サキュバス、諸行無常の響きを奏でました11

「なんだぁ? てめぇ? この俺になんの用があるんってんだあぁん?」



 今の俺は空腹状態でバーサク直前。迂闊なコミュニケーションは即、死に繋がる事、覚悟の上であろうなぁ?



「あの、メッセの件なんですが……」


「あぁ? メッメドーザがどうしたってぇ?」



 万歳状態で腹パン決めっぞオラー!



「あ、もしかして読まれてない? あ、既読ついてない……え? え? 嘘? そんな事ってあります? 普通メッセきたら読みません?」


「あぁ読むよ? ただし、お前以外はなぁ!」


「え? ひっど。ひど、ひどくないです? これは完全にいじめ! いじめです! 然るべきところへ訴え出て謝罪と賠償を請求しますからね! 覚悟しておいてください!」



 公的組織に縋れぬお前がいったいどうやって謝罪と賠償を勝ち取る気なのか。



「どうせどうでもいいクソみたいな内容だろ……そんな事より俺は空腹なんだ? そこをどいてくれ」


「えぇ~~~~~~~~? クズ~~~~~~~~~? 女の子が~~~~~~~~~~~~~”メッセ送ったよ?”って言ったら普通~~~~~~~~~~”え? マッジごめん気付かんかったわぁ”ってなる~~~~~~~~~とりますまんしてから確認を行う~~~~~~~~~~それをしないばかりか~~~~~~~~~~~空腹~~~~~~~~~~~~? 空腹てなに~~~~~~~~~~~~~~~? 頭おかしい~~~~~~~~~~~~~食とか今どうでもいい~~~~~~~~~~大切にしてほしい女の子の気持ち~~~~~~~~~~~~ラブイズオ~~~~~~~~~~~バ~~~~~~~~~~~」


「ラブもクソもねぇよ。そんなに大切にしてほしいなら普段の行動を改めてから出直して来いこのゴミ」


「ぐうの音も出ない正論だけどもそんな言葉の刃で簡単に人を斬りつけるのはよくないと思います!」


「お前自分から斬られにきておいてよくそんな事言えるな。逆に尊敬するわ」


「私の人生は常に玉砕覚悟の全速前進ですからね。斬られようが撃たれようが関節外されようが怯みませんよ。えぇ」


「よーし。じゃ、試してやる」


「え? なにをする気ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」



 完全に入った曼荼羅捻りは足首を容赦なくぶっ壊す危険な技だぞ! よい子は真似しないようにな!



 さて、ムー子のトゥをデストロイしたところでそろそろ本当に夕食をいただきたい。やっぱね。人間食べな駄目よ。寒さと空腹は人間をとことんまで落ち込ませるみたいな事をチエのおばあちゃんも言っていたし食べてなんぼよ食べてなんぼ。問題は何を食べるかだが……もうコンビニにでも行くか。それでアレ買おう。にんにくマシマシのラーメン。あれなぁ? ちょっとよくないハマり方しちゃってんだよなぁ。なんか、昼何にしよっかなーなんて思ってコンビニに入るとつい手に取っちゃうんだよなぁ……臭いキツイからあんまり会社で食べたくないんだけども、欲求に抗えず……この間なんて経理のおばちゃんに「臭いキツイんですけど!」なんて怒られちゃって、それ以来さすがに隠れて食べるようになったけど、臭いでバレちゃうからさぁ。睨まれちゃうんだよねぇ。怖い怖い。そんな思いしてもつい食べちゃうニンニクマシマシ。食べ続けると確実に身体に悪いって分かっちゃいるけど止められないんだよなぁ。あ、あとブンブンのやげん軟骨がめっちゃおいしくてこれも一緒に買ってたんだけどいつの間にか棚からなくなって激しく動揺+怒りの獣心サンダーライガーだよ。え? ちょ、え? 誰? 誰があれなくせっていったの? え? ライガーソードだよ? 




「ピ、ピカ太さん……」


「うっわ! びっくりした! なんだお前、足首外れたまま立ち上がりやがって。こえーよ」


「いきなりドラゴンスクリューかましてくるピカ太さんの方が私は怖いですよ……」


「違う。あれはドラゴンスクリューじゃない。さっきお前にかけたのは派生技の曼荼羅捻りだ。外側に回転しながら吹っ飛ぶから受け身の技術が問われる技でな。素人相手には絶対に使っちゃいけないんだ」


「なんで? なんでそんな技を私にかけたんです? え? 死ぬ? 死にますよ?」


「大丈夫大丈夫。最悪胸部からの着地で折れた肋骨が肺に刺さとかの危険が生じるくらいだから。死ぬ程痛くて苦しいだけだから」


「全然大丈夫じゃない~~~~~優しさを微塵も感じられない~~~~~~~というか今はそんな事はどうでもいいんですよ! メッセ! メッセですよピカ太さん!」


「えぇ? まだ言ってんのお前? もういいだろう……今度ね今度」


「そんな事言って絶対見ないじゃないですかピカ太さん! 確実に私とのトークルーム消しますよね! 知ってるんだから!」



 うるせぇなぁ。まぁその通りなんだけど……

 しかしなんだろうなこの執着。面白動画のURLでも送ってきたのか? 

 ……しゃあない。いつまでもこの馬鹿に構って時間を浪費するのも馬鹿らしいし、確認してやるか。こいつの言う事を聞くのは癪だが……っと? あれ? スマフォの電源が落ちているな。これは……



「どうですかピカ太さん!? 読みましたか私のメッセ」


「すまん。電池切れだ」



「なぜーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」




 夜に叫ぶな近所迷惑だ。

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