第277話 当然こういう展開になるよな
外までの壁を外し、一人ずつ、全員を彼らの宿舎へと送り届けた。
「みんなは先に帰っただけだから。少し会えなくなるけど、向こうに戻ればまたみんな生きているから大丈夫。あまり気にするなよ」
そう言って、俺も召喚庁へと戻った。
正直、自分の言葉に反吐が出そうになる。
何が先に帰っただ。戻れば生きているだ!
想いきり壁を殴りたくなるが、物を壊したって仕方がない。
覚悟は決めていたじゃないか。もうやるしかないんだって。これが世界の為なんだって。
だけど、やはり辛い。
もし、正直に話していれば、彼らは死ななかったのだろうか?
考えると馬鹿々々しくなる。
確かに死ななかったさ。だけど、誰も
そして何処かに立てこもり、元の世界へ返せと大騒ぎしただろうな。
ここでどうにかしないと地球が滅ぶといっても、信じて動いてくれるのはほんの僅かだろう。
更に
それに加えて大変動の恐怖を知ってしまった。狭い中で味わう大地震の恐怖は外や家の中とは比較にならない。
こうなるともうダメだろう。絶対に戦ってはくれない。
これに人間と戦う可能性まで加えてしまうと、なんかもう完全にアウトすぎる。
騙してやってもらう以外にどうしろっていうんだ。
分かっているよ、それが正しくない事なんて。高校生の俺、お前が正しいんだ。
ただ今回の事で、大きな問題が一つ出た。
歴史が変わることは承知していた。
というより、失敗の連続なのだから変えなきゃいけない。それはわかるんだよ。
だけど、肝心の
かつての教官組の一人。その思考や行動から、何か以前のクロノスの事が見えてくると思っていた。
「本当に……まさかだよな……」
マジでどうしようもなくなると、人は天を仰ぐ。
そこにあるのは星と、この世界の月。星座は違うし、月は土星のような輪が掛かっている。
まあ世界は違って環境も違うが、人の力なんて大したこと無いってのは変わらないって事さな。
自分の無力さを自覚しろ。ここからやり直しだ。しっかりしろ、俺。
だけど翌日、更に困った問題が起きた。
事の起こりは執務室で今回の損害に頭を悩ませている時だった。
幾ら考えても結論なんて出ない
報告を聞く限り、
だけどそれを責める資格は俺には無い。そういった物を集めるように依頼したのは俺だし、大変動の恐怖をもっときちんと教えるべきだった。
だけど召喚したこと自体には後悔はない。これは絶対に必要だった事だ。今更それを言っても仕方がない。
ただもっと多くの人間を召喚すべきではなかっただろうか。
よりリーダーシップを持った人や、説得力のある人が一緒に居たら……いや、そうでなくとも、一緒に満足するだけの量を掘る人間がいたらいいだけだ。
いやいや、肉体強化や瞬間移動、そう言ったスキル持ちがいれば、それだけで助かったんだ。
やはり人を増やそう――二人が訪ねてきたのは、そう考えていた時であった。
内容はもうさっきの通り、帰還に関してだ。
「そうか……考えは変わらないのか?」
「はい。元々僕たち図書部の3人は、3人だから一緒にいたんです」
「だから
「ここで何年過ごしても、日本に帰れば同じ時間だ。もう少しこっちに居ても良いんじゃないか?」
「それは考えない訳じゃなかったです。こっちは怖かったし痛かったけど、何と言うか、凄いワクワク感があったんです」
「あたしたちはみんな図書部で運動は苦手だったけど、スキルを使って、見知らぬ土地を冒険して、
「なら――」
「だけどダメなんです。耳に
思い出したらよほど怖かったのだろう。自分自身をグッと抱きしめる。
そんな彼女の肩を
「大丈夫、大丈夫だから。もう帰ろう。そして忘れよう。すみません、クロノスさん。僕たちをこの世界に呼び出す為に、沢山の人が犠牲になった事は聞いています。その人たちの事を考えると……でも」
「いや……いいんだ。こちらこそ、こっちの都合で君達を召喚して、怖い思いまでさせて働かせてしまった。しかもなにも出せないんじゃ、タダ働きだしな」
「いえ、こちらでは本当に皆様に良くしていただきました。それに向こうに帰れば全て忘れて、時間も動いていないんですよね? 僕も怖かったし今でも怖いです。でも、そういう事であれば大丈夫です。今までありがとうございました」
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