第309話 アディライトへの暴言

神秘的な左右の違う瞳の色に、美人で家庭的で有能な戦えるメイド様。

だからね?



「アディライトにも相手を選ぶ権利がありますのよ?トムさんも、そう思いますよね?」



お前は選ばれていないだろ?

アディライトの事は諦めろと、トムに遠回しに告げる。



「ですから、何も心配する事はありませんわ。お2人はお似合いのご夫婦になりますもの。」



そうでしょう?

呆ける、おバカなお2人さん?



「えぇ、お2人はとてもお似合いです。羨ましいくらいに。」

「末永い、お2人の幸せをお祈りいたしますよ。もちろん、妻と一緒に。」



私の腰の腕を回し引き寄せるコクヨウと、妻を強調して自分のものなんだと主張しながら手の甲に口付けてくるディオンの2人。

間違いなく、2人もトムとサフィアの事を煽っている。

ナイスなフォローです。



「そうね、お互い、満足の相手なのでしょうから。アディライトは、もっと素敵なお相手が相応しいもの。」



自分達の容姿を自覚しろ。

せせら笑い、私は事実を2人に突き付ける。



「っっ、さっきから人が黙って聞いていれば何なのよ、あんた!?」



釣り上がる、サフィアの目。

怒りにか、その身体をわなわなと震わせている。



「あら、何がでしょう?」

「この私を、こんなにもコケにして!絶対にあんたの事を許さない!」

「許さない?」



こてん、と、首を横に倒す。



「私を許さないと言うのなら、一体どうしますか?今この場で、私に何かします?」

「いいえ!さっきのアディライトの暴挙を憲兵に告げるわ!」



勝ち誇る、サフィアの顔。



「憲兵に?」

「ふふ、そうよ!奴隷の罪は主人であるあんたが償うべきよね?」

「あら、」



私は口元を手で隠し、驚きに目を見張った。



「その事は、私からの謝罪でサフィアさん達には先ほど許していただけたはずでは?」

「何を言っているの?そんな証拠がどこにあるのよ?」

「・・証拠、ね。」



こちらをバカにしたように笑うサフィアに、飽きた。

もう少し楽しませて欲しかったのに。

コクヨウ達の我慢の限界も近いので、そろそろこの茶番劇も終わりとしますか。



「サフィアさん、証拠ならありますよ?」

「は・・?」



呆けるサフィアに口元が緩む。



「私が何も準備せず、この茶番を演じていたとでも?保険は用意してあるに決まってるじゃないですか。」

「・・何を、言って、」

「ふふ、この髪飾り、私の特製ですの。」



何か言いかけるサフィアの言葉を遮り、私は自分の髪から、髪飾りを抜く。



「この髪飾り、ある魔道具なんですよ?」

「それが何?」

「ふふ、こんな事が出来ますの。」



怪訝そうそうなサフィアへ髪飾りの機能を発動させる為、私は自分の魔力を流した。



『サフィアさんも、アディライトの事を許して下さるかしら?』

『え?えぇ、良い、わ。』



魔道具である髪飾りに自分の魔力を少しだけ流せば、先ほどのやり取りの声が流れ出す。



「ほら、とても便利な魔道具でしょう?」

「ーーーっっ、」



笑う私に、サフィアが言葉を失った。




記憶の髪飾り

レア度:秘宝アーティファクト

機能:破壊不可、所有者が制限



製作者:ディアレンシア・ソウル



記憶の髪飾り

・持ち主が身に付けている間、その記憶を記録する。魔力を流し事で、その記憶の声を再生させることが可能。



私の秘密兵器。

今回は、とても役に立ちました。



「ふふ、ほら、ちゃんと謝罪して、お2人から了承を得ている事が、これで証明できますよね?」

「くっ、」

「これで、貴方が先ほどの事を訴える事は不可能です。だって、私からの謝罪を受け入れていますものね?」

「っっ、それ、私に寄越しなさい!」



私の手の中にある髪飾りをサフィアが取り上げようと、必死の形相で腕を伸ばす。

あらあら、懲りない子ね。



「ーーーお前、死にたいのですか?」

「知りませんでした、嫁入り前の貴方が自殺願望を持っていたとは。」



迫るサフィアを、コクヨウとディオンの2人が阻む。

その瞳は冷たい。



「ディア様、今すぐサフィア討伐の許可を。」

「「細切れにするの!!」」



守るかのように私の前に立ち塞がり、殺気立つアディライト、フィリア、フィリオの3人。

サフィアに手をかける事を示唆される。



「相手は幼い子と同じようなものなのよ?貴方達3人が相手なんて言ったら、サフィアが可哀想よ。」



やんわりと嗜める私。

相手が幼子と思えば、怒りも湧かないし、ね?

私に対してなら、何を喚こうが構わなかった。

だって、私のモノを害する以外の事では怒らないもの。

他人に無関心だと言っても良い。



「ーーーっっ、アディライト、やっぱりあんたは不幸を呼ぶんだわ!この、疫病神の『厄災の魔女』!!」



憎々しげにアディライトの事をサフィアが睨む。



「お前みたいな周りに厄災を振りまくだけの女なんて、生まれて来なければ良かったのよ!」



が、それも限度がある。

私だって、笑って許せない事もあるんだよ?



「口を慎め、下郎。」



サフィアに対して、私は殺気を向けた。

向かう私の殺気。

私の可愛いアディライトに対して言ってはいけない事を、彼女は口にした。

許せる訳ないよね?



「ふふ、面白い事を言ってくれる。」



口元に笑みを浮かべる。

私の可愛いアディライトに対して、この世に生まれて来なければ良かったですって?

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