第268話 いざ南の国へ
こうして俺が礼儀作法を教わり、新たな生贄が用意され、イェルクリオとの交渉が行われていた中、新たな3人の召喚者がこの世界にやってきた。
3人とも同じ中学生の制服だ。若さが眩しすぎて目が潰れそう。
今回は、説明から何から何までシェマンと
当然ながら俺は見ているが、今回も完全に認識を外している。
さすがにまだまだだとは思うが、知り合いが召喚されて来ると色々とマズいからな。
かなり怯えた感じでシェマンの説明を聞いていたが、その後に
胸がチクチクと痛む。頼むから死なないでくれよ。
今回は引率も
召喚されてきたのが予想外に若かったので付いて行きたいのだけど、こっちもこっちでやる事があるんだよ。
つい先日、内務庁長官のゼルゼナから連絡があった。イェルクリオが外交に応じるそうだ。
但し正式な外交ではない。先ずは俺がイェルクリオに赴き、そこで外交内容を決めるそうだ。
後者は予想していた。交渉するにしても、先ずは互いに何を要求してどこまで譲歩するかを探る必要がある。
本来なら俺が行くような話ではないが、元々俺が行きたかったのだし、向こうが指定して来たのならもう迷う必要は無い。
そもそもが、地球のように簡単に行き来できる環境じゃないからな。
ゼルゼナはもちろんの事、ケーシュやロフレ。そして他の召喚者やユンスにシェマン。要は全員だな。俺が行く事を心配してくれた。
当然ながら、襲われる危険はあるし、それがマージサウルの様に簡単に対処できる保証もない。
場合によっては虎の尾を踏んで、いきなり南北連合国軍による泥沼の戦争に突入する可能性だってあるんだ。
それでも、召喚者も平和的に対応すれば友好関係を――少なくとも中立関係くらいは結べる事を証明しなければいけない。それが、俺が直接赴く理由だ。
そんな訳で、その夜は新たなる召喚者の歓迎会にひっそりと出席。あえて挨拶もしなかった。
全て
今後の体制を作るための、まあ実験のようなものだ。
迂闊に接触できない人間が来てからよそよそしくなったら、かえって不自然だからね。
そして夜は毎晩の話だが、ケーシュとロフレと共に過ごした。
暫らく会えなくなるからな。完全にリフレッシュしておかねば。
「いつにも増して激しかったであります」
「もっと人を増やさないと、体がもたない」
「本当に増やしていいの?」
「……いじわる」
少し拗ねた様に、ロフレは唇を重ねてくる。
いやもう止まらないね。男なら当然だよな。
そして翌日。
「じゃあ行ってくる」
「荷物はそれだけでいいの?」
「ああ。戦闘しに行くわけでも、服従の使者って訳でもないんだ。ちょっとしたお土産で十分だよ」
「それでは、無事を祈っているであります」
「ケーシュもロフレも体には気を付けてな」
北のマージサウルも遠かったが、南のイェルクリオは更に遠い。通信装置はもちろん、緊急用の通信機も通じない。
直線距離でおよそ320キロメートル。一応交易に使うルートはあるが、通りやすい道を通るからもっと長い。
しかも
かつては探究者の村から行ったが、あの時は大変だった。
そんな世界なので、共通して使える様な貨幣は無い。
この世界には耐久性に難のある紙幣は無く、硬貨だけが流通している。それも国によって違う。
滅びた国の通貨はゴミとなり、発展している国の通貨は高くなる。
因みにラーセットの通貨は世界から見ればゴミである。
まあ高額硬貨にはちょっとだけ迷宮産の希少金属が埋め込まれているが、他国からすればそれだけの価値でしかないわけだ。
そんな訳で、お土産も些細な特産品と紙袋に入れた菓子一箱。一応恥ずかしくない程度の希少鉱物も持って行くが、個人が運ぶ量などたかが知れているからな、こんなものは意味はないだろう。
金が無くては大変だろうとは思うが、まあ使者に町宿に泊まれとは言わないだろう。
それに言われても問題ない。今の俺なら一瞬で往復できるからだ。
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