サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました20

「はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~(Fucking big sigh)まぁ一旦いいでしょう。異種間不順異性交際の件は一旦置いておきましょう。そんな場合でもないですからね今は」



 どのような状況であってもそのような完全拒絶案件なワードを伴う交際など断固拒否の姿勢揺るぎなく進めさせていただくが、そんな場合ではないという点においては完全同意だ。今現在、遊びに費やしている時間などない。



「それじゃあ本題に入るが、阿賀ヘルからのメッセージを読みたいと思う」


「はい。では、まずは私が確認しましょう」


「……頼む」



 ゴス美め、俺が何故に部屋にやって来たか理解しているようだな。この辺りの察しの良さは大変助かる。さすが肩書を持つ奴は違うな。



「はい。では、一読……」


「……」


「……」


「……」


「……」



 ……




「……」


「……」


「……」


「……」



 ……


「……」


「……」


「……」



 ……


「……」


「……」


「……」



 ……







 ……長くない?

 そんな長文きてた? あの女ならやりかねないが、そこまで時間かかるか? 文学小説じゃないんだぞ。もっと早く把握できるだろ。

 ……いや違うな。ゴス美は恐らく読み終わっている。読み終わっていながら黙っているのだ。理由は恐らく……



「向こうから場所と時間の指定が書かれていたか?」


「……お察しの通りです」



 ……そうだろう。そして、もしかしたらピチウとの繋がりを示唆するような、あるいは直接的にそう述べるような一文が差し込まれ散るかもしれない。それを目にしたら俺はどうなるか、予想もつかん。が、読まないわけにもいかない。



「貸してくれ、スマフォ」


「……お読みになりますか?」


「俺が取り乱したら、頼む」


「……善処します」



 ……



 渡されたスマフォが重い。今日までこれ程の重量を感じた事などなかったのだが、どうにもズシリとのしかかる。物質に変化はないのに精神状況の差で感触が違ってくるものなのか。

 ……くそ、何を怯えているのだ情けない。自分がこんなに憶病だったとは思ってもいなかった。普段偉そうな態度をしがちだが、反面窮地に弱い。これは戒めとして胸に留め、次に似たような事が起こった場合への礎としよう。二度とこんな経験したくはないが。




「……よし」


 

 読むぞ。頼むぞ俺よ。どれだけビビり散らかして醜態を晒してもいいから、せめて正気でいてくれよ……!





 スマフォタップ。

 メッセージ表示。










 ピカちゃん。今朝はどうもでした。

 ピカちゃんに殴られた痕がとっても疼きます。痛いだけじゃなく、なんだか心に響いて、とってもドキドキするんです。暴力って素敵ですねピカちゃん。痣になったところからピカちゃんの温もりを感じて、あぁ、私達繋がっているんだなって嬉しくなります。ピカちゃん。ありがとう。私、ピカちゃんの特別な人になれました。




 ……




 やはりこいつは直球の変質者のようだ。問題が解決したら即引っ越しして二度と関わらないようにしよう。




「ピカ太さん。大丈夫ですか? 読めます?」


「あぁ……」




 導入部分から躓いてしまった。先が思いやられるが、立ち止まってもいられん。続きを追う。







 ピカちゃん。私、またピカちゃんに殴られたいな。今度はね? 顔だけじゃなくて、身体中に、中も外もぐちゃぐちゃにされたい。全部ピカちゃんの好きなようにしてほしいの。私、ピカちゃんを感じたい。ピカちゃんを知りたい。ピカちゃんの全部を私が受け止めたい。だってそれが私の役目であり、喜びなんだから。分かるかしらピカちゃん。私、ピカちゃんのためならなんでもしてあげられるし、ピカちゃんが望むもの全てを与えられるの。ピカちゃんは私に何をしてもいいし、何を言ってくれてもいいの。ねぇピカちゃん。そんな関係、素敵じゃない?




 ……





「……ピカ太さん、お茶飲みますか?」


「あぁ……ありがとう」





 落ち着こう。これは精神的動揺を誘うための挑発だ。相手のペースに乗ってはいかん。





……






 でもね? 私とピカちゃんが心から繋がるためには一つ条件があるの。朝にも伝えたけれど、ピカちゃんにはピカちゃんのお父さんと会っていただきたいの。これまでずっと離れ離れで悲しかったと思うけれど、それももうお終い。ようやく、ピカちゃんはお父さんと対面できるんです。今まで随分寂しい思いをしてきましたね。心細くありましたね。でも大丈夫です。お父さんが、ピカちゃんのお父さんがお会いになって、一緒にいようって言ってくれているんですから! ご実家にいる母親面している女とはもう縁を切ってしまってもいいんです。あの女、酷いでしょう? 醜いでしょう? 自分が本当にピカちゃんを愛しているとでも言いたげな顔しているでしょう? 許せない。許せないよね。

 知ってる? ピカちゃん? ピカちゃんの妹さんも、あの女の事嫌っているんだよ? 実はね? 私達はもうずっと仲良しでね? 今日ピカちゃんのお家にお邪魔したのも、妹さんの協力があったからなんだよ? 妹さんも、お父さんに協力してくれているの。だから、ね? 一緒にいましょう? 四人でずっと、幸せに暮らしましょう? 今日ね、お父さん、会いたいって。妹さんも一緒にいるから。私もね、そこにいるから、ね? 一人で来て。場所はね? 下にリンクを貼ったからね? 来てね? 今日の十九時ね? 来てね? でないと、ね? 寂しいから。私、待ってるから。ね? 絶対にきてね? 大好きですよ。ピカちゃん。それじゃあ。







 ……

 

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