サキュバス、合コンって言葉が死語になりつつあるって事に時代の流れを感じざるを得ませんでした15

 さぁそんなわけで始まってしまいました一次会の佳境。このまま何事もなく「面白かったね! じゃ、また!」とお別れしそれっきりの関係で終わりたいところだが阿賀ヘルめ、いけしゃしゃと対面に座るなどと。



「ところでピカちゃんはどんな女性が好みなんですか?」



 ねーよ好みなんて。強いていえばお前とムー子以外の女だよ。まったく、男女限らず人の話を聞かない奴と太罫線使う奴とセル結合する奴は大嫌いなんだ。あのフォーマットぉ! 弄るなっていったよなぁ! なんでお前勝手に手加えてわけの分からん仕様にしてんねん! くそ! また修正で無駄な時間を潰す羽目になる! おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉ言う事をぉ! 言う事を聞いてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 仕事はしなくていいからせめて言った通りの作業はしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 他はなんにもしなくていいからぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!



「ピカちゃん。聞いてますか?」


「えぇはいはい。好みの女性でしたね。どうですかね。考えた事もなかったなぁ。興味ないし」


「そうなんですか。なら、今日の四人の中からあえて選ぶなら、誰が一番ですか?」


「……」


「……」


「……」



 ……気が集まっている。他の女三人が、会話をしながら俺の方に意識を集中させているのが分かる。

 なんで? なんでそこまで俺に興味があるの? 店長と比較するならまだ分かるよ? でも伊佐さんと不破付さんがいるんだよ? 伊佐さんはお洒落で業界人って感じがするし、不破付さんは(途中ガンダム入ったとはいえ)軽快なトークで場を賑わせてきたじゃん。どう考えたって二人の方がいいだろう。いや、申し訳なく店長と比較して俺の方がいいみたいな事思ったけど、店長だって別に不細工なわけでもなし、ガンダムさえ気にならなければ全然問題ないんだよ? どうして一番消極的な俺を目掛けてくるの? やめてほしんだけど。



「ねぇ、ピカちゃん。誰ですか?」


「……」


「……」


「……」



 答えなきゃいけない感じ―これ? これ答えなきゃいけない感じ―? おかしくなーい? みんな違ってみんないいじゃーん! どうしてその中から一番を選ぼうとしてしまうのー? 競争社会日本の教育的弊害なのー? 資本主義における戦いの縮図がここに描かれてしまっているのー? なんと哀れなー! 争いは何も生まないー! 断ち切らねばー! 悲しみの連鎖をここで断たねばー! しかしどうするー? 僕にそこの手を汚せと言うのか。



「……皆さん素敵だと思いますよ?」



 ここは柔軟な思想のニュートラル的選択肢。日和見主義者? うるさい文句あっか。



「……で、誰が一番なんです?」


「え? いや、だから……」


「ピカちゃん」


「はい」


「誰が、一番、なんですか?」


「……」



 ならず! 誤魔化しならず! え? どうしよ。これ絶対誰か言わなきゃ終わらない奴じゃん。しゃあない、もう目が合った奴でいいや。


「……」


「……」



 はい。バッチリ合いましたので君に決めた!



「じゃあ識場さんで」



「へぇ……」


「!?」



「おや? エンティさん。どうされましたか?」


「凄い汗ですよ? 大丈夫ですか?」


「は、はい! 多分! 飲みすぎちゃって! ちょっと酔い覚まししてきます!」



 ……去っていった。



「あらあら。どうしたんでしょうかエンティちゃん。でもまぁ、いなくなってしまった以上は対象外ですね」



 ……なにそのシステム。別におらんなった奴選んでもええやん。



「さ、それでは、エンティちゃん以外の方でお選びください」



 まだ続くの~~~~? なにこれ~~~~? どういうゲーム? こんなに盛り上がらない飲み会レクリエーション初めてなんですけど~~~~~~~? 炙りカルビゲームとか歌うたえゲームとかだろ普通~~~~? まぁそんなクソどうでもいい催しも絶対やりたくないんだけど、ともかく選べと言うのであれば致し方なし。次は……


「……」


「……」


「金右さんですかね」


「ふぅん」


「!?」



「ライコさん? どうなさいました? お酒こぼれてますが……」


「あ、あぁ~~~ごめんなさ~~~~い。ちょっと洗ってきますね~~~~~~……」



 ……



「おやおや。ライコちゃんもいなくなっちゃいましたね。これで選択肢が更に限定されてしまいました」


「じゃあ九雲さんで」


「あぁっとぉ!? しまったぁ!? 私としたことがぁ!? 化粧室に財布を忘れてきてしまったぁ!? これは一大事ぃ!? ちょっと探してくるねぇ!?」



 ……




 そして誰もいなくなった。そう。一人以外は。



「さ、ピカちゃん。皆いなくなってしまいました。選択肢は一つです。今日この会に参加したメンバーで、どなたが一番好みでしたか? 今ここにいる女性に限定してお答えください」



 ふっざけー? こんな強硬手段あるー? 



「……一択ならわざわざ言わなくとも問題ないのでは?」


「いいえピカちゃん。ちゃぁんとはっきり答えてほしいんです。いったい貴方が、誰を好きなのか」



 ……なんか様子が変だな。ちょっとした洗脳のようだ。こいつ、何か狙いが……



 プツン。



 おわ!? なんだ!? 急に真っ暗に……



「きゃ! 停電!」



 停電!? 停電だと!? このタイミングで!?



「ピカ太さん! こっちへ!」



 え? 誰? 誰が来たの!? うわ! なんか凄い勢いで引っ張られていく! なんだこいつ! でもこの場はヤバそう素直に導かれるまま逃げ出そう! どこの誰だか知らんが助かった! サンキュー! そして不破付さん伊佐さん店長! さよなら! アデュー! 


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