サキュバス、ヤベー女がやってきました1
一難去ってまた一難。
やむを得ないとはいえ、妙な約束を取り付けてしまった。どうしよっかな……このまま逃げ出してしまいたいが、奴は今住んでいる部屋を紹介してくれた不動産屋の受付。完全にヤサがバレているわけだから、ここでのエスケープは悪手でしかない。となれば、しばらく会社に住んで身を躱せばなんとか……駄目だ。契約の際にしっかりと勤務先を書いてしまっている。ではホテル暮らし……ホテル暮らしかぁ……こんなところで金は使いたくないなぁ……それに考えて見たら、俺が隠れている間にマリやプランに危害があったら事だ。普通に考えば撃退は容易だろうがあの女、何か底知れないものを感じる。迂闊に敵対はしない方が吉だろう。う~~~~ん。やはり大人しく待たねばならないか……
え? 本当に? 本当にそうするしかない感じ?
えぇ~~~~~クソ怠いんすけど~~~~~~? だいたいこっちは身体いわしてるんだよ? 限界超えてギリギリ歩ける状態だよ? もはや根性で意識保っているといっても過言でもないってのに、こんな困難ある? まったく、酷い話だね。あぁ考えれば考える程疲れが加速していく。なんとか外に出てきたものの、百貨店の出入り口は人犇めくステーション前。ここで待たなきゃいかんとか 死ぬぞ?
「じゃ、私達この辺りをぶらぶらしてるから帰るから、ピカお兄ちゃんもあんまり遅くならないようにね?」
は?
「ちょっと待て? なに? お前ら別行動取る気なの? なんで?」
「だってあの人、用事があるのはピカお兄ちゃんだけでしょ? ならいいじゃない。二人でねぇ? マリちゃん。プランちゃん」
「うん! 私もそれがいいと思うな!」
「私はマリさんが良ければそれで」
「はい。満場一致というわけで、それでは……」
「待て! 一致してねぇ! 俺の! 俺の清き一票が反映されていないだろ!」
「残念ながら当各議会は女性にしか投票権がないんですよ」
「差別! とんだ差別だ! 人権を尊重した民主主義的投票制度の施行を要求する!」
「別にいいけど、どの道お兄ちゃんに決定権はないよ? 過半数取れないし」
なんという数の暴力! 民主主義は死んだ!
「なんだよ! いいじゃないか一緒に行動すれば! 俺あの人苦手なんだよ! 一人にしないでくれ!」
「いやぁ。そうしたいのは山々なんだけどね? 実は私も、ちょっと……」
「え? そうなの?」
「うん……なんだろう……独特なオーラが心をヒリつかせるというか……」
「私もなんか苦手だなーあの人。よく分かんないけど、ゾワッてする」
「あ、マリちゃんも? やっぱあるよね~なんか妙な気配」
「うん。幽霊やってた時もたまにあったんだけど、凄い不気味な感じがした」
抽象的だが分かるぞその気持ち! 蛇とか鰐とかと対峙した時のような緊張感走るよね!
「プランは?」
「私は別に……あの方、人間は人間ですが、どこか
「なんだそれ? 邪悪って事か?」
「そいういう捉え方もできますし、逆に純粋という見方もできます」
なんだかいまひとつ要領を得ないな……だがまぁ、人間離れしているというのは確かなようだ。なおの事お相手するのをご遠慮したくなってきたぞ?
「ピチウ。人間に効果のある術とかないの? ギガブレイクとかドルオーラとか」
「ピカお兄ちゃんはさぁ……人類を滅亡させたい人?」
「だってよぉ? 相手は悪魔に同類認定されるような奴だぜ? まともじゃねぇよ。なぁ?」
できる事なら全力を持ってエリミネートしたい。奴は危険だ。特に根拠はないけど。
「あら? 私が悪魔ですか」
「……!?」
鳥肌! この声! この笑い声! 間違いない! 奴だ! 奴が帰ってきたんだ!
「阿賀さん……い、いつの間に……」
「ヘルです」
畜生いつもいつもめんどくせぇなぁどっちだっていいだろ!
「……ヘルさん。その、気配を殺して背後に立つのはやめてもらっていいですか?」
「すみません。癖になってまして」
なに? ゾルティック家で過ごしてんのあんた? 試しの門何枚までいける感じ?
「それより、私が悪魔というのはいったいどういう意味でしょうか?」
「あ、それは言葉のあやで……なぁピチ……」
……いない。ピチウもマリもプランも、いつの間にやら姿がない。
「宙さんとお子様方でしたら、先ほど人混みの中へと消えていかれましたよ?」
「そうですか……」
あいつら本当に置いていきやがった! 薄情が過ぎる!
「それで、悪魔というのは……」
食い下がる~~~~~いいじゃんもうそんな事~~~~~~こいつ本当に怠い~~~~~
しかし、聞いてくる以上は答えねばならない。しゃあない。適当物故いて無理やりにでも納得してもらおう。
「すみません。デビルマンレディーに似ているなという話をしていたものでして」
「……」
あ、やっべ。黙ってしまった。さすがに怒ったか?
「それは、男なんですか? 女なんですか?」
「不動明とデビルマンがパラレルTSした姿なので男でもあり女でもあります」
「そうなんですね。よく分からないんですけど、それは悪口の類では?」
「いいえ? そんなわけないじゃないですか。面白いですよ? デビルマンもデビルマンレディー」
「そうなんですね」
「はい。そうなんです」
内容はハードだからあんまり人には勧められないんだけどね。
まぁともかく誤魔化せたからいいや。さ、本題本題。
「ところで阿賀……ヘルさん。お話しというのは?」
「あ、はい。そうですね。立ち話もなんですので、そこのカフェを利用しませんか?」
「……かしこまり~」
身体痛いから座れるのはありがたいけど、これって長時間コース? やだなぁもう。
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