第77話 セポナを傷つけるものを許しはしない
命令を受け、迫り来るフードの連中。
どう見ても神に仕えるって風には見えないが、俺達の世界の宗教に当てはめても仕方がない。
そもそも僧兵なんかもいた時代もあったしな。
見たところ、軽装で速度重視。迷宮で戦った兵士達とは動きが違う。
素人の俺が断言するのもおかしいが、素人ではないだろう。
フードの裾から短い切っ先がチラチラと見える。例の宝剣だな。
あの長い袖は間合いを図らせないためだろう。まるで暗殺者だな。
だが――、
迫ってきた一人を斬り伏せると、俺は女神官へと突進した。
当然そこに集まるフードの兵士たち。
権力者を守るのは当然だ。それにこちらが目標を定めた以上、そこに集まるのも当たりまえ。
世界が変わっても、その辺りが変わっていなくて安心したよ。
向こうが時間稼ぎをしていた事はわかっていた。まあ間に合わなかったようだが。
だけどこちらは十分間に合っていた。
軽い振動と共に、女神官と周囲に集まった連中が宙に浮く。だがそれはほんの一瞬。次の瞬間には、全員奈落の底へと落ちて行った。
彼女を中心とした床全体の構造を外し、崩落させたんだ。
意外と線引きが難しかったけど、やれば出来るものだな。
「☆〇◎〇 △〇※!」
見ると、残ったフードの男が一人、セポナに短剣を突き付けてこちらを睨んでいる。
さすがにセポナまで一緒に落とすわけにはいかなかったからな。近くにいた奴も残ってしまったか。
言葉が通じなくても言いたい事はわかる。
だが、俺は迷わずその男に剣をぶん投げた。
剣が外れる可能性を外す。それだけでいいから簡単だ。
セポナという重石を抱えているから避けられない。
だけど、こいつは迷宮産――それもあの状況で、ナマクラを俺に渡すわけがない。
受けた短剣は飴細工の様に砕け、俺の剣は何の抵抗もなく額を貫いた。
今更言うのもおかしな話だが、腕力が常人のそれではない。本当に今更だけど、召喚者の力ってものを理解してきたよ。使えるようになってきていると言った方が良いか。
開けた床の穴は結構深かった。というか、何層かをぶち抜いたらしい。底の方が土煙で見えないが、相当な量の瓦礫を感じるな。あれでは助かるまい。
まあ、次の神官がもうちょっと話の通じる奴だと言う事に期待しよう。それよりも――、
「大丈夫か、セポナ」
「あ、ありがとうございます。で、でもどうして?」
「お前が考えているよりも、お前がくれた恩は大きかったって事だ。これからはもっと頼れ。どうせ先行きが見えないなら――なんて考えたのだろうが、未来なんて俺が幾らでも用意してやる」
「約束なんて……出来ないくせに」
そういってセポナは顔をクシャクシャにして泣いていた。
「出来るかどうかなんて関係ないさ。俺はやるんだ」
そう、やる事は沢山ある。それにセポナの事が追加されただけだ。
話しながら、男に刺さった剣を抜く。そう、これもまた俺がすべきことだ。
というかやる事といえば……。
「悪いがセポナ、ちょいと付き合ってもらうぞ」
「他に行く当てもないので何処へでも。でも一応聞いておきますよ。何処へです?」
「何ヶ所かあるが、先ずはあの奥だな」
ここには俺がポイされた場所に通じる扉もあるが、目的の扉は別物だ。
かなり強い力を感じる。それに、どこか懐かしい空気も感じられた。
そこにある物が何なのかは分からない。だけど、もう放置する事も出来ないんだ。
奥にあった扉を開けた先は円形の部屋。そして中央には奇妙な塔が立ててあった。
大きさは結構高め。3メートルくらいか。アーチ型の天井には美しい細工がなされ、部屋全体が優しい光に包まれている。ここが観光地だったら、結構感動したかもな。
その塔の中心部分に、見た事のある物が
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