第434話 まだ手遅れじゃない
そういや時計の話は秘密だったな。
また誰かが反乱を起こしたり、召喚自体を止めさせようとするやつが奪ったり壊したりする可能性は否定できない。
けれど今は仕方あるまい。後で一応口止めはしておこう。
「とにかく必要なんだよ。ただこれはこの世界には一つだが、地球にはそれなりにあるものなんだ」
「どうしてこちらの世界にそんなものがあるのでしょうか?」
「俺がこの世界に召喚された時に、一緒に持ち込まれたんだよ。だからそれが唯一無二のはずだった」
「だった?」
「そんな訳で最初に戻ろう。その時計の箱が発見された。中身は今どこにあるのかは分からない。こちらの世界に在る理由は不明だが、俺は箱だけではないと見ている」
まあ実際のところは予測できているけど、わざわざ
「中身は必ずあると?」
「間違いないだろうな。そしてそれは、この世界と地球を繋ぐ品物だ。そして俺達が倒そうとしている奴は、いずれそれを使って召還を始め、何処かのタイミングで地球へと移動する。危険度は分かるな?」
全員が青い顔をして沈黙している。まあ当然か。このままだと、日本に帰っても――というか、帰ると死ぬって確定した様なものだからな。
「ただ時計の話に戻るが、実はまだ奴が持っているかは分からない。ただ確率からすると最も高いってだけだ」
「な、何をもって、そう言いきれますか?」
「箱だけ見つかったって所が一つひっかかる。召喚に必要なのは時計でね。それに大変動に巻き込まれれば、箱だけが残るって事は無い。知能があり、セーフゾーンに入れる
「人間が見つけた可能性は無いんですか?」
「召喚者はもちろん、各地下町にも一応は確認をしている。だけど一部を捨てるか? 間違いなく、セットで持ってくる。しかも知らない字が書いてあれば、学の無い奴でも召喚者がらみと予想するだろう。その場合、むしろ箱の方にこそ価値を見出すかもしれないな」
「色々あっても、結局は可能性止まりですね」
「今のところはそうだな。だが可能性程度だからと放置したら、最悪の結果になりかねない事態だって事は分かるだろ。だから第一に時計を探さなければならない。けど手掛かりが無くてな。わざわざ
バッグから地図を取り出して机に広げる。
大変動があると、すぐに
「ここで発見された。当時の連中の動きと照らし合わせてくれ」
「正確な時間は分かりますか」
「
そういって、俺たちの行動や体調をチェックしているアイテムを渡す。
例のフランソワが開発したやつだ。当然必要になるから、
「ええと……この時間と場所だと……かなり前から頻繁に連中の眷属が通過していますね」
「間違いないのか?」
「一体の眷属を中心とした、二百体ほどの群れです。おそらく安全を確保するために周回していたのだと思いますが」
その場で時計しか価値が無いと見抜いて捨てたのか、それとも巣に持ち帰ってから、本体が箱には価値が無いとみて離れた処に捨てに行かせた――いや、そんな回りくどい事をするのならビリビリに破り棄てれば良いだけか。
考えたって仕方ないけど。
しかしこれで、奴が持っている事がほぼ確定か。こんな時、先輩の
俺が迂闊に想うと、本当に呼び出される可能性は否定されちゃいないしね。
「奴らが持ち帰ったことは確実だな」
ハッキリ言えば他の
何せ歴史は変わっている。必ずしも、奴が手に入れるとは限らなかったじゃないか。
儚い夢と散ったけどな。
「
「
「ですがそうすると、もう手遅れなんでしょうか?」
「いや、そんな事は無いさ」
そう……奴は大勢の地球人を召喚した。俺たちと同じ時計を使ったからか、それとも俺たちの死体から何かを分析したのか――とにかく、同じ日の同じ時間からな。
そんな訳で、地球全体では億という数の不審死が出た訳だよ。あの日のニュースを見た時は召喚者でも何でもないただの人間だったが、あの一件を忘れることは一生ないだろうな。
いや、今は思い出より未来の話が先だ。
とにかく、例え召喚者でもこちらに来たばかりの時は人間と変わらない。
目覚める前に奴に喰われるか、お仲間にされるかのどちらかだろう。
だけど、その為には条件がいくつかある。
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