第280話 設計と幸福
私は下手に何かを隠す人より、友好を示して適度な距離を取ってくれる方が好きだ。
その方が信頼ができる。
まぁ、完全には信用しないのだが。
「陛下は、ソウル嬢とこれからも末長いお付き合いをお考えの様です。ですので、貴方へこの土地を褒賞とされました。」
「賄賂と、言う訳ですか?」
「いいえ、これは、国からのソウル嬢への褒賞です。」
「・・そう、ですか。」
あくまで、この土地を渡す理由は褒賞としたいのね。
「ーーー分かりました。ありがたく、この土地は褒賞として頂きます。」
これは、賄賂ではないのだ。
良い土地を貰って、喜ばない人はいない。
私だって、嬉しいもの。
「ふふ、そうですね、これは陛下からの純粋なるソウル嬢への褒賞ですので遠慮なく。」
「えぇ、褒賞ですから、遠慮なく頂きますわ。」
宰相様と2人、微笑み合った。
「では、この土地の名義はすでに変更されているので、この土地はソウル嬢のものです。」
「ありがとうございます、宰相様。」
笑顔で、宰相様から土地の権利書を受け取る。
無事、土地をゲットです。
褒賞として土地を得た私は、その足で1つの工房へと足を向ける。
ーーそう、屋敷を建ててくれる工房へ。
「ふむ、お客さん、屋敷の図案は、こんな感じでどうだ?」
紙を机の上に広げ、屋敷の構想を書き込みながら聞くのは、職人堅気のドワーフの親方。
名前は、ポロンさん。
私は職人のドワーフ達と共に、この土地に建てる屋敷の構想を練り始めた。
「素敵です、ポロンさん!私の想像通りの設計です!!」
ポロンさんに見せられた図案に興奮する。
まさに私の理想の屋敷。
大絶賛である。
「うむ、では、この図案通りに屋敷の建築を進めるぞ?」
「はい、よろしくお願いします。」
満面の笑みで頷く。
作る予定の屋敷は、3階建。
もちろん、風呂とトイレは別で、広々とした浴槽完備である。
土地も広い為、部屋数も多くなる予定だ。
「では、完成次第、知らせよう。」
そう告げて、いそいそと図案と前金を手にポロンさんは帰って行く。
残りの支払いは、屋敷が完成してから渡す事になっている。
「あぁ、屋敷の出来上がりが楽しみ。」
新しい家族も増えたし。
ご機嫌である。
「嬉しそうですね、ディア様。」
ルーベルンの屋敷で、ニコニコ顔でアディライトが淹れてくれた紅茶を飲む私に、微笑むコクヨウ。
「うん、モルベルト国の新しい屋敷が出来上がるのが本当に楽しみなんだもの。」
これが、喜ばずにいれようか。
「ふふ、ちゃんと書斎も広めに作るんだ!」
私は読書が大好きだ。
この屋敷の書斎の棚も、書籍でほとんど埋まっているほど。
「皆、ディア様の為に書籍を集めておりますから。」
微笑むアディライト。
そうなの。
皆、私の為に書籍を集めてくれるんだようね。
そんな皆の気持ちが嬉しくて、書籍を手渡してくれる子に毎回抱き付いちゃうんだ。
「毎回、ディア様からのご褒美がありますから。」
苦笑いのディオン。
ご褒美?
首を傾げる。
「ディオン、ご褒美って?」
「ハグの事です、ディア様。」
「ん?なんで、ハグがご褒美なの?」
もっと他にあるでしょ。
欲しいものとか。
「・・無自覚、なのですね。」
「えぇ、無自覚です。」
「無自覚過ぎますわ。」
コクヨウ、ディオン、アディライトの順で呟き、哀れむ様な眼差しを向けられる。
解せぬ。
なんだって言うの?
「ディア様の良いところ!」
「ディア様の好きなところ!」
私に抱き付いてくるフィリア、フィリオの2人。
か、可愛い。
「~~~大好き、2人とも。」
至福です。
私の子達が、最高に可愛いくて辛い。
頬擦りをする。
「本当、私って幸せ者ね。」
しみじみ思う。
この世界に来て、私はたくさんの幸せを感じている。
あちらの世界で味わえなかった、幸せを。
あの頃の自分に、教えてあげたい。
ーー私は、幸せになるって。
「ふふ、私達も、ディア様と過ごせて幸せですわ。」
微笑むアディライト。
「あの頃は、生きている事が苦痛でしたからね。」
そんなアディライトの言葉に、ディオンが同意と言う風に頷く。
「ディア様が、僕達に光を与えてくださったんです。」
私の手を握るコクヨウ。
「ディア様が私の全てなの!」
「ディア様が僕の世界なの!」
私の腕の中で、フィリアとフィリオが擦り寄る。
「ふふ、私達、両思いね。」
頬が緩む。
愛おしい、私の家族。
「ーー・・感謝、しなくちゃ、ね?」
あの、天使に。
今の幸せを、当たり前だと思いたくない。
愛おしい存在と出会えた奇跡。
「ありがとう。」
ーーこの世に、生まれてきてくれて。
人は、誰の奴隷でもない。
幸せになる権利が、生まれてきた全員にあるの。
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