だ迫られた動揺が続いているのか。諒が素直に答えそうになるのを、
露骨な程の反応に、
「そっか~。それならもう少ししてもらうと良いと思うよ。ちゃんと諒君も褒めてあげてね」
などと言いながら、悪戯っぽく笑い返した。
「そ、それより! 椿さんの出る『富士キッズ&ロックフェスティバル』って、三日でしたよね?」
流石にこんな恥ずかしい話題を赤裸々に語る展開に耐えられなくなった
「そうそう! それで思い出した! あれ、同じ日にTwo Rougeも歌うのは妹ちゃんも知ってるよね?」
「勿論です! でもあれ、
話しながら落胆を見せる
「ねえねえ妹ちゃん。折角だから三日、
「え? もしかして
「ふっふっふ。勿論加入してるんだよね~」
「い、行きます! 絶対行きます! 行かせてください!」
自慢気な笑みを見せた彼女に、
「もっちろん! 椿さんの歌も聴きたいしね~。折角だし、
「僕は全然スケジュール空いているからいいよ。諒は?」
「あー……。ごめん、俺はちょっと」
彼女の誘いに快諾した
普段と違う態度に、思わず
「あれ? 以前
不思議そうに尋ねる
「あ。うん。えっと、その……ちょっと、まだ椿さんの歌、聴く勇気がなくってさ」
その言葉に、はっとして
確かにその日は椿も歌う。
つまりそれは、諒もまた、彼女の歌を聴かねばならないという事。
理由を聞いた
そんな二人の反応に、彼は大丈夫だと言わんばかりに、ふっと笑みを浮かべた。
「俺もその内一緒に聴けるように頑張るからさ。だから今回は三人で楽しんでよ」
「……うん。何かごめんね」
「気にしないで。悪いけど、
皆を安心させようと笑う諒。
確かにそこにあったのは本音。
しかし。同時に隠された事実には、その時の三人では気づきようもなかった。
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