サキュバス、家族旅行時の父親のテンションにマジついていけない感じでした10

 いぇーーーーーーーい! ゴクゴクゴクゴクゴクーーーーーーーーーーーーーーー! エビフライハンバーグウィンナーヒョイパクヒョイパクーーーーーーーーーーーーーーー! おいしーーーーーーーーーーーーーーーー! あ、ビール足んねーや。



 ピンポーン。



「はい、お伺いいたしま~す」


「ハイネケン二本ください」


「かしこまりました~……追加ハイネケンいただきました~!」



 アリガトーゴザイマース!



 いやぁ贅沢なブランチだな! ビール飲みながらアラカルトをいただくなんて正月みたいだ! たまにはこんな日がってもいいよね! だってお仕事頑張ってるんだし! いえぇー! 昼飲み最ー!



「ハイネケンお待たせいたしました~」


「ありがとうございます」



 来た来た来た来ましたよーーーーーー! 飲みかけの一本目をゴクリと空けてはい! 二本目―! うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉゴクゴクゴクゴクゴクーーーーーーーーーーーーーーーー!




 カシャ!



「うん? なんだ? マリ、なんで今写真撮ったの?」


「ちょっとね。それより、早く食べないと冷めちゃうよ?」


「え? あぁ……そうだな。揚げ物は冷めるとまずいからな。早めに食べないと……」



 ペペロペペロペペロペロペン♪

 ペペロペペロペペロペロペン♪



 おっと着信。会社だったら即切りだぞっと? おやゴス美じゃないか。様子でも聞きに電話してきたのか? 心配性だなぁ……しゃあない出てやるか。スマフォタップと……



「もしもし」


「もしもしピカ太さん? どうですか? 旅行は?」


「あぁ。何も問題ないよ。今三人で昼食を取っている」


「お酒を飲みながら?」


「……いや? 圧倒的シラフだが?」


「ハイネケン三本」


「……」


「マリから送られてきた写真には、確かにハイネケンの瓶が三本も写っていますね」


「……」



 なるほどね。そういう事か。マリの奴、それで写真を。



「すまん。飲んでるわ。でもほら、たまの休日だし」


「ピカ太さん」


「はい」


「わざわざ飲んでいないと嘘を吐いたという事は、なにからしやましいと感じているからですよね?」


「……」


「いいですかピカ太さん。私は別にお昼からお酒をかっ喰らう事を咎めるつもりはありません。働いている以上、いつ何時過剰なストレスが湧いて出てくるか分かったものじゃありませんからね。しかし、しかしですよ? 引率という立場でありながら子供の前で自棄のように飲み食いするというのは褒められたものではありません。非難しなければならない蛮行です。その辺りを鑑みて、どうぞ慎んでいただきたいのですが、私の言っている事、ご理解いただけますか?」


「はい。まったくの正論に返す言葉もございません。申し訳ございません」


「結構です。まぁ今頼んでしまったものは仕方ないとは思いますが、今後はご注意いただくようお願いいたします」


「はい」


「あ、それと、隠れて制作してらっしゃったスーパーフミナなんですけれども、机の上に置いておきました」


「……」


「水星の魔女の主人公Figure-riseと併せてひっそりディスプレイする予定ですか? 個人的にはプラモデルなので別にベッドの下に隠す必要などまったくないと感じますが、ピカ太さん的にはアダルト雑誌と同列に扱うようなものだったのでしょう。返って不健全な気さえしますが、それについて私自身は別段なにも思うところはないのであしからず」


「……」


「それでは、また」



 ティロロン……



「……」



 他人の部屋を勝手に掃除するの止めよ?

 いや、分かるよ。完全な嫌がらせ目的だって。あいつ本当に最近俺に対しての態度おかしいもんな。なりふり構わず人生ぶっ壊しにきたりとか暴力に訴えてこないだけまだ良心的ではあるけども、でも俺がひた隠しにしていたスーパーフミナをさぁ……結構凝って作ってたんだぜ? 一部シリコン素材とか繊維ゴム素材を張っ付けたり関節部や合わせ目を極めて自然な人体に見えるよう工夫したり……やっていて思ったよ。俺変態かもしれんって。でもこの手の作業って何かこう、黒い衝動みたいな、暗澹たる情念の炎みたいなものが湧き上がってきて、いつもとは違う異様な執着によって没頭しちまったんだ。故にベッドの下に隠し忌子のように扱ってきたというのに、それを白日の下に出すとは……ドレスのデッサンを全校生徒に晒されてゲロ吐いたJAM君の気持ちが分かる……おのれ梅岡ぁ!

 と、当時はローゼンスレでは凄い勢いで叩かれていたけどいい先生ではあるよな。今の時代だったらまた違った評価になるかもしれん。



「お兄ちゃん」


「あ? あぁあぁマリか。すまんな。酒に呑まれてしまっていたようだ」


「うん。気を付けてね? あまりみっともないと、私達まで変な目で見られちゃうからね」


「マリさんの仰る通りですピカ太様。陽の高い時間から酔っぱらってしまう大人は軽蔑の対象となりかねませんので」


「そうだな。俺もちょっとはしゃぎ過ぎたようだ。昼は一旦この三本でとめておくよ」


「夜ご飯の時も飲み過ぎないようにね?」


「何杯お飲みになったか、compterいたしますので」


「……はい」



 辛れーぜ保護者。

 これが子育ての苦しみか……

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