【 北方の大国 】
第259話 よし到着
翌日、軍務庁を訪ねてユンス・ウェハ・ロケイスと会談。そのまま内務庁を訪れてゼルゼナ・アント・ラグと会談した。
当然機密事項なのでアポなしだったが、すんなりと会ってくれた。それだけ、クロノスという人間の立場は強いのだろう。
だが当たり前だが頭から反対された。
内務庁のゼルゼナに至っては、床に正座させて2時間も説教しやがった。
立場の強さとはいったい……ってなところだが、最終的には”やる”の一点で押し通した。
ケーシュやロフレには言えなかったが、もしも俺が戻らなかったら
これもまた、当人である
ただ、余計な心配は掛けたくないんだ。だからこそ、必ず成功させなくちゃならない。
「では行ってくる。少し騒がしくなるし報復もあるかもしれないが、黙っていれば前回とは比較にならない攻撃が来るんだ。ここでやるしかないんだよ」
最後はそれぞれに、そう同じ事を言ってロンダピアザを発った。
実際、前回は烏合の衆だった。将軍だったとはいえ、使者程度が司令官だったのだからな。
それに、予想に反して迷宮産の武具で武装した精鋭部隊があまりにも少なかった。
まともな部隊を連れて来ていたのはあの黄色い髭のハゲ部隊位なものだ。
やはり虎の子だからな。召喚者が恐ろしいとか言いながら、実際には舐めまくっていたのだ。
だけど次はそうはいかない。だからこそ、次を与えてはいけない。
マージサウルはラーセットから直線距離で250キロメートル程。
南のイェルクリオに比べれば、70キロメートルほど近い。
ただ南に比べると地形の問題があり、実際に徒歩で移動するとしたらイェルクリオの方が早く到着する。
それほどマージサウルへの道は険しいのだ。
まあ、俺は1日で到着したがな。この位の距離なら、数回距離を外せば到着できる。今の俺なら世界一周も夢ではないのではなかろうか? する気はないが。
かつて探究者の村からラーセットまで移動した時は大変だった。30日近く掛かったな。
南のイェルクリオに行った時も結構掛かったものだ。ただ距離は遠かったが、通りやすかったので20日程度か。
最期の数日前は、
結構成長したものだと、少しは誇っていいだろう。
それだけ人間離れしたって話でもあるが。
まだ新年になって10日。ラーセットも雪が降っていたが、ここはもっと深い。
彼らの首都バルクマスコもまた、白い雪に埋まっていた。かなり厳しい世界に見えるが、実際には都市機能がしっかりしているのでそれ程不便は無いらしい。
特に食料はあの高層ビルで作っているそうで、それはラーセットも変わらない。
北の国家と聞いた瞬間に厳しく貧しい国を想像したが、少し失礼だったな。
ここは首都の他に4つの衛星都市を持つ巨大国家。
距離はまちまちで、近い都市は60キロメートル程。遠い都市は150キロメートル位か。
それらは巨大トンネル――というよりアーチに覆われた道で繋がっている。
相当な大事業ではあるが、トンネルは幅50メートルほどだ。
高さ4~5キロメートルの壁で都市を覆う事を考えれば、決して不可能ではない。
事前に見せてもらった地図だと、繋がっている都市はそれほど大きくはない。どれも地上にあるセーフゾーンをキープするための都市といった所だろう。
そしてそんなのが世界中にあって、自分が生まれ育った都市で一生を終える。
中で商売や農業や酪農に従事する者、外で林業や狩猟などを営む者、そして外敵から国を守る軍隊に、内務や治安維持を行うお役所や警察、消防署に裁判所など。
様々な業種があるが、やはり最大勢力であり、一番の花形で、尚且つ最も死亡率が高いのが
俺はこの世界に来た時、俺達召喚者は便利な奴隷だと思った。
その考えは、今もさほど変わっていない。自分が使役する立場になってもだ。
そうだろう? 自分の意志に関係なく連れてこられ、危険な
そして辞める権利も帰る当てもない。まさにブラック企業だ。
だけど、この世界の人間にとってはそれが当たり前。
俺たちだって、自分たちの世界でも生きるためには働かないといけない。
その点に関しては、あんまり変わらないんだよな。
だがそれは、それぞれの夢や未来への展望を奪い、家族と引き裂いて良い理由にはならない。
それでも、俺は召喚を続けるだろう。あの青い
だけどそれは、無血では出来ない。
だが、減らすことは出来るだろう。今ここに、それをしに来たんだ。
さあ、考えはここまでだ。早速始めるとしよう。
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