幸福はまるで砂糖

幸福は一瞬だ

実際に経験した時間が短いのか

短く感じるだけなのか


辛い時間が多いから

一瞬に感じてしまうのかもしれない

だからこそ

一瞬が輝いている


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◇雪、ただ降りて/p26


学校帰りに英単語帳を眺めつつ

深々と降り積もる雪に足跡をつける


ローマ字の羅列を組み替えただけの単語

それに意味など見いだせずに

街灯の明かりを頼りに歩く


車も人も眠ったままで

ただ聞こえるのは自分の鼓動と足音


規則正しく聞こえる音に

不規則に溜め息の声


街を見渡すとビルに明かりが付き

パソコンを眺めている

同じような人がいるのだと知る


でも僕は独りだ

今この僕はたった独りで戦っている


終わりの見えない戦いに挑み

何が偉いか偉くないかも分からず


ただ覚えることだけが僕の人生で

それもその日が過ぎれば忘れる


雪は降りやまない

どす黒い脳を煮詰めても

降る雪は美しく白いままで


雪、ただ降りて


僕は何にも染まらない

真っ白な雪になりたい


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◇死的好奇心/p30


「ねえ、死んだら天国に行くんだって」

「そうなの?」

「辛いことも、苦しいことも全部ないんだって」

「それは凄いなあ」

「天国は凄くいい場所だから、誰もここに戻ってこないの」

「そうなんだあ」

「たしかに僕の弟もお父さんに殴られて死んじゃったけど、まだここには戻ってきてないもんね!」

「本当?よっぽどいいんだね」

「私今おばあちゃんに毎日勉強しろってうるさく言われてることも、全部気にしなくてよくなるのかな?」

「僕もテストの点が良くなかったらご飯抜きにされることも、辛く思わなくてすむのかな?」

「私妹が死んじゃったけど、毎日泣かなくて済むのかな?」

「天国にいけばとっても幸せな気分になるんだって」

「幸せってなに?」

「こころがとびはねるような気持ちだよ」

「いいなあ、そんなこと一度もないや」

「私も、天国にいきたい」

「じゃあ皆で行ってみようよ!」

「本当に?怖くない?」

「嫌だったら戻ってくればいいんだよ」

「たしかにそうだね」

「うんうん」

「幸せになりたいもんね」

「毎日毎日辛いけど、天国にいけば楽になるね」

「楽しみだなあ」

「じゃあ明日この場所ね」

「わかった!」

「うん、わかったよ」

「はーい」

「お母さんやお父さんには内緒ね」

「もちろん」

「うん!」

「ばいばーい」

「またね」

「また明日!」

「また明日」


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