サキュバス、大型スーパーマーケットで休日を過ごす事に情緒を感じ始めました5
まったく最近の人間はデリカシーがない! 年齢の話題は仗助の髪形を馬鹿にするくらいのタブーでありアンタッチャブル! それをお前、ろ、老化~~~~~~~!? こいつはめちゃ許せんよな~~~~~~~~! 一つ説教が必要なんじゃないか~~~~~~~?
「ま、でも確かにまったく新しい漫画を読む時って少し億劫だよね。私も未だにヒロアカ読めてないし」
おっとヒロアカの話? よーし俄か知識で会話しちゃうぞー。
「途中まで集めてたな。体育祭辺りまで」
「序盤も序盤じゃん……人気のあるヴィラン連合編まで集めようよ」
「うぅん……実はあの章苦手なんだよな俺。なんか敵役が慣れ合ってるのに違和感を感じるというか、個の集団ならもっと殺伐としてほしいというか……あくまでビジネスと割り切ったドライな関係を維持しながらの組織運営とかにスポットを当ててほしいんだよな。極論でいうと、あのパワーアップイベントはちょっと気に入らない。別にヴィランでやる必要なくないってのは思うんだよね」
「なるほど~~浅いね~~ピカお兄ちゃんは」
「なに?」
「浅いよピカお兄ちゃん。いい? あのイベントはパワーアップイベント以外にもキャラクターの深掘りや感情移入の役割もあったんだよ。これまでなんとなく登場していたヴィラン連合の素性が明らかになり、何故ヴィランとなったのか、彼らは何を思うのか、悪としてどのように生きていくのかってのが明確になるところなんだよ? そら確かに馴れ合いみたいに映るかもしれないけど、考えてもみてよ。ヴィラン連合の構成員も、大半が子供なわけなんだよ。身心共に未成熟で、どこかしら暗い過去があり欠落している……そうした人間が集まり、反発しながらも互いを助け合っていって成長していくってのがあのストーリー肝なんじゃん。それこそ王道少年漫画を踏襲しつつ、これまでジャンプがやってこなかった事をしっかりと表現している。これを評価せず何を評価するのか教えてほしいよ私は」
「……」
こいつ……いっぱしの口を!? なんて生意気な!
だが、悔しいがそう言われると「確かに」と納得してしまう部分もある。なるほど敵側視点のジュブナイル。改めて考えると珍しい気もする。なんかあったかなこれまで。マガジンだとレイブ。ゲームだと東京魔神学園外法帳を思い出すが、ジャンプだと……あ、スラムダンク! バトル漫画じゃないけど陵南個別のシーンがそれに該当するんじゃないかな! 海南と戦う場面! あそこは熱かったよなぁスラムダンク全部熱いんだけどさぁ。福ちゃんの活躍とか仙道が才気煥発したりとか目が離せないシーンが多いんだよなぁ。なるほど、ヴィラン連合編ってのは、つまりそういう章作りだったわけだ。さすがジャンプの漫画! 考えられてるぅ!
って、あれ? ピチウどこいった?
「お待たせピカお兄ちゃん」
「あれ? お前買ってきたの? 本」
「うん。だってピカお兄ちゃん、なんか考え事して微動だにしなかったんだもん」
「え? 声かけろよ」
「かけたよ。でも全然反応しないから」
「……すまん」
「前々から言おうと思ってたんだけど、結構あるからねこういう事。悪い癖だよ?」
「……面目ない」
思考に熱中し周りが見えなくなるのは自覚している。たまにMTG中でもやってしまうから治さないとなぁなんて思ってはいるが、中々ね……あとミーティングをMTGって略すのやめろ。そのままミーティングって書いてもいいし打ち合わせって表記してもええやろ。なんでわざわざアルファベット使うねん意味分からん。弊社はアメリカの人? あぁあとアジェンダとかトラッキングとかサマリーとかバイネームとかうっさいんじゃボケェ! 知るかぁそんな言葉ぁ! なにゆえ日本語で駄目なのか説明していただきたくーーーー! 英語表記にする事によって如何なる利点があるのが教えていただきたくーーーーーーー! あぁそうそう! この前の会議もそうだよ! なんか意識高い系のベンチャーがいきなり貸し会議室用意しやがってKPIだのコミットだのコンセンサスだの! カ行ーーーーーー! カ行しかないーーーーーーーーーー! もう俺はその時「なるほどですねー」としか返せなかったよ! でも案件はなんとかなった! どうやったのかは知らないけどなんとでもなるもんだな! しかし殺す。絶対に許さない。あ、しまった。
「……すまんピチウ。どうやらまた思案に耽っていたようだ」
「知ってる。呼んでも全然反応なかったんだもん」
「……」
「私だからいいけど、他の人に同じ事したら嫌われちゃうよ?」
「耳が痛い」
ちょっと本気で対策考えよ。特に最近酷いんだよな。やはり老化……いや、そうじゃない。違うに決まっている。この俺が老化だなんて、そんなそんなそんな……
「それよりピカお兄ちゃん。お腹空かない?」
「え? あぁ。もう昼時か。そうだな。なんか食べるか。食べたいものある?」
「牛タン食べたい牛タン」
「牛タン? 牛タン専門店なんてテナントに……」
「あった。確かにあった。一階レストランフロアにあるってマップに書いてあった」
本当かよ。ちょっとスマフォで調べてみるか。タップタップ……あ、あったわ。普通に営業してるわ。
「じゃ、行くか牛タン」
「うん。食べる。私牛タン食べる」
……ピチウめ。食優位になって言語能力が失われていやがる。
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