第267話 前の俺も苦労したんだろうな
そんな訳で、新たな召喚の支度が整うまでの間、俺はシェマンから基本的な礼儀作法を教わった。
とは言っても、そんなに難しい事は無い。この世界は王侯貴族のようなものが無く、人々の間に大きな身分の差は無かった。まあ奴隷制はあるが、あれは奴隷というにはちょっとなぁ……。あまりにも主人側が不利だし。むしろ結婚と呼んでも良いんじゃないかあれは。
絶対に嘘をつけないとかの制約はあるが、一方的に生殺与奪の権限を握られているわけだしな。
いや少し余談が入ってしまったが、要するに常識的な範囲での敬語や挨拶の仕方、文化的なタブーなどを教わる程度で、ものすごく複雑なマナーや礼儀作法を覚える必要は無かった。
これは正直有難い。何せ地球の貴族社会の様に、国や宗教、時代ごとに複雑な礼儀作法とかあったらたまったものではないからな。
こうしている間に瞬く間に2か月が経ち、新たな召喚の支度が整った。
人数が少ない割に時間がかかったが、これも少しは国の状況が落ち着いて来たからだろう。
召喚者一人を呼び出すのに、現地人が大体15人犠牲になる。そんな訳で、今回は多少の安全策をとって47人用意してもらった。
ハッキリしていないのは、ストレートに言えばきっちりとした計算式があるわけじゃないからだ。
召喚者一人に対して、何人とか何キログラムとか何歳とかいう数は決まってない。そんな法則が無いから、実際には何人来るかは分からない。
まあこの人数は、今までの9人の様子から導き出された数だ。
昔は召喚者を呼び出すのに生贄が必要と言われても、それがどうしたという感じだった。
理不尽の方が遥かに勝っていたし、召喚者を使い捨ての奴隷だと評した。今もその気持ちはしっかりと持っている。
だけどやはり、こうして自ら死を選んでくれた面々を見ると、自らの力不足を感じてしまい
前の俺だって、間違いなく様々な方法を試し、そして召喚を選んだ。
だから考えても仕方が無いが、実際に当時の
『俺は未来から過去へと戻ったお前だ。そして地球はこの世界の
多分考えるが、納得はしない。そして必ず、帰る方法が分かるまで召喚には断固として反対だ。
なにせ、実際に人類が築き上げてきた文明が崩壊するところを見ていないのだから。
そして召喚を止めたとしても、結局はやってくるタイムリミット。どちらも後悔に
まあ高校生の俺が実際に後悔するのはクロノスとしてこっちに来てからだけどな。
自分の性格が分かっているだけに、ある意味結果が見えている。
本当の意味で俺と協力するためには、帰還の方法が絶対に必要だ。
今考えてみれば、それで時計を俺に託し、期待したのだろう。
その期待の根拠は?
間違いなく、俺が召喚者として急成長したからだ。実際に、最後の方は
ただあれはここではない何処かへ外しただけで、もう一回やれと言われても困る。
それに、あの時の
この理由も予想がつく。あの時点で、
失ったか、それとも自ら壊したのか。それは分からないが、そうした理由は言うまでも無いな。俺を殺す為だ。
だけどダメだった。実際に制御アイテムを手に入れて思うのは、俺がどれだけ無茶で無謀だったかという事だ。
何で精神が保てたんだ?
まあ最初は執念だな。
だけど実際には、俺はもう壊れていた。
それでも表面だけは人であり続けたが、
本来なら、きっとあの後は凶悪な狂った召喚者として討伐されていただろう。
でもそんな俺を、セポナが救ってくれた。
考えて見たら、無茶苦茶すぎる綱渡りじゃないか。
大体、セポナは前回の俺の時にしかいなかったはずだ。その前はどうやって戻したんだよ。
完全に壊れる前に、裸の美女でも用意したのか?
……冗談抜きで、それが一番あり得るところが怖い。
ある意味、女性さえいれば何とかなるってのは、本当に大きなアドバンテージだったんだな。
ん? なんでダークネスさんはそれを知っていたんだろう?
とにかく
忘れることは無いが、注意はしていよう。何せ順番なんて当てにならないからな。
それに、場合によっては
その場合は、誰がどうすればいいのやら。
そこらへんも考えなきゃなー。
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