サキュバス、犬とロリがやってきました3
さてトンテンカンテン。ニス済み資材を継ぎ接ぎ組み立て。排水機構も万全だしこれで梅雨時期の不快感も軽減できるって寸法よ。タープも張るしワンちゃんも快適に過ごせる事だろう。飼わないけど。いや、しかしせっかくここまでやったんだから犬の一匹くらい飼ってもいいのではないか。確かにアニマルライツの観点からペットなどという人間のエゴ丸出しの飼育システムは推奨できんが、倫理観や社会的問題を差し引いても手を出したい欲望が疼く。ほしい。可愛いワンちゃん。ちょっと考慮するか……犬のいる生活……! それにしても犬かぁ……飼ったら名前なににしようかなぁ……インターセプターとイギーとかやっぱり考えちゃうよなぁ……でもアニメやゲームのキャラクター名をつけるってのはちょっと気恥ずかしい気持ちもある。ここは学をひけらかすためにク・ホリンとか……駄目だ、最近は北欧神話やメガテンよりFGOを連想する人間が多い。もし人前で名前を呼んだりしたら「あの人絶対菌糸類フォロワーじゃん」なんて思われるに決まっている。型月はきらいじゃないが好きでもないので却下だ。そもそも俺北欧神話知らないし。となるとどうしようかなぁ……う~~~ん難しい。そういえば俺、名前決めるのかなり迷うんだったなぁ。第四次スパロボでも四十分くらいかけてスーパーかっこいい考えてたもんなぁ……そうそう、レイス・カイ・ラナーター。レイス・カイ・ラナーターだ。俺の主人公。性格は勿論クールでニヒル。裏設定とか考えてノートに認めてたなぁ。いやぁ由緒正しい厨二の黒歴史だ死にたい。
「お兄ちゃん、おにぎり持ってきたよ。食べる?」
「あ、あぁ……いただくよ」
「? どうしたの? なんか可哀想な物を見たような感じの顔してるよ?」
「ちょっとな……」
可哀想な過去の自分を見直していたなんて言えるわけがない。
認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものは。
「おにぎり、美味しいです。とても素敵な日本の食べ物ですね」
「ありがとう。プランちゃんいっつもパンだから、たまにはお米もいいかなって」
「大変恐縮です」
どんな会話だ。うん? パン? いっつも?
「マリ」
「なぁに?」
「いっつもパンって事はないだろう。給食は米の方が多いんだから」
「プランちゃんは学校の友達じゃないよ?」
「え? そうなの?」
「うん。前、ワンちゃんいるお家に行ってるって言ったじゃん? そこの子」
「へぇ」
子供の交友関係は広いな。しかし知り合いが多いのはいい事だ。世間じゃ一人でも生きていけるし友人なんていらないなんて意見をたまに見るが、社会生活を送る上で最低限のコミュニケーションを築けない人間はどうかと思う。程度の話ではあるんだが。もっとも俺は友達いないので人間としてのランクは下の方なんだがね。いやぁどうやって友達って作るんだろうね。いらないけど。
「マリさんとは仲良くさせていただいております。ニクソンも喜んでいます」
「そうですか……ニクソン? その犬、ニクソンっていうの?」
「はい。リチャード・ニクソンのチェッカーズスピーチにちなんで名付けました。ニクソンの印象戦略と扇動的手腕を皮肉ったブラックジョークです」
「そうですか」
なんて事だ。俺がスパロボで意味もなくかっこよさそうな響きだけでネーミングしていた齢で、こいつは歴史的なジョークを交えつつウィットに富んだ命名を! だいたいなんだよチェッカーズスピーチって! そんなわけ分からん言葉聞いただけで眠くなるわ! もはや子守歌だよ! 畜生! なんだか負けた気分だ! えぇおにぎりを食べよう! おにぎりを! おにぎ……ん? なんだこの食感。もちもちする……
「マリ、これ、具、何が入ってるの?」
「え? タピオカだよ?」
「タピオカ」
「うん。タピオカ」
そうか。そういえばお前、タピオカ食べたがってたもんな……うぅむ違和感はあるが、存外合わない事もないから良しとしよう……いや、これ普通にイケるな。不思議と尾を引く味わいがある。しかし、どっから仕入れてきたんだこのタピオカ。近所のスーパーには売ってなかった気がするが
「このタピオカ、何処で買ってきたんだ?」
「あ、これ? 唐揚げ屋さんのおじさんが安く売ってくれたんだ」
「……そうか」
なんか社会の闇を感じる取引だが何も考えないようにしよう。このタピオカは近所の唐揚げ屋がたまたま大量に持っていて、マリはそれを売ってもらっただけ。ただそれだけの事。単純明快な事この上ない。
「さて、じゃあ犬小屋造りの続きするか。マリとプランさんは家で遊ぶのか?」
「うん。でも、後でjazz子に行ってくる」
「そうか。くれぐれもムー子の部屋には近づくなよ?」
「大丈夫。分かってる。死んでも行かない。行かせない」
凄い覚悟だ。マリ、ムー子にだけは距離開けるからなぁ。無理もないが。
「じゃあねお兄ちゃん。残ったおにぎりは冷蔵庫入れておくから、お腹空いたら食べてね。じゃあね」
「はいはい。あ、プランさん、ゆっくりしていってくださいね」
「はい。ありがとうございます。お茶漬けが出る前にお暇します」
微妙に変な日本語だな……
「じゃあねお兄ちゃん」
「失礼します輝さん」
「はいよー」
さて、続き続きと……
ピンポン。
なんだ? また客か? 珍しいが、こんな日もあるか……
ピンポン。ピンポピンポピンポン。ピンピンピンピンピンポンピンポン。ピンポポポポポポポポポポポポポポポポポポピンポォォォォォォォォォォォン
うるさ! うざ! なんだ!? ふざけやがってカチコミかぁ!? どこの馬の骨だ! 文句言ってやる!
「ちょっとあんた非常識ですよ! 一回鳴らせば分かるんだから!」
「すいませぇん。なんだか楽しくなっちゃって」
楽しくなっちゃってじゃねぇんだよお前こら! っと。なんだこいつ、金髪に青目? 外人? いや、それ以前になんか独特な雰囲気が……
「あのぉ。鳥栖さんいらっしゃいますでしょうか?」
ゴス美に用事? 仕事関係の話か? うぅむ。では無下にはできんかぁ……
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