サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました28

 この俺が子供だと!? 冗談じゃない! 俺はいつまでたってもキッズの精神を持っていたいんだ! 親などになってたまるか! 少子高齢化だかなんだか知らないが俺の知った事じゃないんだよ! どうか俺以外の国民が頑張って人口増やしてください! 協力はします! 税金払います! だけど結婚育児なんて絶対にやらん! やってられるか! 子供中心の生活など考えられんわ! あれだろ!? 土日アニメ観ようものなら「休みの日くらい子供のために時間使ったらどうなんだえぇ!?」つって嫁から詰められんだろぉ!? おいおい勘弁してくれよ! 多分俺歳とってもずっと薄給ハードワークなんだよぉ!? 休みの日くらいくつろぎたいって! 親子そろって動物園だの遊園地だの海だの山だのプールだのスキーだのガンダムベースだのマジ無理だって! あ、嘘。親子でダムベーはちょっと憧れるわ。新作ガンダムと俺の世代のガンダムを比較して一緒に語りたいわ。そんでもって、「いいかい息子よ。感情のまま言いたい事をあえて説明臭くする事で富野っぽいセリフができあがるんだ。たとえばこの新型ガンダムについてなんだが、実に近代的でヒロイックな見た目をしている。けれど、お父さん達の世代からすると何か物足りない。そんなときはこう言うんだ。“俺の前に新型など!”ってね! どうだい? それっぽくなったろう。なに? 分からない? ならばファーストから履修だ! 帰ったら観るぞ!」なんて会話を楽しんでみたい気持ちもない事もないわ。でも子育てってそんなワンシーンだけ切り取ってやってみたいと思える程簡単なもんじゃなさそうなんだよな。夜泣きから始まりイヤイヤ期に思春期、反抗期。学校でイジメもあるだろう、上手くいかない事もあるだろう。そんな子供のために右往左往東奔西走。あの手この手で育て巣立たせなきゃいけないんだろう? 無理無理。無理っす俺には絶対に無理。自分の面倒見るのに手いっぱいだっての。子供の面倒までできるかって。なぁ? ちょっと考えれば分かるだろう。それと相手がいねーよ相手が。前提として。どうにもなんねって。本人の希望通りピチウに普通にご家庭持っていただいた方が断然いいわ。でも今のご時世結婚だけが人生じゃないって意見も当然あるだろうから、ここは女性の意見としてクリスタルの意見も聞いてみる事にしよう。




「クリスタルはどう思う? ピチウの将来について」


「う~ん、どう思うも何もないというか~月並みの意見で申し訳ないんだけど~、ピカ次さん、妹の将来を勝手に決めない方がいいと思うよ~?」




 本当に月並みの意見だな。正論ではあるが。




「何故だ。好きな事をできる環境を作ってやるといっているのだ。それの何がいけない」


「それこそ押し付けだし~。恋愛禁止結婚禁止って言ってる時点で好きな事できてないし~。人の人生を決める権利なんて誰にもないわけだし~?」


「それはそうだが、しかし、だからといって全てを容認するというのも話が違ってくるだろう。排除できる危険であれば排除すべきだ」


「普通に生きてたらそこまで危険な事は起きないと思うよ~? ピチウちゃんだってしっかりしてるし~。それとも、そんなに自分の妹を信用できない感じ~?」


「それは……」




 お、ピカ次君が言い淀んでいる。存外弱気なところがあるなこいつ、さては押しに弱いな? う~ん、チョロい。機会があったら利用させてもらおう。




「ピカ次お兄ちゃん。心配してくれるのは嬉しいんだけど、私は大丈夫だよ。ピカ次お兄ちゃんが思ってるより大人だし、何かあれば相談するから」


「しかしだな……」


「はぁ~~~~~~~~~~~~! ピカ次さぁ~~~~~~~~~~~ん! 本人がこう言ってるんですからもういいじゃないですかこの話は~~~~~~~~~~~~~~! いつまでもいつまでもウダウダウダウダ! ダサい! キモイ! しょうもない! 娘離れできないクソ親父かって! 流行んないですよそんなの今時! 大切だ大切だって言っておきながら結局一番大切なのは自分ってパターン! 相手を心配してるんじゃなくて自分が傷つきたくないからそんだけ束縛するんですよ! 学んでください乙女心を! そんなんじゃいつまでたってもワイルドボルトちゃんもといピチウちゃんの気持ちを分かってあげられませんよ~~~~~~~~~~~~~~?」


「うるさい」


「つっめた! 酒! お酒を引っ掛けましたねピカ次さん! 下手な暴力より質悪いわぁ~~~~~~~どう思ういますかピカ太さぁん!」


「そうだね」


「そうだね!? なんですかそれ! 適当過ぎませんか! なんでもう! 男共はどいつもこいつも」




 ……口が裂けても言えないんだわ。お前の意見に賛同してしまったなど。





「まぁまぁ~ムー子ちゃんはウザいけど言ってる事は正論だったし~。一旦この事はピカ次さんの胸に留めて、改めて乾杯しましょうよ~。せっかく皆出勤したわけだし~」


「それはいい考えだな。ピチウ。一杯だけなら酒もいいぞ」


「駄目に決まってるだろ殺すぞ」




 チッ。頭の固い奴め。




「乾杯はいいんですけどクリスタルさん。結局、この状況ってなんなんですか? 私、まだ説明していただいてないんですけど」


「あ~そうだった~。ごめんごめ~ん」

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