サキュバス、一肌脱ぎました11

 気を取り直して土羅さんはどうだろうか。


「できましたぁぁぁぁぁぁぁぁ! はい! これが私のじんくす? です!」



 未だに名前があやふやっぽいが、これ、結構ちゃんとできてる! しかもデカールまで貼ってる! なんだこの蛍光パープルのポワポワした輪っかとか蛍光レッドのカクカクしたやつ! 凄いなぁちょっと地味めの機体色故に映えるなぁ。ちょっと悪趣味だけど逆にそれがいい、センスある。うんうん。嫌いじゃない。嫌いじゃないよ~~こういうの。ベクトル的には地雷女のファッションセンスだけど、その禍々しさがいい味出してる。個性が光るなぁ。しかし地雷女ってのも失礼なワードだよな。



「うわぁ凄い! メーシャちゃんこれ自分でやったの? 可愛すぎて死ぬ!」


「ありがとうございますムー子さん! ほとんど店長がやってくれたんですけど……」


「いやいやぁそんな事ないですよ皇帝さん。僕は横から口を出してただけです。なによりこのデカールのセンスといったら、脱帽ものです」



 めっちゃデレてる。多分、生涯で一番楽しい時間だったんだろう。よかったな店長。これでクリスマスザクⅡ改制作のマイナス分が帳消しだな。それはさて置き……



「こんなデカールよくあったな店長」



 どう見ても正規品ではない特徴的なデザイン。どこに売ってんだこんなもん。



「いや、これウチで作ったやつですよ? ツールでパターンとかイラストをインポートしたり、自分で描いたりして専用の用紙とプリンターで出力するんです。一回五百円で承ってます」


「へぇ~~~~~~」



 いつの間にそんな面白そうなサービス始めたんだ。めっちゃやってみてぇ。オリジナルパーソナルマークとか超作りてぇ。架空のエースパイロット設定考えて量産機のカスタム化してぇ。いいなぁ。色々捗りそうだなぁそれ。やっぱりガンダムはワンオフ機よりもマスプロにロマンを感じるよね。ネームドキャラクターの乗る高性能モビルスーツ相手にシステムと数で挑む美しさ。エース。ベテラン。サポートに徹するいぶし銀。個が集となり組として機能していく様子はそれだけでドラマになる。作中では演出上無双となってしまうが、俺は戦術理論に基づく部隊行動にこそ魅力を感じるね。まぁそんな事いったら何でガンダムなんて観てるんだって話なんだが。

 




「どうですか輝さん! 私、頑張りました!」



 おっと、自慢気に主張してくるじゃねーの土羅さん。でもそのメンタリティは大事よ? せっかく作ったんだ。誰かに見てもらいたい気持ちは痛い程分かるし、このレベルだったら見てもらった方がいい。よーしここは一つ、先輩として優しく称えよう。



「あぁ。凄いな。素人が作ったとは思えん。文句なしに素晴らしいデキだよ。これ、動画で上げたらいいんじゃないか? ガンプラカフェ行ってきました~みたいな感じで」


「あ! いいですねそれ! ついでに企画化しちゃってもいいかもしれません!」


「そうだな。ただ、毎回プラモ作るだけじゃ面白くないから、ガンダムの歴史を学びながら、紹介する作品に登場する機体を作っていくとかどうだろう。これなら尺も数も稼げるし、困ったときにやっときゃいいワイルドカード的な動画にもなるぞ」


「あ、それやっていいですか輝さん! 最近ちょっとマンネリ気味だったんですよ!」


「別にいいよ。ただ、勝手にアニメの画像とか使うなよ?」



 YouTubeでの収益化が一般的になってきたせいか最近どこもうるさいからな。やるなら許可は必須だ。まぁ多分下りないと思うけど。こういう著作物関連のガイドラインって思いの外面倒なんだよなぁ……下手しなくとも法務関係の話しになったりするし、そうでなくとも作品イメージの問題とかもあるし……いやぁ権利は大事だよ。守ろう著作権!



「ちょっとピカ太さん。どうしてメーシャちゃんにだけ優しいんですか!? 私にも! 私にも優しくしてくださいよ! 動画のアイディーアを! アイディーアをください! 金になりそうなやつを!」


「食うか食われるか。山に籠って野犬とストリートファイト。生きるか死ぬかのデスサバイバル生活開始」


「ハードル~~~~~~ハードルが高い~~~~~そして命の価値が低い~~~~~~あと前提としてVの動画ではない~~~~~生身で映る事となる~~~~~~全国に私の美貌が届けられてしまう~~~~~~~~~世界中の美男子が私を追ってこの街に殺到してしまう~~~~~~リアル逃走中開幕! 捕まった瞬間即セッェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ……」


「それ以上続けるならそこのデザインナイフでお前の眼球を摘出する事になるが?」


「ェェェェェェェェェェいか隊となって讃美歌を斉唱しながら商店街の人々に幸せをお届けする動画を作りたいなぁと思います」



 まったく、ここに店長と土羅さんがいなかったら問答無用で渡久地の刑だったぞ。ルーシーモノストーンに感謝するんだな。でもまぁ、いつもの調子に戻って少しホッとしたな。こいつが塩らしいと怖気がする。え? なんだこいつ。調子こいてたらムカつくし、おとなしかったら気持ち悪いとか。百害あって一利なしかよ。最悪だな。



「で、店長不思議なんですけど、ピカ太さんはなんでイージスなんですか? 前に”いやぁSEEDのキット馬鹿にできないわぁ。イージス組んだけど可動域めっちゃ広いわぁ”ってメッセ送ってくれましたよね? なぜ二体目を」



 そんなメッセージ送ったかな……全然記憶にないが、質問には答えてやろう。



「実はな店長。俺はこの女が務める企業のAIに、M字開脚が好きだと判定されてしまったんだよ」


「はい? なんて?」


「俺はこの女が務める企業のAIに、M字開脚が好きだと判定されてしまったんだよ」


「言ってる事は分かるんですが意味が分からないですね。え? なんて? AIにM開脚好きと認定された? それどういう目的があるんです? あれですか? そういう企画ものですか? それともそういう企業のモニター的なあれですか?」


「詳しくは守秘義務があるからなんとも言えんが、ともかく行動パターンを解析した結果そういう風になったらしい。しかし、俺はそこに疑問が生じた。何故なら、俺の生活の中にはグラビア写真もアダルト動画もないからだ。女体など、俺にとっては何の価値もないからな」


「うわぁ……それ、真性の発言ですよピカ太さん。店長、ちょっと引いちゃうなぁ」


「うるさいぞ。まぁともかく。俺にはM字開脚の接点などなかったんだよ。それがどうしてそのような結果となったか。考えてみたところ、一つ、思い当たる節があった」


「思い当たる節?」


「そうとも。このイージス。今から変形させるから、その手順をよく見ていてくれ」



 これを……こうして……こう!



「なるほど! イージスがM字になってる! 逆関節だけど!」



 そう! これで全ての謎が解決! ムー子の会社のAIは! 俺がイージスを組み立てているところを確認して判断を下したに違いないのだ! ありがとうアスラン! これで俺の誤解は解けたよ多分!



「……」



「? メーシャちゃん、どうしたの?」


「え? ううん! なんでもないです!」


「そう……」

 



 ……土羅さん、なんでもあるって感じだな。といっても、俺には関係ないか。それよりそろそろ時間だ。楽しかったガンダムカフェも終わり。あとは夕食でも食べて解散ってところか。ようやく解放の目途がたったな。帰ったらさっそくHi-ν作りたいなぁ。

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