サキュバス、親父にもぶたれた事ありませんでした14
「雁首揃えてお出迎えとは結構じゃねぇか。茶菓子くらいはあるんだろうな」
「その態度、完全に元のお前に戻ったようだな。やはり俺の子だ。あの女が作った人格とは物が違う」
「手前勝手な満足に浸っているところ悪いが、結局あんたの用事はなんだ。こんなところまで呼び出されていい迷惑なんだが」
「言っただろう? お前に世界をやると。この聖書を使えば世界は思うままだ! どうだ!? 想像するだけで胸が躍るだろう!?」
「……」
「さて、もう一人の輝さん、どう反応しますかね」
「さぁ……ただ、あまり興味ないみたいな事言ってたし普通に”いらない”って言うんじゃないか?」
「ほぉ。いつそんなお話を」
「お前がいない時にちょっとな。親父と会ってどうするんだって聞いたんだが、話くらいはしてやるみたいな感じだった」
「腐っても私の子です。そこまで性根は腐っていないでしょう」
「ダスピルクエット。貴女もなんだかんだで人の親ですね」
「お前には負けますよ。聞くところによると、随分と愛娘を溺愛しているそうじゃありませんか」
「いつ寝首をかかれるか分かったものでないは魔界では家族というコミュニティは大切ですから。ところで鳥栖さん。どうしてダスピルクエットがプランの話を知っているのか、ご存知ですか?」
「申し訳ございません皆目見当もつきません」
「そうですか。プライベートですしどうでもいいので、正直に話せば無駄な詮索も調査もしませんが」
「申し訳ございません罰を恐れて虚偽の申請をしておりました。私が宙ライテウ様にお話しいたしました」
「正直でよろしい。減俸一ヵ月で許してあげましょう」
「そんな!」
「お前ら馬鹿な事やってないでちゃんとしろよ。今めっちゃ重要な局面だろ分かってんのか?」
「……」
「……」
「なんだよ」
「それは重々承知しているのですが」
「先ほどまでおふざけ倒していた輝さんには言われたくありませんね」
「悪かったよさっきまでは! でも今は本当にやばいから! 何なら俺が一番これから危ない状況になるから! お願いだからしっかりやってくれ!」
「はいはい承知です承知です。あ、それより、話が再開しそうですよ」
「……」
あぁ! 言いたい事は山ほどあるが時間がねぇ! ムカつく! ムカつくが一旦忘れろ! こんなつまらんことで精神的動揺して作戦失敗なんて事になったら笑い話にもならねぇし死んだらダーウィン賞ものだ! 頼むぞもう一人の俺! 距離感とか考えて上手く立ち回ってくれよ!?
「……世界か。確かにいいかもしれんな」
「そうだろう? すべてがお前の思うままだ」
「!? えぇ!? なんて!? なんて言ったもう一人の俺! 確かにいい!? 馬っ鹿な! だって言ってたじゃん! 与えられても満たされないみたい事! あれなに!? 口だけ!? かっこつけただけだったの!? ちょっともう一人の俺クソダサいじゃねーかふざけんなよ! おいデ・シャン! それとお母さん! 今から俺と人格交代するために頑張るからサポートよろしく! くそぉ信じられねぇ! なんだよ俺! とんだクソ野郎じゃねぇか!」
「いえ、このタイミングはまだよくないです。もう少し我慢してください」
「そんな悠長な事言っていられるか! このままじゃ親父に従属する事になっちまうぞ!」
「落ち着きなさいピカ太さん。少し含みがあるようです。様子を見ましょう」
「本当かぁ~~~~~~~? 本当に大丈夫か~~~~~~~~~~~? まぁそこまで言うなら少し静観するけどヤバそうだったらすぐに交代する努力するからそのつもりでスタンバイしていてくれよ!」
「だが親父。お前に施されて得たというのは気に入らん。俺は、自分の欲しいものは自分の力で手に入れる」
「ほう。では、聖書なしで支配すると。それはそれで面白そうじゃないか。なぁ? ヘル」
「はい。大変大きな野望です。さすがピカちゃん。貴方様のご子息であらせられます」
「……」
「勘違いするな。俺はあんたと協力して世界を取りたいわけじゃない」
「ふぅん? では何が望みだというのだ?」
「あんたを倒して、その世界を滅ぼせる兵器をいただく」
「……え?」
「これは予想外の展開ですね。まさかあの男と一戦交える気概があるとは思いませんでした」
「なに呑気な事言ってんだ! 殺されるぞ! これはもうまずいだろ! さすがに変わるぞ!」
「まぁ待ってください輝さん。二人は既に戦闘態勢。仮にこの場で入れ替わったとして、貴方、あの男の初撃を回避できますか?」
「それは……しかしそんなもん、もう一人の俺だって……」
「まぁ黙って見ていてください」
「見てろってお前そんな無責任な事……」
「!?」
「ほぉ……よく見切った。長く眠っていた割にはいい動きをする」
「筋肉や神経は脳でコントロールできる。成長と回復を促すためのホルモンも同じだ。俺は自分の意識が中に入っている間、ずっと身体を操作して戦えるように準備してきた。こんな事もあろうかとな」
「……」
「しっかりしていますねもう一人の輝さんは。脳内に入った時、妙に伝達神経が活発だったのでもしかしたらと思ってはいましたが案の定でした。これならしばらく見に徹した方が安全でしょう」
「……」
「おや? どうかいたしましたか輝さん」
「……もう一人の俺がスゲー意識高く身体を管理していたのに、暴飲暴食や徹夜作業なんかやっていて申し訳ないないと……」
「ピカ太さん、今度ジムにでも行きますか? 駅前に新しくオープンするそうですよ?」
「……考えておく」
「絶対行かないやつじゃないですか……」
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