第55話 再会の従者(1)
王都へたどり着いた僕はすぐ、王のいる城へ向かった。とにかく先生の事を伝えなくてはならないと、そればかり考えて走った。整備された石畳の上を、道はわからないけど遠くに見える城を目指して走った。走って、転んで、いろんなところに擦り傷を作りながら城を目指して。大きな門の前にたどり着いた。
「な、なんだ……?なにかあったのか」
門番をしていた兵士がこちらを見て驚く。その片手を掴んで、上がりきった息を整えることもせず叫ぶ。
「王様に、会わせてくだ、さいッ……!命を、狙われてるんですッ!」
「何を……」
「王様が魔術を習った人が、王様を殺そうとしてるんです!お願いします!話をさせて!」
両手でしがみついて精一杯叫んだ。この事実が伝われば王様だって無警戒ではいないはずだ。そうすれば先生も無理はできなくなるーー
「何してる貴様!」
バシッ、と手を払われる。バランスを崩して地面に転がった。
「子どもだと思って聞いていれば、ふざけたことをいうな!王が魔術を習ったなどと……それに命を狙われていたとしても王都騎士団がさせぬわ!」
痛む体を起き上がらせながら、咳き込む。
(やっぱり、聞いてもらえない、のか……)
兵士に追い払われて門から離れる。下り坂を足を縺れさせながら歩く。白塗の建物の続く城下町に出て、足が止まった。
いくら熱くなっていたとはいえ、考えはしていた。僕のような子どもがいきなり話をしたところで聞いてはもらえないと。それでも他に手段はなかったしとにかく必死だった。血が上った頭も冷えて、痛みで座り込んだ。道行く人たちの視線を感じながら、それでいて声をかけてくる人はいない。しばらくするとその視線も感じなくなってくる。
(あぁ、王都は人が多いから。こんな騒ぎは、多分いつものことなんだ……)
人通りの増える通りの一角に座り込んで、動けなくなる。さっきまで体を突き動かしていた熱は消えて、熱を失っていく体に引きずられるように心も冷めていく。
「おい、なにしてんだお前」
目を閉じそうになったその時、声をかけられた。俯いた視線を持ち上げた先、僕を覗き込んでいたのは全身鎧を身に着けた騎士だった。顔も兜に覆われて見えない。どこかで、聞いた声だ。
「って、これじゃわからんか」
答えに迷っていると、騎士は兜を外して顔を見せる。
「っと、これでわかるか?こんなとこでどうした?ラング」
そう言って再び僕を覗き込んだのは、別れた時と変わらず笑顔を浮かべるヒルグラム=ウェンティコの姿があった。
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