第167話 俺もやるべき事を果たさないと
なんとか化け物連中は撒けたが、
スキルに任せて危険を避けながら地上に戻る手もあるが、多分実際には無い。
このスキルのせいだろうか? それとも制御もされずに垂れ流しのように使い続けたせいだろうか? とにかく、俺は普通では考えられない程に召喚者として強くなっているらしい。
こんな状況で最短距離を選んだら、多分勝てる相手は避けない。まさに血まみれの道だ。
当然、人間は愚かではない。そんな事をしながら外に出たら一発アウト。間違いなく、教官組が待っているだろう。便利なようで、これはある意味袋小路に誘う罠スキルだ。頼り過ぎは良くない。
『
この声は!?
「ひたちさんか? まだ通信が繋がる距離なんだな。それに無事で安心したよ」
声には緊張感は含まれていない。むしろ高揚さえ感じられる。
結果は聞かなくてももう分かっていた。
『
「ああ、最初からその予定だ。任せてくれ」
『ご無事を祈っています。それでは』
「ああ、そちらもな」
こうして通信は切れた。
まだ説明していなくて、尚且つ一緒にいる。多分だが、
まあ俺のところへ連れて行くなんて言って、素直に来てくれるとは最初から思っていなかったよ。妥当なところだろう。
ただ問題は、完全に引き離してはダメって事だな。
もう追いつけないと判断したら、間違いなく追手は帰るだろう。
その中にいるんだろ、
何があっても、あいつだけはここから出すわけにはいかないだろうな。
※ 〇 ※
「なんだこれは」
「ここから潜ったのだとは思うが……」
召喚者達は、中途半端に開いた穴の前で立ち往生をしていた。
上の様に綺麗な穴なら素直に飛び込めばいいが、この穴は
「ここから行くのはもう不可能。それぞれのチームは、各自の判断で探索」
召喚者達を待っていたのは教官組の一人、田中玉……いや、フランソワだ。
「ご無事でしたか、
「心配していました、
「お怪我はありませんか、
「お前たち全員後で死刑。
「了解しました、玉――」
さすがにこれ以上はダメ――世の中には踏み越えて良いラインとダメなラインがある。
先行した召喚者達は、それなりに場数を踏んでいる。その辺りは肌で感じ取った。
「フランソワ教官もお気を付けください」
満足そうに頷く彼女に挨拶をすると、次々と召喚者達は迷宮へと走る。
元々、教官組は人気者だ。特に女性二人の内、フランソワ教官はマスコット的な存在として人気が高い。もちろん、そんな可愛いものではない事も熟知しているが。
そんな彼らを見送ったフランソワもまた、彼等の無事を祈っていた。
とにかく得体が知れない。それに召喚者として、異常なまでに成長している。もう彼の力や反射神経に対抗できるのは、教官組やそれより古い4人を除けば数少ない熟練者くらいなものであろう。
「フランソワ教官!」
そこに少し遅れて到着したのは
上で話し合っていた分、出遅れたのだ。
「
「これは緊急事態ですので」
慌てて
あの日
それよりも、あれから急激にメンバーが減った事が問題だ。
それ以降に死んだのは
そう考えれば不自然とも言い難い。だが一応は警戒しておくに越した事は無いだろう。
いざとなれば、
計算高いこの女――
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