サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました45

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……本当、なん? なんなん? なんなんピカ太さん。おま、ちょ、え? なん?」


「文句があるならしっかり言語化して伝えていただきたい。抽象的な表現では互いの認識に齟齬が生じる可能性がある。コミュニケーションを取る際は端的かつ明瞭な内容を心掛け円滑に意思が疎通できるよう努力するべきだ」


「そういうとことがまず円滑なコミュニケーションを疎外していると何故気が付かない~~~~~~~~~~~頭おかしいんですかそちら~~~~~~~~~~~~~?」


「いや、契約書とかで”いい感じで!”とか書かれたら嫌だろ? それと同じだ」


「心や想いを杓子定規な枠組みにはめ込まないでいただきたいですよ! なんですかさっきからもう! 普段そんなんじゃないでしょ! 私はねぇ! 知ってるんです! ピカ太さんはしっかり心配りできる人だってちゃんと! なのにどうしてこういう時だけそんな石田三成みたく分からず屋な姿勢をとるんでしょうか!? まったくもって理解不能! このムー子の目を持ってしても読めないです!」


「現代に伝えられている石田三成のイメージ像は創作が多く正確な為人は分かっていないそうだぞ」


「三成はどうでもいいんですよ今は~~~~~~~~~~~~~ピカ太さんの話をしているんですよ私は~~~~~~~~~~~~~~~」



 お前が振ってきたんだろ。とんでもない理不尽だぞ。でも石田三成って色々な媒体で冷血漢に描かれているけどなんかどれも憎めないよね。ふとした瞬間見せる人間臭い部分とか、表面上は凄く冷たいけど裏を読むとしゃあないなと思えちゃうところとか。どの作品の三成も個性があって大変よろしい。みんな違ってみんな三成だ。



「ところでお前はどの三成が好き?」



「あ、私はBASARAが……って三成はどうでもいいって言っているじゃないですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 話し聞いているんですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 なんだいいじゃないか別に。BASARAの三成はカッコいいぞ。




「あ~~~~~~~~~~~もう! もういいです! こうなったらあれです! 手紙書いてください手紙! 私に対する思いの丈をしっかりと綴って発表してください! そしたら無理にでもときめきますから!」


「ときめきって任意発動できるもんなの?」


「無理やりやるんですよ! 本来はそんな真似まず無理ですからね! 推しが公式で解釈違いの言動を取った際に”あ、この時はこういう感じだったからなぁ……ならしゃあなし。しゃあなしです!”と無理やり納得する時くらいしか本来は発揮できない芸当なんですから本当にもう感謝してくださいよ!」


 いるよなオフィシャルに反目してブチギレする奴。ちょっと前に安室徹が炎上してたけど、俺はそういうのどうかと思うね。だってキャラクターって公式ありきなわけじゃん? だったらそれはもう正史として受け入れるしかないじゃん。納得できないなら二次創作でもなんでもやってパラレルな世界でハッピーになればいいじゃんって話だよ。まぁ拗らせて痛い夢女子時代が悪夢としてフラッシュバックするとかあるかもしれんがそれもオタク活動の醍醐味だよね。古の傷は定期的に痛がっていこ。


 それにしても、手紙か……



「しゃあない。ちょっと待ってろ。書いてくるから」


「頼みますよ! 本当に!」



 部屋の中央に移動。紙とペンを取ってみたが、いかん。手が震える。

 やだなぁ。ムー子に書くのも勿論なんだけど、俺字汚いんだよなぁ。特に最近は署名から何から全部デジタル化しちゃっててキーボードで打つだけの時代じゃん? 余計悪化してるし漢字も覚えてねぇのよ。いやぁふとした時に筆記が必要になったら多分大恥をかくなこれ。今の内にポールペン口座でも受けてみるか。そういって何もしないのが俺です。限りある貴重な時間をそんな事のために使えるか。やってられないってんだよ。

 さ、そんなわけで気が進まないが書くか、手紙。何書けばいいんだ? 素直な気持ち? そんなもん殺意だらけになっちまうよ絶対あいつまた怒るじゃん。かといってまるっきり嘘ってわけにもいかないしなぁ。あからさまな褒め殺しなんてしたら如何にムー子が馬鹿であっても激昂するだろうし難しいぞ。そもそも手紙なんてもらってうれしいのか? 俺はちっとも嬉しくないんだが。昔、バイト先を辞める際従業員一同から寄せ書きを貰ったんだけどまぁいらなかったよ。書いてある内容も無理やりやらされた感満載の美辞麗句だったしなんだったんだろうなあれ。完全に負の文化だよやめとけやめとけ誰も得しねぇよあんなん。

 あぁ今はそんな過去を思い出している場合じゃないんだった。手紙だ手紙。ムー子相手に手紙を書かなきゃいかんのだった。クソ、なんだこの地獄は意味が分からん。でもしゃあない。それしか手がないんだから。なんか今日しゃあないしか言ってないな俺。そんなに俺の人生しゃあない事しかないのかな。なんだか悲しくなってきたな。でもそれもまた人生しゃあない。しゃあないしゃあない。




 ……





 ……はい。書けた。後はこれをムー子の所にもっていくだけ。今度こそ成功してくれよ? 頼むぞ?


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