第163話 教官組2人を相手に俺は勝てるのだろうか
やはり格好良くとはいかなかったが、激突や落下の衝撃は外してある。体にダメージがあるわけではない。
ただ予定以上に近い。本当なら風に乗って、もっと遠くまでスイスイと移動する予定だった。まあ現実とは厳しいものだ。
そんな訳で、スキルを全力で使いながら逃げ回っていた。
人と出会う可能性を外す。最大限に。とにかく逃げきってしまえば勝ちなのだ。
ターゲットが自分である以上、未練がましく
多少強引だが、
その間にも多くの兵士やボランティアらしい市民を見かけたが、間一髪、見つからなくてセーフ。
というより。予定より警戒が厳しいな。これでは
まあそんな訳で時間を取ってしまったが、ようやく理想的な場所を発見。資材置き場か何かだろうか、鉄骨やら木板、それに配管に使うようなパイプが大量に積まれた広場。
ここなら、地面を崩しても建物はもちろん人も巻き込まない。
早速
――さらばラーセット。次に来るときは
そんな事を考えた俺の頭の上から、かつて見た事のある物体が大量に降って来た。逃げ場の無いこの落下中のトンネルで。
それはかつて見た多脚の機械。いや、プラモデルみたいなものが。
先端の尖った8本の多関節の足と、中心にある細い棒のようなものが特徴だ。
そしてあの棒は――、
考えるよりも、着地するよりも早く一斉に落下物が爆発する。
いや避けようが無いってこんなもの!
爆風は穴から天と地に吹き抜け、下にいた俺を焼く。
だけど、今の俺は以前の俺ではないのだ。ただの爆風なんて、全部外してある。ドライヤーの熱風程度のものでしかない。
ただあの爆発は大きな狼煙となって、夜空を赤く照らしただろう。もしかしたら、そちらが目的だったのかもしれない。
だとしたら離れないと――そう思った俺の目の前には、もう二人の召喚者が立っていた。
「少し驚いたよ。どんな手品を使ったんだ?」
「こっちも驚いた。普通はもう少し狼狽する。お前は何者?」
「
「確かにそう。ちょっと気になっただけ」
そう言ったのは身長は150センチ位。おかっぱで童顔。かなりかわいい子だが、子供的な可愛らしさだ。ミニスカートでフリルのたっぷりついた子供服が、それをより強調している。というか、普通にゴシックロリータと言った方が良いか。
というか、両手に持っているその凶器は何だ。デカい剣と言えば良いのかもしれないが、デカい事もあるが太い。そして分厚い。カイトシールドを剣の形にして柄を付けましたという感じだ。
それも両手と言っても両手で持っているのではない。左右一本ずつの片手剣。いやあれ何百キログラムあるんだ? 特殊なアイテムで軽いという可能性もあるが、大理石のような白い床にめり込んだ切っ先がそれを否定している。
もう一人はプロレスラーの様な体格をした巨大な男。単に背が高いだけではなく、盛り上がった筋肉が尋常ではない。
髪は無いとは言わないが、かなり不規則に抜けている。なんだか見るだけでゾクゾクと不安になる髪形だ。
だけど言うまでもない。二人は召喚者だ。それも只者じゃない。
「名前を聞いて良いか?」
「貴方には不要」
一発却下かよ、寂しいなぁ。
「貴様には2つの道が残されている。ここで死ぬか、後で死ぬかだ」
プロレスラーのような男が物騒な事を言いだした。だけど随分と余裕なものだ。
確かに脅威を感じる。只者じゃないのは事実だろう。だけど、こちらも
そしてその間に、大きく成長した実感がある。
今の俺なら――逃げる事くらいは出来るはずだ……出来るよね? お願いだから見逃して欲しい。
「俺に戦うつもりは無い。ここは素直に見逃してはくれないか?」
「我ら教官組が見逃すと言っても、大勢の家族や仲間を殺された現地の人間がお前を許さない。帰る事も出来なくなり、そしてその間に命を落とした召喚者の仲間もお前を許さないだろう。貴様にはもう生きるという選択肢は残されていないのだ」
“我ら教官組”だって!? こいつらは地下深くに俺を探しに行っているんじゃなかったのか?
そう思ったが、それは
何て考えていても仕方が無い。
「悪いがどちらを選んでも死ぬなら、答えはもちろん却下だ」
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