サキュバス、アルパチーノとロバートデニーロの不仲説を聞いて思わずオレンジを口に含みました14

 まぁあの馬鹿はどうでもいい。それよりも俺は俺の為すべきことを考えよう。

 一つは実家へ電話し事の次第を説明。もろもろ説明してもらって、できるのであれば解決のため一枚かんでいただく確約をもらう。もう一つはデ・シャンに連絡を取りマリとプランの一時避難を承諾してもらう事だ。

 確度としてはどちらもイージー。前者に関しては私怨があるし、後者に関しては実の娘の危機なわけだから、聞かないわけもない。ただ、懸念としてはお母さんもデ・シャンもろくでもないという点であるが、そこは奴らの中にある良心に賭けよう(お母さんはともかく、悪魔であるデ・シャンにそんなものがあるかどうかはしらんが)。とりあえず部屋に戻って、どう切り出すかかんがえるか……そうだよなぁ……お母さんはともかくとして、デ・シャンにはなんて伝えよう。「不審者がつきまとってるからマリとプランを預かってくれ」とでも言うか? 警察呼べと言われそうだな……でも住所不定のゴス美とムー子抱えてるわけだからその辺の事情は察してくれるか……後、スプーキー@ホームと繋がりがあれば阿賀ヘルの情報も入手できるかもしれんしそっちも聞いてみよう。とすると、先にデ・シャンの方を終わらせた方がよさそうだな。それにあいつだったら時間も気にせず失礼働いても問題ない。よし、早速電話しよう。




 スマフォタップ。

 連絡先表示。

 タップタップ。



 トゥトゥトゥ。

 トゥトゥトゥ。


 トゥルルルルルル。

 トゥルルルルルル。

 トゥルルル……

 



「はい。こちらトモシヒ邸ですが」


「もしもし? アンテさん? お久ぶり。輝です」


「輝さん。このような朝早くからいかがなさいましたか?」


「ちょっとデ・シャンと変わってくれない? 火急の用事で……」


「生憎ですが主人は朝の準備中でございまして……」


「マリの身の安全に関わる事だと伝えてくれ」


「……承知いたしました」






 ……


 ……


 ……






「もしもし? 輝さん? おはようございます」


「挨拶は省かせてもらう。アンテさんから話しは聞いたか?」


「えぇ。マリの命が狙われているんですって?」



 大分誇張して伝えたようだな。



「まぁそこまで大袈裟じゃないんだが、ちょっと危険な状態になった」


「ははぁ……具体的にはどのような?」


「不審者が我が家に侵入したんだが、その犯人によって継続的な被害を被る可能性がある」


「……公僕に任せましょうよぉそういうのは。せっかく高い税金払ってるんですから」


「それができればいいんだがな。ただこっちはゴス美とムー子がいる。ついでに取っ捕まって、住所不定自称Vチューバーと会社経営者が不法入国の疑いで任意同行なんて記事を飾るのはそっちにとっても望むところではないだろう?」


「いや、まぁ、どうとでもなるといいますか……鳥栖君だったら上手くやるだろうし、島君は別に……」


「……」



 あ、いかん。まったくもって反論できない感じの返答をいただいてしまった。どう切り替えそう。あ、そうだ。



「……相手が普通の不審者だったらそれもいいんだが、生憎と裏家業の人間なんだよ。現に今日侵入された際は怪し気な術を掛けられて俺以外全員睡眠状態にさせられていた」


「え? 術? それって、プランもかかっていたんですか?」


「あぁ。まだ起きてこないところを見るとそうだろう」


「……それは困りましたね」


「そうだろう? 困るだろう? だから手を貸してほしい」


「そうですねぇ……具体的には何をすれば?」


「プランをそっちの宅に戻すのと、ついでにマリの面倒も見てほしい」


「なるほそ。避難所という事ですか」


「そういう事だ。プランが友達つれて一時帰省したと思えば問題ないだろう」


「……分かりました。二人につきましては、しばらくこちらで面倒をみます」


「あぁよろしく」


「では、話は以上でよろしいですか?」


「いや、後一点、聞きたい事がある」


「なんでしょうか……私もこう見えて忙しいのですが……マリちゃんが来るのであれば部屋の準備もしないといけないし」


「先に述べた不審者についてなんだが、お前の会社と提携してる不動産屋の従業員なんだよ」


「あぁ。スプーキー@ホームの?」


「そうだ。で、可能であればそいつの情報を知りたい。頼めないか?」


「う~ん……別に子会社でも下請けでもなく、完全に利害の一致で提携している極めてフェアな関係性なのであまり無茶な要求はできませんが、ま、やるだけやってみましょう」


「助かる。相手の名前は阿賀ヘル。詳細は不明だが、霊的な技術を使う」


「分かりました……ただ、その手の相手なら輝さんのご実家に伺った方が早いのでは? 狭い世界ですし、なにか知っているかもしれませんよ?」


「それはこれから聞くところだ。というか、俺、あんたに実家の事話したか?」


「えぇ。まぁ、鳥栖君からの報告ですが」


「そうか」



 ゴス美め。しれっと個人情報を流してるんじゃない。



「話しは以上でよろしいですか?」


「あぁ。マリとプランは今日の内にタクシーで向かわせる(着払いで)」


「分かりました。それでは」


「あぁ……」


「あ、そうそう。一応言っておきます」


「なんだ?」


「お気をつけて」


「……」


「それでは、また」



 プッ。

 ツーツーツーツー……




 本当に取って付けたような「お気を付けて」だったな。

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