サキュバス、歌っちゃいました6
そんなわけではい帰宅っと。さて、ムー子は何処に……
「ピカ太さ~ん!」
探す間もなく駆けだしてきたわ。玄関開けた瞬間やってくるとかよく訓練された犬みたいだな。犬いいよね。そうだ、せっかく引っ越してきたしマリとの約束で犬小屋も作らねばならないだから、いっそ飼ってみるか。でも俺時間的に世話できないしなぁ。ムー子ができるとも思えんし、頼みの綱はゴス美だが、だだでさえ家事やらマネージメントで追われているんだ。これ以上手間を増やすのも憚れる(倒れたのもそれが原因かもしれんし)。一旦保留だな……おっと、そんな事よりゴス美の様態だ。
「課長は? どこにいるの?」
「はいぃぃぃぃこっちですぅぅぅぅぅぅ」
その半べそ止めろや気持ち悪い。
「私の体力的に二階に運ぶのは厳しかったので、居間のソファベッドにぃぃぃぃぃ寝かせましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
はいはい引き戸を開けますよっと。
……
……なるほどそれは分かった。運送中に落としたら洒落にならんからな。それはいい。それはいいが……
「なんでドライアイスで囲ってんの?」
「冷えピタとかなくてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
思ったより馬鹿だった。火葬前の死体じゃないんだからよぉ。
だいたいお前これ、下手したら一酸化炭素中毒で死ぬからな? あと熱のある人間をむやみやたらに冷やすのもよくないぞ。ちゃんと症状を見て……って、冷た! これ死ぬ寸前の体温だろ! どんだけ冷やしてんだお前!
「おい。電気毛布持ってこい」
「え? 温めちゃっていいんですか?」
「お前は凍死とか窒息死とかしたことないのか」
「それは経験ないですねぇ……あ、でも腹上死なら……」
「早く持ってこい」
「あ、はい……」
まったく使えないやつだ。今度ゴス美と同じ状況を体験させてやろう。
「……ピカ太さん」
お、ゴス美起きたか。よかった死んでなくて。まぁ死んでも生き返るんだろうけど。
「大丈夫か課長」
「私、なんで寝てるんでしょうか」
「なんか熱出てぶっ倒れたらしいぞ。ムー子から電話があったから帰ってきた」
「そうですか……申し訳ございません。すぐに動けますから……」
「おいおい寝てろ。まだ回復もしてないっぽいし、身体が冷え切ってるんだ。無理すると死ぬぞ」
「そういえば凄く寒い……いや寒……寒すぎるでしょ……なんですかこれ何があったんですか?」
「ムー子がドライアイス敷き詰めて、寝ずの番~とかいいながら酒飲んでたからな」
「そうですか」
あ、今ちょっと顔に血色が戻ったぞ。やはり人間怒る事は大切だな。血の流れがよくなる。
「やってませんよ私そんな事!」
なんだもう戻って来たのかつまらん。
「じゃあ、このドライアイスは?」
「すみませんドライアイスは私です!」
「……ムー子」
「はい!」
「治ったら三号教育だから」
「……はい」
不穏なワードが耳に入ったが聞かなかった事にして電気毛布をセット。お、もう暖かくなってきたぞ。凄い。五倍以上のエネルギーゲインだ。
「で、どうしたんだよ課長。風邪か?」
「いえ、恐らく、淫力が落ちてきたんだと思います。最近、ちょっと無茶しちゃいましたから」
「ふぅん」
なんだ淫力って。
「しばらく寝てれば治るので、どうかご安心していただければと。その間、申し訳ございませんが家の事は……」
「それくらい気にするな。なに、長い事一人暮らしだったんだ。家事の真似くらいはできるさ」
「なんか、生活力のある男の人って逆に気持ち悪くないです?」
「生活力皆無の
せめて洗濯くらいできるようにしろ。ゴス美くるまで俺が洗ってたんだからなお前の服。下着類も含めて。
「申し訳ございません。あぁそれと、もう一つお願いが」
「なんだ? なんか食べたい物でもあるのか? 一応カットフルーツとヨーグルトは買ってきたが」
「あ、ピカ太さん、私のメロトッツォは?」
「ほらよ」
「ぶべぇ!」
こいつ本当に空気読まないな。そんなだから関節外されるんだぞ? まぁやったの俺だけど。
「ムー子が出る予定の、Vの歌イベントあるじゃないですか」
「あぁ。あったなそんなの」
「実は明日、それについてのミーティングがありまして、すみませんが代わりに出席していただけないかと……」
「明日か……」
あー普通に平日だなー仕事あるじゃんどうしよう……
「あ、無理なら断りますが……リスケもできるかもしれませんし……」
「うーん……」
こんな状態であまり精神的な負担を掛けたくないなぁ……でも仕事がなぁ……
「ちょっとピカ太さん! なに悩んでるんですか!? 私のイベントですよ? 余地ないじゃないですか悩むような余地は!」
「確かに、即断で蹴っていい内容だな」
「はぁぁぁぁぁぁぁこの男はホントぉぉぉぉぉぉにそういうとこー! そういうとこがー! あんたの駄目なところばーい?」
お前が博多弁使うと福岡が穢れるからマジでやめろ。
「別にお前はどうでもいいんだが、課長の頼みとあっちゃあ断れんなぁ……」
「え、? 私より課長なんですか? この浮気者!」
「うるさいぞ。今度はアキレスの腱を破壊されたいか」
「すみませんでした!」
「すみませんピカ太さん。ご迷惑をおかけいたします」
「気にするな。困ったときはお互い様だ」
「……実は、一つだけ、即回復する手段があるんですが」
「なんだよ。そんな方法があるのか。手伝えるなら手伝うぞ?」
薬草でも摘んで調合すればいいんだろうか。まぁ言われた通りにやればできん事もないだろう。
「はい、あの、すればいいんです」
「何を?」
「決まってるじゃないですか。勿論、セック……」
「おっと病中の人間がこんな長話していちゃいけない! さ! もう寝ろ寝ろ! ミーティングは何とかするから、ま、安心して養生しててくれ! それじゃあ俺は仕事戻るから無理すんなよ! じゃあな!」
ダッシュ! 離脱! 外!
危ない油断した。あいつの本職は淫魔だった。
しかし、勢い余って外に出てきてしまったがどうしよう。会社に戻るのもなぁ……
……仕方ない。今日はもう、この時間から飲むか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます