サキュバス、諸行無常の響きを奏でました16

「冗談ですよ冗談。も~~~~~ピカ太さんったら根が真面目なんだから~~~~~~~~~これくらいのジョーク受け流せないようじゃ社会でやっていけませんよ~~~~~~~~~~このカス~~~~~~~~~」


「……」



 これ完全に舐め腐ってるやつだわ。あかんわ。一回しばき倒さないと癖になって常時マウント取ってくるようになるやつだわ。こういうタイプは犬猫と一緒で駄目な事は駄目と身体に覚えさせないといけない。でないといつか人に噛みついて処分されてしまう。故に、これから行う制裁はムー子の事を思っての事。決して憎くてやっとるんやないんやで? そこんとこ、よろし……く!



 ヒュン! グイ! ドーン!



「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」



 どうだ! これがジュニアヘビー級レスラーのバイブル的必殺技! みちのくドライバーⅡだ! ありがとうTAKAみちのく! 偉大なるフィニッシュホールドで悪鬼悪霊を成敗いたしましたぁ!



 さて、ムー子をぶっ殺したところで一つ思い出した事がある。粥だ。ゴス美に粥とトマトジュースを持っていくと約束していたのをすっかり忘れていたのだ。これはまずい。なにがまずいってお前、米炊いてないじゃん。どうしよっかなー「ごめんごめん忘れてたー」つって謝ってもいいけど、せっかくぎくしゃくとした関係性が解消されたばかりだし、あまり火種は作りたくねぇなぁ……なんとか生米で作れんもんか……ちょっと検索してみよう……あ、スマフォ部屋に忘れてきてんだったわ。だる。うん? いやまてよ? 確か、戸棚に……お! あったあった! 今は亡き奥さんの秘伝のレシピ! ここになんか良さげな料理載ってないかなぁ~~~~~っと……え? あるやん! 生米で作る中華粥! 僥倖~~~~~~~~~~~これはまさしく奇跡の類~~~~~~~~~~~ドンピシャで求めていた解答がそのままお出しされた感じ~~~~~~~~~よ~~~~~~~~~~~~しマリ達も洗い物を済ませていなくなったし台所は完全にフリースペースだから使いたい放題だぜ~~~~~~~~~~~~~~~! 早速作るぞ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~! 




 瑠璃家特性簡単中華粥。

 食材。

 生米……半合。

 水……我が家のカエルちゃん大グラスに目一杯。

 塩……少々。

 中華スープの素……いい感じ。

 気分によって胡麻、クコの実、パクチー、など。



 作り方。

 一、生米を洗ってザルにあげる。この際、しっかり水気をきる事。

 二、鍋に水と中華スープの素を入れて弱~中火で煮立たす。

 三、生米を加えて混ぜ、三十分ほど煮る。この時、米を少し砕いて入れると時短になり、またトロミがつくが、人によっては苦手な舌触りとなるため好みは予め聞いておく。

 四、火を止めて蓋をして蒸らす。

 五、盛り付けして完成。




 というわけでできたぞゴス美! 煮てる間にトマトジュースも買ってきたぞ! さぁお召し上がりの時間だ! 階段駆け上りノックをコンコーン! ガチャリとドア開けこんにちは! ゴス美さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! ウーバー〇ーツでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇす! ご注文の粥お持ちいたしましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



「うぅ……ピカ太さん……どうなさいましたか……?」


「課長。粥! 粥! 粥作ったから! これ! 粥!」


「あ、ありがとうございます……後でいただきます……」


「OK! 食べたら感想教えてな! アデュー!」


「アデュー……」




 部屋から離脱! ふぅ! 一仕事終えたぜ! やっぱり料理が上手く作れると気分がいいね! さ、この最高な状態で散歩に行こ! いやぁ天気もいいし今日は一日ハピな~~~る!



「あ、ピカ太さん遅かったですね。私はもうすっかり準備完了していますよ? 早くご飯食べに行きましょう。ご飯」



 ……一気にテンション下がっちゃった。



「え? どうしたですか? そんなお好み焼き失敗した時みたいな顔して」


「お前の姿が目に入った瞬間生きるのが嫌になってきたんだよ」



 なんだろう、この脱力感と虚無感。さっきまで料理が上手く作れてハピラキな気持ちだったのに、途端に意気消沈。恥の多い生涯を送って来ました。生まれてきてすみません。みたいなネガティブワードが頭の中で大爆発。辛い。



「あ、ドンマイで~~~~~~~~~~~~~~~~~~す! そういう事もありますって! そんなことよりさ! 行きましょう! 朝ごはんを食べに!」



 なんか、やだなぁ……

 このまま散歩ついでに適当な店に入り、店員にオーダーを伝えて待って、食べ終わったら会計を済ませて歩いて帰るっていうフローを想像すると、すんごい疲れそうな気がして外に行きたくなくなっちゃった……なんでって、そりゃお前、単純にムー子と一緒に歩きたくないからだよ。だってこいつスゲー服着てんだもん。お前、なにそれ? オーバーオールにツインテールて。九十年代後期のサブカル色強めな漫画に出てくるキャラクターみたいなファッションやめろよマジで。十代までだってその恰好は。いや年齢がどうとかじゃなくてさ、もっと落ち着いた感じでええやろ。そら何着るかは個人の自由やけども、なんか、こう……は~~~~~~~~~~~いいや、色々考えるのも疲れちゃうわ……



「……もういっそコンビニとかにしないか?」


「断固拒否です! 私はもう朝ごはんにバーガー屋で甘しょっぱいサンドを食べると決めたんです! そう……ピカ太さんの奢りでねぇ!」


「……本当にお前、そういうところあるよな」


 

 クズにかけては世界トップランカーだよお前は。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る