サキュバス、諸行無常の響きを奏でました7
居間へ移動。
やばい俺、今日居間と部屋の往復しかしてないじゃん。引き籠り以上フリーター以下みたいな生活! 身体動かしてないのに全身怠いしなんか眠い! なんかめちゃくちゃ時間を浪費した気がして罪悪感がやばいな。ガンプラ作ろうと思ったけどこれは精神衛生上よくないから明日はどっか出かけよ。っと? あれ? 居間に誰もいねぇ。え? なに? 俺一人? ゴス美は仕事として、ピチウとプランとマリはどうした? いやいや、もう二十時やぞ。ピチウはともかく、小学生が出歩いていていい時間じゃねぇ。電話だ電話……あ、スマフォ部屋だわ。えぇい仕方がない。恐らく並の人間じゃ歯も立たない二人だろうがそういう問題でもない。未成年が大人を伴わず夜間に出歩くなどそれだけで重大な非風紀行為なのだ! 保護者役として、言わねばなるまい! ガツンと!
ガラガラ。
「ただいまー」
「ただいま帰りました」
グッドタイミング! いいや時間的にはバッドが過ぎるが、ともかくノコノコとお帰りになったようだな!! よーしこのまま玄関へ行き仁王立ち、不良街道へ突き進まんとする少女二人に正しき道を示してやろう! 威風堂々突き進む廊下! にこやかな二人に喝を入れてやる!
「おあぁ! よく帰ってきたなぁ二人ともぉ!」
「あ。お兄ちゃんただいま」
「遅くなりました」
「そうだよ! 遅いよ! どうなってるんだ! さすがにこの時間に帰ってくるのは看過できんぞ!」
語気を強めての正論を展開!
清聴せい清聴せい! 大人の言葉に耳を傾けい!
「え? ちゃんとメッセージ送ったじゃん。友達のお家でご飯ご馳走になってくるって」
「マリさんも私も、二度、三度とおかけいたしました」
……え?
「マジ?」
「マジ」
「ちょ、ちょっと待ってな?」
急いで階段をダッシュし自室。横たわるスマートフォンをチェック。マリからのメッセージを確認。
”今日ご飯ご馳走になってくるね! 帰りはタクシー使うから心配しなくて大丈夫だよ!”
……
再び玄関へ帰還。しかしそれは凱旋ではない。敗者の帰途である。
「……すまんかった」
見落としていた! ジョジョに熱中するあまり、スマートフォンの着信にまったく気が付かなかった! 食うや食わずやで漫画を読み続け子供二人の未帰宅に気が付かずあまつさえ連絡さえも反応できなかったとは! なんたという醜態! なんという不始末! これではとても大人とはいえんじゃないか! このクズ野郎!
「あ~~~やっぱり気付いてなかったんだぁ~~~どうせ漫画でも読んでたんでしょ~~~~~?」
鋭い!
「きっとジョジョの奇妙な冒険ではないでしょうか。この前部屋にお邪魔した際。箱に詰められていましたもの」
的中! というかいつ入ったんだ俺の部屋!
「ま、最近忙しかったみたいだし自分の時間に没頭するのも分かるけど、もう少し周りに注意払った方がいいんじゃないかなお兄ちゃんは」
「視野が狭いと人生上手くいきませんよピカ太様」
「……はい」
小学生に諭される俺。体裁も面目もねぇ。情けなさすぎる。恥ずかしみの極み。辛い。
だがいつまでもしょげかえっているわけにはいかん。そうだ。俺にはやるべき事があるのだ。
「ところで、何処のお宅でご馳走になってきたんだ? お礼の電話をせなならんから教えてくれ」
「あ、お兄ちゃん、独身彼女いない歴=年齢のくせに意外と常識的」
「意外な一面です」
「一応社会人として最低限のムーブはできるよ……」
さすがにご飯世話になっておいてノーリアクションはねーわ。今度マリに菓子折り持たせて渡してもらわないと。やれやれ。また出費だよ。
「今日はねぇ。都仁須君のところで遊んできたんだよ?」
「お邪魔してきました」
「あのややエキセントリックな少年か……仲良かったの?」
「うぅん? そんなに。でも都仁須君、家にホームシアターあるから……」
「大画面で花形満が大リーグボール一号を打つシーンは迫力満点でございました」
巨人の星観てたんかい。俺も参加したかったわそんなん。
「じゃあ、都仁須君のお家に電話かけるから、お前たちは風呂にでも入ってきなさい」
「は~~い。行こう、プランちゃん」
「はい。それでは、アデュー。ピカ太様」
「はいはい。アデューアデュー」
見送ったところで連絡網連絡網と……確かゴス美が棚にファイリングしていたはずだが……お、あったあった。さ、電話電話……あれ? なんかプランとマリ以外にもメッセージきてるな。えーっと、ゴス美から一件。
”申し訳ございません。本日休日出勤と残業のコンボで遅くなります”
なるほど大変だな。で、次はピチウか。なになに?
”今日、友達の家に泊るね”
え? あいつもう友達できたの? しかもご自宅に泊れるレベルの? 早すぎない? 俺なんて人様のお宅にお邪魔した事さえ稀だってのに。凄いなあいつ。社交性高すぎ。あ、そのお邪魔した子のお家にも菓子折り買わなきゃじゃん。あぁまた金が出ていく……しゃあないが……
あ、まだなんかあるな。どれ?
……なんだムー子か。これが読まなくていいや。タスクキルしてアプリを終了。さて、都仁須君に電話電話……
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