第7話

 ジャンル別日間14位ありがとうございます。


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「はっくしゅん!」


 俺は謎の悪寒を感じ、くしゃみをして体をブルッと震わせる。


「おかしいなぁ。部屋は暖かいんだけど。まさか誰かが俺の噂してたりして……って俺の噂をするやつなんか誰もいないや」


 自分で言って悲しくなる俺。

 そのまま俺は欠伸をし、目をしばしばさせる。

 時刻はすでに午前3時。白海の事を考えすぎて、寝ることができなかったのだ。

 一度はベッドに入って寝ようとしたがなかなか眠れず。ようやく睡魔が襲ってきたことを感じ、静かに目を閉じる。


 明日からのこと。

 白海に話すべきこと、昔何があったか。

 考えるだけで憂鬱だが必要なことだ。致し方あるまい。


「ま、明日の事は明日の自分が何とかしてくれるだろう」


 そんな楽観的な事を考え、目を瞑る。幸いにして、眠気はすぐにやってきた。

 そして、そのまま俺の意識は深い底に落ちていった。 



☆☆☆



 夢を見ていた。

 これが夢だ、ということを知覚することができた。

 俗に言う明晰夢とやらではないか。そう推測する。

 俺の状態は意識だけが存在している。そして、周り全体を俯瞰して見ることができる不思議な感覚だった。。


 その夢では俺が映っていた。厳密に言うと昔の俺だ。


 夢では昔の俺が60歳くらいの男に殴られていた。


 あれは6歳の俺だ。

 ……嫌な所が夢に出てくるな。


 男は現当主、天笠英隆。

 『天笠』内部ではバトルジャンキーとして有名だが、特にやつは身内には容赦しない。


 なぜ俺が殴られているのかというと、やつの計画『強いやつ生み出して将来自分を倒してもらおう』というくそふざけた計画に巻き込まれたからである。

 俺はやつ直伝のしごきを毎日くらっていた。


 『フハハハ! どうした渚ァ! 反撃する気概くらい見せんかァ!』


 『くっ!』


 昔の俺は防御で精一杯だった。……いや、6歳の子供が、衰えているとはいえ60過ぎの大人の殴打を防御出来ているだけで凄まじいことだ。

 だが、衰えているといっても成人男性五人分くらいの力がある。


 しかし、やつ以外とは本気の殴り合いなどしたことはない。

 そのため自分は弱いと思っていた。逆に本気の殴り合いをしたことある6歳児などほぼほぼいないだろう。

 それも幼児同士の優しい喧嘩ではない。


 俺たちは明確な意思の元で相手を攻撃している。


 そもそも親は止めないのか、と疑問があるかもしれないが、やつは一応考えているのか、両親が出張などで長期間いないときを狙って修行(仮)をしている。


 しかも毎回、


『このことをお母さんに言ったら……殺す』


 6歳に言うセリフではない。俺は震え上がり頷くしかない。


 そんなやり取りが約8年間。俺がやつに勝てるときまで続いた。



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「はっ!」


 俺はガバッと布団をめくり周りを見渡す。

そこはいつも見慣れた自室。辺りは静けさに包まれていて、時計の刻む音がやけに響いた。


 そのままゆっくりと時計を見ると、まだ朝の五時を回ったとこだった。


「ハァ……嫌な夢見るなぁ……まあ、あいつに勝てるようになってからはこの夢見たらボコりに行ってるからいいんだけど」


 俺は度重なるしごきによって、やつのバトルジャンキー具合が移っている節があるが、気にしないことにする。


「まだ五時だけど二度寝したら遅刻するか……今日は早く行ってみるか」


 そう思い、布団から出てグッと体を伸ばす。


「ううーんっ!」


 多少は目を覚まし、顔を洗いに一階へ下りる。


 誰もいない家も慣れたもんだ。

 でも……おはようを言ってくれる人がいないと、少し寂しい。


 あいさつは人を気持ちよくさせる、とあるがそれは本当のことだ。日常と化している挨拶だが、朝起きてすぐ言ってくれる人がいない辛さを分かる人は少ないだろう。


 当たり前のことは当たり前ではないのだ。

 常に日常に感謝することが必要と、最近では思っている。




 身支度を整え、スマホで朝の天気予報を確認する。今日は晴れのマークが一日中付いている。

 でも一応折り畳み傘を持っておく。念には念を、だ。念入りに準備をして悪いことなど一つもありやしない。


 少しテレビを見て時間を潰し、現在時刻は6時45分。

 いつも出る時間より一時間も早いが、気にせず家を出る。学校が開く時間は7時から。


 かかる時間は20分前後なのでちょうどいいだろう。


 俺は早朝の少し寒い気温に身震いしつつ、射し込む光を眩しそうに見る。


「早起きは三文の徳ってあるけど本当のことだな」


 早起きし、他人より先に行動していると少し、優越感を感じる。

 噛み砕いて言えば、お得感……だろうか。

 他人の一歩先に行っている行為に少し嬉しく思う。こんな考えをしているのは自分だけなのだろうか。


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