第451話 逃げ込むとしたらここしかないんだ
地上に出ると、ようやくラーセットの
「クロノス様、ちゃんと生きていますか?」
「ああ。だがこちらは逃げられたな。完全に見失った」
「前と同じですか。お疲れ様と言いたいところですが、勝算があって戦ったのでは無いのですか? 倒し損ねて過去に戻って来たそうですが、その辺りの事を戻ったら教えてくださいね」
言葉の棘がいがぐりの様だ。
俺がこの時代に残れるかどうかは分からないが、その場合はどうやってなだめるかだな。
だけどそれを考えるのはまだ先で良い。
「本体との戦いは俺と
「
未来では大穴戦で戦死してしまい、
だけどこの時代ならまだ生きている。
「分かった。俺の本棚にある”上下水道の仕組下巻”の中に挟んであるメモに極秘のセーフゾーンの座標が書いてある。そこに飛んで貰ってくれ。そこから廃墟へ向かう」
「廃墟?」
「ああ。奴は今、その場所に向かっている。ただ距離を考えれば俺達の方が先につくからな。そこで作戦を説明すると伝えてくれ」
「分かったわ。行けそうならわたしも行くけど、どうなの?」
「そうだな……連絡が付く限りの召喚者を集めてくれ」
「猶予はどのくらいありそうなの?」
「奴は早いとはいえ
「ならこちらはケーシュさんとロフレさんに任せるわ。可能な限りのメンバーに集合をかける」
「よろしく頼む」
★ ※ ★
万が一の為に、座標を残しておいてよかったよ。
さすがに時間の猶予があるという事で、
「残念だけど、
「それは残念だ」
と言いつつ、
今回が
ただ俺が失敗したら全部ご破算。
◇ ▼ ◇
そして予定よりも時間がかかり、2ヵ月半ほど経過してから動きがあった。
今俺たちがいるのは、探究者の村に作った仮設テント。
ただテントと言っても、普通の家の敷地程ある巨大サイズ。言うまでもなく迷宮産の頑丈な奴だ。
ここまでは来ないだろうし無用だとは思うが、カモフラージュの効果もある。
「出始めたそうです。予想通りって事です?」
「ああ、あまり長いから少し心配だったけどね」
おそらく徘徊するセーフゾーンの主を回避しながら来たのだろう。
「ここで1年とか待機になったらどうしようかと思ったわ」
言葉に棘はあるが、安心した感じがある。
やっぱり心配してくれていたのだろう。
実際、俺も百パーセント分かっていたかと言われたらそんな訳がない。
個人的にもほっと一息だ。
「今は廃墟の中を隠れるように寄生体が動き回っているそうです。仕掛けるです?」
正式名はあるのだが長いからな。おのおの言いやすい様に言っているが、ようするに同類とか雑魚とか呼んでいる連中だ。
「それは周囲が安全か確認しているんだよ。しばらくすれば眷属が確認する。それで安全を確認すれば、本体が入って暫く定住するわけだ。仕掛けるのはそれだけだよ」
「いつ分かるです?」
「何となく感じるんだよ。まだ安心せずに動き回っている感じだ」
「それは繋がっているせい? なら近くには来ないんじゃない?」
「まあそんな所だろうな。逆に向こうも何となく俺の動きを感じているだろう。だけど互いに正確に分かるのは生きているかどうかだけだよ。距離なんかは分からないし、俺が止まっているなんていつもの事だから気にもしないだろう」
「ならいいけど」
「それより、あの廃墟は――」
「かつてユーノスと呼ばれていた国さ」
そう、高校生の頃に一度だけ、
完全に破壊され、復興の兆しは欠片もない。ここは奴によって滅ぼされた国だ。
当時はなぜあそこまで破壊したのかが謎だった。
というよりも、連中を見て謎が深まったといった方が良いか。
何せ奴らは壁を平然と登るし、背後に回って守備隊を攻撃していた。当然、殲滅したら内側から開けるのだろう。
なら、壊したのは滅ぼした後だ。だけどこの壁、物凄く強固なんだよね。壊すだけでも相当な手間と時間がかかっただろう。
だけど今考えれば分かる。
全ての都市にはセーフゾーンがある。当然ここにもな。
そして、地上近くのセーフゾーンは比較的安全らしい。だからそこを起点に都市が作られるんだ。
ならここは、奴にとっての最高にして最終シェルターだ。
滅ぼし、破壊し、誰も寄り付かない。
また誰かが使い始めたらそうもいかないのだろうが、幸いここは手つかずだ。
地上に近い事は逆に不安要素でもあるだろうが、あいつも知っているだろう。ここを利用するような人間などいない事を。
それはやがてダークネスさんたちがここを利用するようになって状況が変わるが、今からずっと未来。それどころか、奴すら知らない世界線の話だ。
だから今はもうここしかない。奴も何度も短期間のうちに時間遡航を繰り返してボロボロだろう。
そんな中での
なら行くところは決まっている。わざわざ作った最も安全な住処。そう、ここしかない。
いやほんと、予想が外れなくて良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます