第170話 正しい礼儀作法

今日のパーティーは、私のsランク冒険者となった事のお披露目なのですけどね?

その私に帰れ?

なんの権利があって言うのでしょうか?



「「えっ!?」」



2人が驚きの声を上げる。



「私は国王陛下から帰る様に言われていないのですが、貴方方が伝言を預かったのでしょうか?帰る様に、と。」

「本日の主役?っっ、あっ、まさか、貴方が新しくSランク冒険者になった・・?」



公爵令嬢、ミミリアの口元が戦慄く。

気が付いた?

貴方達の目の前にいる私が誰か。



「ふふ、お初にお目にかかります、私ディアレンシア・ソウルと申しますわ。本日は、私のSランク冒険者となったお披露目パーティーを王様が開いてくださいましたの。」



でも、今更気付いても遅いよ?

自分達が敵に回した目の前の私が誰か知ったとしても許してあげない。

貴方達は、私の逆鱗に触れたのだから。



「ですが、今日のお披露目に私は不要なのですね?」



主役のいないお披露目?

開く意味ある?



「下賤な冒険者で申し訳ありません、ミフタリア様?ミミリア様?」



その下賤な冒険者を呼んだのは王様。

文句は王様に言ってね?



「1つ疑問なのですが、正式に伝言を預かっていないのに関わらず私に帰れと言うのであれば、貴方は、この国の国王陛下よりもお偉い立場の方なのでしょうか?」

「「っっ、」」

「下賎の生まれの私にも分かるように、どうか教えてくださいます?」



聞いてみたい。

この国の王よりも偉い人っているの?

赤髪の少女へ視線を向ける。



「ーー・・ねぇ、ルーベルン国第一王女、ミフタリア様?」



ちゃんと答えてくださいます?

ニンマリと笑った。



「可笑しいですね、私が教えられた常識では王の決定に意を唱える事は誰であれ不敬罪になるのではありませんでしたか?」



国の頂点は王。

女性の頂点は王妃となる。



「あぁ、この国の常識は違うのですね!?だって、第一王女様や公爵令嬢様は国王陛下をご自分の格下だと思ってらっしゃるようなのですから。」

「・・・。」

「そうでございましょう?ミフタリア第一王女様?」



黙り込むミフタリア王女様。

その顔色は悪い。



「あらあら、うふふ、ね、公爵令嬢様もそう思いませんか?ミフタリア様が何故か答えてくださらないので、下賤な私にミミリア様なら教えてくださいますよね?」

「っっ、」



ミミリア嬢も黙り込む。

まぁ、何も答えられないよね?



「まさか、下賎な私の問いに高貴な血筋のお2人は答えて下されないのですか?では、国王陛下に直接お聞きした方がよろしいかもしれませんね。」



にこにこ微笑む。

目の前の第一王女様が可哀想?

先に私に喧嘩をふっかけて来たのは、目の前の第一王女様達の方ですよ?



「私は国王陛下に何とお聞きすれば良いでしょうか?」



おっとりと首を傾げる。



「あぁ、お2人のお言葉は王命と同じですか、とかですかね?ふふ、不敬罪にならない様に確認しなくてはいけませんものね?」

「あっ、ちが、」

「っっ、許してッ!」



揃って顔面が蒼白になるミフタリア王女様とミミリア嬢の2人。

これで手を緩める?

はい、そんな事は絶対にあり得ない。



「この場には他国の高貴な方達も沢山いらっしゃるのですよ?お2人の言動は、それを踏まえた事なのでしょうか?」



意味:貴方達の言動は全て国の恥になります。

その事を2人は理解してるのかねぇ?



「「っっ、」」



2人の目からはらはらと涙が散る。

あらら、泣いちゃった。



「貴方方の様な高貴な方々が、そんな簡単に涙など見せてはなりませんよ?もう少し貴族としての品格と自覚をお持ちくださいませ。」



王族の血筋たる者達が安易に他国の人間がいる目の前で自国の弱みを見せてどうする。

この2人、貴族として大丈夫か?

私が呆れた時だった。



「ーーーーお前達、一体、そこで何をしておる!?」



王が登場したのは。

しんと静まり返る中、この国の王が険しい表情で私達の元へと歩み寄る。



「2人とも私の質問に答えよ。王たる私のお客の前で、お前達は何をしておったのだ!!?」

「「っっ、」」



身体を震わせ俯く2人。

そんな2人の横で、私は王様に完璧な所作で頭を下げた。

おいおい、お2人さん?

王の御前ですよ?



「ーーーソウル嬢、頭を上げてくれ。」

「はい、国王陛下。」



王様の声に私は下げていた頭を上げる。

礼儀は大事。

一般市民の私でも知っているぞ?

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